第36話 試験結果
イテテ。
頭がぼんやりする・・・。
ちょっと気絶してたのかな。
「スヴェン!どこ?!大丈夫なの?!」
「マーサ様、あちらを!」
どうやらママと先生がオレを見つけてくれたようだ。
「スヴェン!怪我はしてない?痛い所は?」
「大丈夫だよママ・・・母さん。」
本当は色んな所がジンジンするけど。
「ここまでするなんて・・・私の見通しが甘かったですね。」
「先生のせいじゃないです。オレがやりたかったんだ。」
これは本当だ。
「スヴェン。試験の結果を言い渡そう。」
「父さん・・・。」
やれることはやった。悔いは無いと思う。
「・・・合格だ。よく乗り越えた。」
「ホント?!やったー!」
「あなた?ここまでやった説明はしてもらえるのでしょうね。」
あ、ママがキレモードだ。
「もちろんだよマーサ。スヴェンは突風で私の一撃を避けたのさ。自分の身とその案山子を守るためにね。」
「風魔法を噴射して飛んだのですね。そして案山子を”掴んで”後ろに回避した。そうなると・・・なるほど、よくやりましたスヴェンさん。あなたが誇らしいです。」
先生は頭を撫でてくれた。
こんなの初めてだ、結構照れる。
「そしてスヴェンが”掴んだ”案山子は燃えなかった。あの状況で冷静に魔法をコントロールできた証拠だ。文句無しの合格だよ。」
「ありがとう。自信が付いた・・・かも。」
「偉いわスヴェン。よくやったわね。」
本当によかった。これで来週からもみんなと一緒だ。
「それはそれとして、まだ説明が無いけれど。」
「さっき説明しただろうマーサ。スヴェンがーーー」
「”あなた”があそこまでやる必要あったのかしらねぇ?自分の子供を本気で殺してしまうつもりだったのかしら?」
「いや、違うよマーサ。狙いは外していたし、なによりスヴェンがどうにかできると思ってだね。」
「”思って”いたの?」
「いや!確信があって!」
「そんなわけあるか!そんな単純な状況じゃなかったでしょ!」
あーあ、こうなったら長いんだ。
オレも今回はパパが悪いと思うけど。
「少しよろしいですか、スヴェンさん。」
「あ、大丈夫です。先生。」
「最後の突風は私の想定以上の威力でした。何か変化を加えたのですか?」
「えと、これを使いました。」
オレは傍に落ちていたナイフを指さした。
レイン様から貰った高そうなナイフだ。
「これは・・・レインのナイフですね。もしかして杖代わりに?」
「父さんの魔法を見て、オレにもできないかなって思ったんです。握ったナイフに熱と風が、魔力が流れるイメージをしました。」
「なるほど、それならばあの威力の説明がつきます。」
「えと、何が起こったんですか?」
「魔法が混ざったのですよ、スヴェンさん。正確には魔法の元、熱魔法になる前の魔力と風魔法になる前の魔力ですね。」
「混ざると強くなるんですか?」
「今回はそうみたいです。スヴェンさんが蓄えた大量の熱と風を混ぜた魔力を、突風発生させる要領で放出した。スヴェンさんの感覚でいうと、『空気を押し固めて解放した』が近いでしょうか。」
「大体そんな感じです。そっか、同じ魔法を使おうとしても違う魔法になることがあるんだ。」
「魔法は奥深いです。ゆえに研究のしがいがあるというもので。恐らくお兄さんもそう感じていると思いますよ。」
「ありがとうございます。」
兄ちゃん。兄ちゃんの話は全然分かんなかったけど。
今なら兄ちゃんのやりたいこと、少しわかった気がするよ。
「ごめんよスヴェン。やりすぎたね。」
パパはママにしばらく絞られていた。
「あなた!誠意が足りないわ!」
「もう大丈夫だよ。怪我もしてないし。」
「いやいや、ごめんねぇ。ちょっと役に立とうと思ったんだけど、ダメだったかな?」
うわっ!びっくりした!アンドレ先生だ。
いつから居たんだ?!
「アンドレ教授!本日はご協力頂きありがとうございました。このお礼はしますのでギルドでお話できればと思います。」
パパが急にシャキッとした。お仕事モードだ。
「お礼なんて要らないよヨシサダ。それにスヴェンには前悪いことをしたからねぇ。お詫びだよ。」
「えと・・・あ、もしかして”さっき”のって。」
「そう、アンドレの声真似だよ。びっくりさせてごめんねぇ。」
なるほどなるほど。町に魔物が出るなんてよく考えれば変だ。
それに親玉級となればよりありえない。
「アンドレ教授。旦那を甘やかさないでください。いつも考えなしなんですよ。」
「教えた人に似たのかな?ごめんねぇマーサ。」
「あ、その、そういうわけではないです・・・。」
ママが引いた!すげー!
「それと比べるとスヴェンは良い先生に似たねぇ。冷静で賢い、そして度胸がある。」
「お恥ずかしいですアンドレ教授。あまり持ち上げないでください。」
「本当のことですからねぇ。あなたは昔ーーー」
「昔の話はよしましょうアンドレ教授。」
グレジオ先生の一言でこの話を終わった。
グレジオ先生はエルフ族で長生きで、アンドレ先生は120歳。
・・・いやダメだ。これ以上考えたら殺されるかもしれない。
「終わりがごちゃごちゃしてしまったが、改めて。スヴェンの外出を許可しよう。それでいいね?マーサ。」
「ええ、スヴェンが自分で勝ち取った権利よ。」
「ではこの書類にサインをお願いします。」
やった!これで自由だ!
「ではこれで私達は帰ります。アンドレ教授できれば我が家でお出迎えしたいのですが、いかがでしょうか?」
「悪いよヨシサダ。そんなに気を使わなくてもいいのにねぇ。」
「アンドレ教授。私からも是非お願いしますわ。」
「うーん。それならお邪魔させてもらうよ。でも手土産がないんだよねぇ。」
そう言って、リュックの中をごそごそと探すとアンドレ先生は1枚の紙を取り出した。
「スヴェン。将来は冒険者になるのかい?」
「えと、はい!冒険者になって!『物語の勇者』になります!」
「おお、元気でいいねぇ!じゃあこれを渡しておこう。将来きっと役に立つよ。」
「えと、これは何ですか?」
「レイヴン冒険者学校への推薦状さ。この前渡した名刺と合わせて学校に送れば必ず役に立つ。」
「ありがとうございます!」
うわー!超うれしい!
めちゃめちゃうれしい!
「冒険でトラウマを抱える冒険者は多いんだよねぇ。そしてそれを乗り越えられる者は少ない。」
「そう、なんですね。」
「また会おうねぇスヴェン。」
そうしてパパとママに連れられてアンドレ先生は帰っていった。
「ーーーってことがあったんだよね!これで来週もオレは冒険者だ!」
「すごいよスヴェン君!」
「そうですか。少しほっとしました。」
「結局コネで進学が決まったってことね。おめでとうスヴェン。」
なんか最後褒められていなかった気がするが、許そう。
今日はとってもいい日だ。




