第4話 新しいオレ
こんにちは、世界。
オレはつい昨日10歳になった、スヴェン・ツオイス。
10歳は特別な年齢なんだ。
「10歳になると学校に通うのが決まりで、スヴェンも今年の秋から学生だ。
ツオイス村からちょっと西に行ったところにある町、イージス町に通うことになる。
イージス町はチャート領では一番大きい町で他領との交易も行っている。
各村からの特産品はすべてイージス町に持ち込まれ、多くは他の村へと流れる。
より出来の良いモノは他領との交易に使用され、最上級品は国王への献上品となるのだ。
献上品が認められて、イージス町に学校ができたのが20年前。
由緒正しい学校に通えることはチャート領の子供にとっては誇りだ。」
・・・とパパが言っていた。
それで大事な話だけど、実はオレには生まれる前の記憶がある。
毎日寝ると別の世界で過ごした1日の記憶が夢の中で流れるんだ。
だからオレは別の国の言葉も話せるし、歌も歌える。
けれどパパもママも信じてくれないんだ。
オレはほんとだったら20歳で兄ちゃんより年上なのに。
・・・兄ちゃんが頭いいからオレの凄さがわかりにくいんだ、多分。
村の皆は兄ちゃん、タクチャーみたいになれっていうんだけど。
オレはもうなりたいものは決まってる。
それは『物語の勇者』になることだ。
『物語の勇者』ってのは道の勇者ストリトが魔族の皇帝フィニティを倒す英雄譚、タナトリス建国記に出てくる勇者たちを意味する言葉だ。
道の勇者ストリトに感化された色んな勇者が、自分の得意な技を使って魔族を倒したり、災害から皆を救ったり、なんとあの暴竜ガラルグリンドと戦ったりする話もあるんだ。
それで皆は道の勇者ストリトに憧れるけど、オレは『物語の勇者』は全員かっこいいと思うんだ。
自分の得意なことで勇者になるところが凄い、良いんだけど。大人すぎるかな?
パパとママは学校で1番になれば『物語の勇者』になれるかもって言ってた。
だからとりあえず1番になって、オレも勇者になるんだ。