第37話 不思議な女の子
「スヴェン君!こっちで解毒草を見つけたよ!」
「ナイス!すぐそっち行くよー!」
「ああっ!ちゃんと処置しないとまたアロナさんに怒られますよ。」
晴れて外出許可を貰ったオレは、みんなと薬草採取に来ていた。
「そうだった。ごめんメラニー。」
「しっかりしてくださいね。仲裁に入るのも大変ですから。」
「あー、うん。」
今日は解毒草の採取が目的だ。依頼者はアロナ様。
解毒草はその名の通り毒に効く薬草で、そのまま食べるお腹を下すらしい。
「これでいいかな?」
「大丈夫ですよ。残りは私が済ませますのでアレクさんの方を手伝ってください。」
「わかった。・・・アレク君!どこー?!」
「こっちだよ、スヴェン君!」
アレク君に呼ばれた方に向かうと辺り一面に解毒草が生えていた。
「うわっ、すごいね。これ全部解毒草かな。」
「そうだね。繁殖力の高い種類らしい。その代わり背丈も低いから沢山採らないとね。」
「この籠がいっぱいになるまで採るとして、何本必要なんだろう・・・。」
「二人で採ればすぐさ。頑張ろう。」
「そうだね。これが終われば昼食だと思って頑張るかー。」
もうひと踏ん張りだ。ちゃちゃっと済ませてしまおう。
「メラニー、これで最後?それともまだ必要?」
「お疲れ様ですスヴェンさん。アレクさんにも伝えてください。」
「やったー!もうへとへとだ。アレク君ー!もう終わりだってー!」
「了解!そっち戻るね!」
よし、じゃあメラニーが最後仕上げをしている間にオレも準備するか。
ここにあります四角い箱はなんと鍋、調理器具、調合器具、その他便利道具が全て揃った最新式のアイテムなのだ!
店員さんの押しが強くて断れなかった・・・じゃなくてこれ一つで野外での調合だけでなく調理までできる優れモノなのである!・・・らしい。
「スヴェン君早速使ってるね。今日はここで昼食をつくるのかな?」
「そうだよ!えっとね・・・今日は黒パンとジャムを持ってきたんだ!」
「ありがとう。黒パンをお湯につけてふやかすんだね。でもそれだと鍋以外の器具を使わないね。」
しまった!それは考えていなかった。
「アレク君どうしよう。考えてなかった。」
「そうだね。じゃあこのついでに採った山菜とキノコを一緒に煮てみようか。」
「え?大丈夫なの?」
「この前ギルドの詳しい人に教えて貰ったんだ。大丈夫だよ。」
他の人が言ってたら怖すぎるけど、アレク君が言うなら大丈夫か?
「ですが調理はアレクさんに任せたいですね。」
メラニーが仕上げを終えて戻ってきた。
「じゃあアレク君お願いね。その間に水汲んでくるから。」
「川に行くつもりですか?」
「そうだね。すぐそこだし。」
「ではなにかあったら笛で知らせてください。」
「うん。そのときはよろしくね。」
メラニーはちょっと心配性になった。
でも冒険者はこれくらいが普通か。オレも気を付けないと。
「この辺りでいいかなっと。」
オレは川の水を大きい鍋に掬った。
当然川の水をそのまま使うわけじゃない。病気になっちゃうからね。
大きい鍋で水を沸かして、鍋の蓋で湯気を受け止める。
蓋の裏に付いた水滴を小さい鍋に集めると飲める水になる。
当然時間がかかる作業なんだけど、オレはちょっとだけ魔法でズルができる。
「オレなら火を起こす必要が無いし。」
熱魔法で鍋を水ごと温める。
オレの熱魔法ならちょっとの時間で水を沸騰させられる。
「それに水滴を集めるのも簡単。」
最近練習している”冷たく”する熱魔法で鍋の蓋を冷やそうとする。
正直凍らせるなんて全然できないし、ぬるま湯を冷たい水にするのもできたことがない。
イメージがうまくわかないんだよなー。
でも熱い湯気をぬるくするのは得意だ。
それでも十分水滴が早く集まる。
「よしこれで大分溜まったな。後は水筒に移してっと。」
同じ作業を数回繰り返して、煮る用の水と飲む用の水を準備した。
「よし!なにかあると危ないから早く戻ろう。」
そう思ったところだった。いや口に出してけど。
川の対岸にオレと同じくらい?ちょっと年上?くらいの女の子が見えた。
「なにしてるの?危ないよー。」
女の子少し悩んでいたけど、思い切ったように言った。
「あなた、男の子?」
どういうことだ?というより”危ないよ”の返事がそれ?
