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第28話 魔法の感覚

「魔法の特別授業は今日で最後になります~。今日は自由時間ですので、今までの授業を思い出して思うままに魔法を使ってみてください~。」

今日で魔法の授業も終わりかー。

この授業好きだったから残念だなー。

「スヴェン君。何かやりたいことある?」

「うーん。授業で習った順に振り返ってみる?」

「いいね。・・・あっちの方が空いているみたいだね。」

「よし!場所取っちゃおう!」


「最初の授業は覚えているかい?」

最初の授業はよく覚えている。

風車を壊して、先生に怒られて、寮の窓掃除させられた。

「先生に怒られたから・・・忘れられないよ。」

「そうだね。風車をこうやって回したんだ。」

アレク君は3つの風車をそれぞれ別の速度で回していた。

アレク君は魔法のコントロールがバツグンに上手だ。

最近の授業では先生のお手本を見た後、一発でできてしまうことが普通になっていた。

「よくそれできるよね。3つ?4つ?同時に風魔法使ってるの?」

「いいや、僕の感覚では”1人”さ。」

アレク君は魔法が生きているように見えるらしい。

「それってどんな風に見えてるの?ファラド様みたいに光の玉が飛んでたりする?」

「そうだね。光の玉が僕らの周りを飛んでいるように見える。」

光の玉が見えるのはファラド様と同じか。

「魔法が見えるのはわかるけど、それを使うってなるとイメージわかないなー。」

「魔法を使うときは”お願い”するんだ。光の玉にね。」

え?今までそんな風に魔法使ってたの?

「光の玉がしゃべるってこと?」

「そうだね。実はよく会話しているんだよ。僕が魔法の上達が早いのは、魔法自身に色々教えて貰っているからなんだ。」

「・・・へー。感覚が違いすぎてイメージわかないや。」

前世で見たアニメでは妖精が魔法を使うシーンがあった。

アレク君だけに見える妖精がいるって考えると楽だな。

「僕も魔法が”熱い”とか”重い”とかは理解できないし、これは魔法使いあるあるだね。」

先生もファラド様も言っていたけど、魔法をどう感じるかは人によって違う。

珍しい人だと味がしたり、匂いがしたりするらしい。

アレク君のように見えるし聞こえるって人も中にはいるみたいだ。

「あ、じゃあこれはどう見える?」

オレは空気の手で風車を掴んで止めようとした。

けど、バチンと弾かれてしまった。

「スヴェン君は風車を止めようとしたのかな?僕からは別の光の玉が飛んできて、喧嘩を始めたと思ったら後から来た方がどこかに行ってしまったように見えた。」

「おー。ちなみにオレの魔法もしゃべるの?」

「他の人の魔法も話すよ。大体は使用者に似た話し方をするね。スヴェン君のは特にわかりやすい。」

それはどういう意味だろう?話し方に特徴があるってこと?見た目が違う?

「元気いっぱいでやる気十分だ。すぐにわかるよ。」

「うーん。それはちょっと恥ずかしい。」

魔法の話をすると色んな違いが分かるから結構好きだ。


「アレク、スヴェン。励んでいるか。」

「はい!頑張ってます!」

「ファラド様、何か御用でしょうか?」

「アレク、スヴェン。少し付き合ってくれ。」

ファラド様からお願いをされるのは初めてだ。

何かあったのだろうか。

「二人の実力を確認したい。」

「えと、全然大丈夫なんですけど、何をすればいいですか?」

オレ達は演習場の中央に連れてこられた。

他の生徒たちは校庭の端の方で先生と一緒だ。

「・・・ファラド様!これはどういうつもりですか!」

びっくりした!アレク君が大声上げるなんて普通じゃないぞ。

「アレク、テストだ。」

ファラド様の視線がオレ達以外の何かを追っている。

・・・つまり魔法か!

