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第27話 不安の種

オレはアレク君とメラニーの所に戻り、ウインドベアの親玉がまた見つかったらしいことを伝えた。

「ウインドベアの親玉か、その件については『問題は解決した』と聞いているね。」

「では2匹目が現れたと考えるのが自然でしょうか?」

「理由はいくつかあるけど、2匹目が現れるのは不自然なんだ。」

「オレも聞いたことある!とにかく『同じ魔物は現れない』が普通だって。」

「詳しいなアレク、スヴェン。」

うわっ!びっくりした!ギルドマスターか!

突然渋い声で話しかけるのはやめてほしい。

「マスター、見解を伺ってもよろしいでしょうか?」

「レインがしくじったのだろう。スヴェンが言うように同じ魔物は二度現れない。」

「それは何ででしょうか?」

「君は・・・メラニーだな。前に一度会った。」

「はい。以前会議に参加させていただきました。」

「ふむ。アレク、メラニーに理由を説明してくれ。」

そう言うとマスターはつみれ汁を自分のお椀に入れて食べ始めた。

オレのおかわり分が!許せない!

「はい。魔物の発生にはいくつか種類がありますが、ウインドベアは動物から派生したタイプなんだ。」

「元々は熊だったという意味ですか?」

「遠い昔は熊だったと言われているね。」

へー。アレク君は本当になんでも知っているなー。

「でもさ、何で魔法が使えるようになったの?魔鉱石食べたとか?」

「詳細は違うけど大体同じ原因だと考えられているね。発生の起源はよくわからないから説明は省くけど、今回大事なのはウインドベアの繁殖が熊と同じってことなんだ。」

「つまり動物と同じで子供が生まれて大きくなるという意味ですね。」

「そうだねメラニー。そして普通の熊と食べ物も似ている。違うのは魔鉱石を食べるということなんだ。」

「魔鉱石?それってその辺にあるものだっけ?見かけたことないけど。」

「あんまり無いね。特にウインドベアは風魔法の魔鉱石しか食べない。」

「え?でもウインドベアは適当な罠にかかるくらいいるよ?.」

「”親玉級になる”には魔鉱石を食べる必要があるのでしょうか。」

「その通りだね。反対に生まれながらの親玉級はいないとされているんだ。」

難しい。結局どういうことだ?

「スヴェン君。貴重な魔鉱石を食べたウインドベアが2体現れる可能性はどれくらいだと思う?」

「すごく珍しいだろうね。・・・あ!そういうことか。」

「補足すると親玉級になるには少しでは足りん。継続的な摂取が必要だ。」

つみれ汁を食べ終えたマスターが食器を洗いながら補足してきた。

雰囲気でごまかしているけど説明したのはアレク君だから。感謝しないから!

「結局レインがしくじったと考えるのが自然だ。」

マスターの意見は”レイン様のミス”で決まっているようだ。

「そうですね、或いは魔鉱石の鉱床があるか。」

アレク君は”レイン様のミス”以外の可能性が高いと考えているみたいだ。

「アレクよ、スヴェンも言っただろう。チャート領はウインドベアの生息地だ。それならば今まで親玉級が複数現れなかった理由が説明できない。」

マスターが自信を持っているということはギルド内の共通意見なんだろうな。

「あの、マスター。ウインドベアの親玉ってどれくらいの強さなんですか?」

「一撃で終わりだ。強い相手ではない。」

あ、マスターに聞いたオレが悪かった。全く意味がない。

「・・・兵士の皆さんから聞く話では、準備をした大人数人であれば討伐できるそうです。」

意味のある話をありがとう、メラニー。

「この前読んだ資料では、討伐専門の銀クラス冒険者パーティが討伐した実績があったよ。」

アレク君はなんでも知っているな!いつ読んだんだよそんな資料!

「えと、レイン様が失敗する可能性はなさそう・・・だよね?」

「僕も同じ意見だよスヴェン君。」

「話を聞いた限りでは、僕もスヴェンさんと同じになりますね。」

マスターは椅子に腰かけため息をついた。

「レインは同じ時期に一度ミスをしている。スヴェン、お前もよく知っているだろう。」

それを言われると迷う。うーん。考えてもわかんないや。

「スヴェン君。何か思いつくことはないかい?」

オレ?もうよくわかんないから適当なこと言おう。

「えと、誰かが魔鉱石を食べさせたとか?」

「スヴェンさん、それは誰が何のためにですか?」

やめてよメラニー。オレもそんなこと知らないよ。

「ふむ。その可能性はギルド内で考えた。しかしあまりにも不利益の方が大きく、利益が少ない。本当に意味のない行動だ。」

考えたんだ。ギルドのみんなも大変だな。

「町の作物への被害、森に入る冒険者や住民への被害。それから森から追い出された動物による二次被害。そして何より討伐して得られる素材は安価です。」

「・・・もしかして魔族の仕業ですか?」

メラニーが少し怖い顔をした。

「ギルドは軍の警備を信頼している。魔族が工作を行ったなら痕跡が残るはずだ。それを軍が見逃すとは思えない。それに魔族としてもこの豪雪の中、わざわざこちら側に来るのは危険すぎる。」

魔族か。チャート領は山脈、海を挟んで魔族と接している。でも授業では今まで一度も魔族がチャート領まで乗り込んできたことはない、と言っていた。

山は過酷な環境を軍隊が超えてくることができず、海は水生の魔物が強すぎて大きな船が渡れない。

唯一人が移動できる場所、山と海が接する部分は人族も魔族もめちゃくちゃ厳重な警備をしている。

だからどちらもそこから攻めることは絶対にできないそうだ。

・・・少ない人数で来たとしたらわからない・・・かも?

「・・・少し不安ですね。軍の皆さんに一度聞いてみます。」

「メラニー君。お願いできるかな?僕も冬の間に色々考えてみるよ。」

いやー、町の偉い人達は大変だな。

「・・・アレク、メラニー。ギルドでも改めて調査はしよう。だがそれは春からだ。この冬の間にできることはほとんどない。」

それもそうだ。何もかもを雪が隠してしまう今ではどうしようもない。

「この話は終わりだ。子供がどうこうする話ではない。」

マスターはどこかへ行ってしまった。

小声で『苦労するな、メルガレアよ。』と呟いたのが聞こえたけど、なんとなくその気持ちはわかる。

「・・・スヴェン君。メラニー君。ごめんね、マスターの言う通り春まで待とうか。」

「そうですねアレクさん。私も話を聞くだけに留めます。」

「よし!じゃあ今はゆっくり休んで、春のための準備をしよう!」

春が来れば授業も再開して忙しくなる。

今は休んでいても誰も怒らないだろう。

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