「えと、男だけど。・・・それよりなんでここにいるの?オレと同じくらいに見えるし、許可がないと町の外に出ちゃダメって。」
「男の子か・・・じゃあダメね。」
なにが?なにがダメなんだ?
「他に誰かと来てるの?一人なら本当に危ないからオレたちと一緒に帰ろうよ。」
「いいわ、一人で帰れるの。それにちょっと用事も残ってるし。」
変な女の子だ。ファラド様と同じクラスなんだろうか。
それとも思ったより子供じゃないのかも。ちょっと遠くてわからない。
「うーん。どうしよう。ちゃんと話をしよう。オレが信じられないならアレク君・・・アレク様もいるよ。アレク・イージス様。」
アレク君の名前にピクッとなったのが見えた。
よしよし、話はできそうだ。
「・・・そうね。アレク、様がいらっしゃるなら付いていくわ。」
そういって女の子はしゃがんで水を掬おうとした。
「ああ!待って!川の水をそのまま飲むのはダメだよ!」
「いいのよ。私なら大丈夫なの。」
「えー?!良くないよ!」
「こうするのよ。浄化」
女の子は掬った水に対して魔法を使ったようだ。
そしてそのままゴクリと飲み干してしまった。
「すごいねそれ。どこで習ったの?」
初めて感じたタイプの魔法だ。
遠いからわかりにくかったけど、爽やかな感じの魔法だった。
「私の先生。でもこれマネしないでね。浄化は誰でも使えるけど、効果は使う人によって大きく違うわ。」
「それはどれくらい?」
「あなたが使ってもおまじない程度よ。」
うーん。この子が言いたいことはイメージできないでしょってことなのかな。
正直その通りだ。試す気にはあんまりならない。
失敗してお腹痛くなるのも嫌だし。
「喉も潤ったし。アレク様のところに案内して頂戴。」
そう言うと川の上を歩いてこちら側に向かってくる。
「うわー。それも魔法?」
「そうよ。あなたなんでも驚くのね。」
なんだか変わった子と出会ってしまった。
とにかくアレク君のところに連れて行かないと。
それにメラニーだったら何かこの子について知ってるかも。
「スヴェンさん!思ったより遅くて心配しました。・・・その方はどなたでしょうか?」
「川で出会ったんだ。名前は・・・聞いてない。」
「ミーシャよ。初めまして。あなたがアレク様?」
「初めまして。私はメラニー・ベールです。アレク様は向こうにいらっしゃいますよ。」
「そうなの。では挨拶しなくてはね。」
なんだろう。ちょっとした気品というか、雰囲気というか。
・・・そうだ初めて会った頃のアレク君に感じた奴だ。
もしかして偉い人だったりして。そうだったらまずいな。
「オレもアレク君に水届けないとだから。あ、これメラニーの分の水筒ね。」
「ありがとうございます。僕はここで待っていますね。」
ちょっと向こうに行くとキノコを刻んでいるアレク君の姿が見えた。
「アレク君!お客さんだよ!」
「お帰りスヴェン君。それに・・・初めまして。アレク・イージスです。お名前を伺ってもよろしいでしょうか。」
「ミーシャ・イドリースです。先に名乗るべきでした。申し訳ございません。」
名前も苗字もどっちも聞いたことないな。
新しい開拓村でもできたのかな。オレも村の名前から取った”ツオイス”っていう珍しい苗字だし。
「楽にしてくださいミーシャさん。見たところ同年代のようですし、是非アレクと呼んでください。」
「承知しました。ではアレク、私もミーシャとお呼びください。敬語も不要です。」
「ありがとうございます。ではミーシャ、ちょっと聞きたいことがあるんだ。」
「ここに来た経緯とミーシャの経歴を詳細に話して欲しい。そうでないと信用できない。」
アレク君がそういうとミーシャは少し強張った表情をした。
でもすぐに笑顔を作って答えた。
「もちろんよアレク。当然のことだもの。」
「ごめんねミーシャ。お詫びに昼食はどうかな?僕が作る予定なんだ。」
「アレクが料理?そんなことそこの従者・・・じゃなくて、そういえばあなた名前は?」
「オレ?オレはスヴェン。スヴェン・ツオイス。アレク君と同じクラスでパーティメンバーだよ。ちなみにメラニーも同じ。」
従者と言われたのは聞かなかったことにする。
ミーシャもアレク君と同じで色々あるのかもしれないし。
「スヴェンね。よろしく、ミーシャでいいわ。」
「よろしくねミーシャ。」
なんだか不思議な女の子を連れてきてしまったみたいだ。
アレク君、メラニー。後はどうにかしてくれ!
人物紹介
ミーシャ・イドリース
町の外、丘の近くで出合った不思議な女の子。黒髪のロング。
名前は聞いたことないけど結構偉い人なのかも。