「アレク君!見えてる?!」

「見える!風魔法だ!かなり数が多い!」

落ち着け!心臓に熱を集めろ。そして体全体に熱を広げる。

「スヴェン君!来るよ!」

風魔法が使われる前には空気が硬くなる感覚がある。

つまり空気の硬い所を探せば・・・

「アレク君!オレが握ってつぶす!」

空気の手で硬いところを握りつぶすと風が吹き荒れた。

どうやら相殺はできているみたいだ。

「やるなスヴェン。魔法が直接肌に触れていなくても感じられるのか。」

「ファラド様!危険です!やめましょう!」

「話は後だアレク。反撃しろ。」

その瞬間アレク君が吹き飛ばされて浮かび上がった・・・が身を翻して着地した。

「魔法が散ってしまうな。アレク、魔法と何を話した?」

「何も!ファラド様と同じで口数が少ないもので!」

どうやらオレにはわからない攻防があるみたいだ。

「アレク君!次どうしよう?!」

「魔法を全部つぶして!持久戦ならスヴェン君が勝つ!」

「オッケー!任された!」

熱の感覚が段々広がってきた。そういえばオレは熱を・・・というより魔法を通して”触る”感覚が広がるらしい。

普通だと思っていたけど、これはオレだけの感覚みたいだ。

「アレク、スヴェン。では次だ。」

なんだ?ファラド様の周りが急に波打ち始めた。

感じたことのない感覚・・・新しい魔法だ!

衝撃波(ウェーブ)

うわ!空気が・・・魔法が揺らされる!

色んな所が揺れて・・・頭がぐちゃぐちゃだ・・・。

「スヴェン君!大丈夫?!」

「ぎもじわるい・・・」

「スヴェンのようなタイプにはよく効く。有名な弱点だ、覚えておけ。」

「ファラド様!どういうつもりですか!」

「アレク、お前にはこれだ。」

ファラド様がまた何か用意しているみたいだ。

光撃(シャイニング)、そして音撃(ノイズ)

光と音!でもさっきのに比べれば大したものじゃない。

アレク君はどうだ?

「ファラド様・・・それあなたも辛いでしょう?」

アレク君は目と耳を覆っていた。対応できてる!

「どうだろうなアレク。準備次第だ。」

ファラド様はいつの間にかアレク君の後ろに回りこんでいた。

「・・・どうして?!」

「決着だアレク。」

ファラド様はアレク君の肩に手を置き、宣言した。

・・・いやまだだ。オレが残ってる!

「そこまでです!」

先生がいつの間にか傍にいた。って言うより止めてよ先生!


「皆さんよく頑張りました~。冷静な判断でしたよ~。」

これも授業?でも危なすぎるよ。

「アレクさんとスヴェンさんのテストの結果は合格です~。」

「そういうことだ。今回は先生の代わりに私が担当した。」

テストかー。でもあんまりいい気分じゃない。

「先生。これは何を試されたのでしょうか。詳細を教えてください。」

アレク君も少し怒っているようだ。

「アレク、スヴェン。これはお前達が魔法を使うにふさわしいかのテストだ。」

「えと、どういうこと・・・ですか?」

「突然の事態に冷静に対処できるかを試した。魔法は危険だからな。」

「驚いた拍子に思ってもいない魔法を使う事故はよくあるのですよ~。例えば辺り一帯を吹き飛ばしてしまう、なんてことは。」

わからなくはない。オレ一人だったら驚いてファラド様を吹き飛ばそうとしていた可能性はある。

「アレクとスヴェンは魔法の才能がある。それに依頼で魔法を使う機会も多いだろう。だからよりプレッシャーがかかる状況で試した。」

「ファラド様が危険でした。我々が冷静な判断ができるかは不確定です。」

「お前達になら出来ると判断した。自分で言うのもなんだが・・・私は攻撃してはいけない相手だ。許せ、同時に私のテストでもあったのだ。」

ファラド様のテストか。どんな内容なんだろう。

「ファラド様の課題はお二人を無傷で制圧することでした~。見事合格です~。」

見事に合格されてしまったのか。くやしいな。

「そうですか・・・では納得します。」

「では今年は皆さん全員合格ですね~。先生嬉しいです~。」

今年最後の授業が終わった。びっくり系は苦手だからやめてほしい。


「最後さ、なんでファラド様は自由に動けたんだろうね。目をふさいでいたならアレク君と同じ状況だっただろうし。」

「光の次に音が来た。ファラド様も魔法が”見える”タイプだから。音の魔法で視界を塞いでいたんだろうね。やられたよ。」

「そうなんだ・・・強いねファラド様は。」

「同じ手では負けないよ。もう覚えたからね。」

冒険者になったらファラド様のような魔法の使い方が普通なのかな?

終わってみれば悪くない体験だったかも。

人物紹介

ファラド・クレイグニル・チャート

領主様の息子。11歳とは思えない雰囲気。

話かけられるとめちゃめちゃ緊張する。

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