第23話 雪の季節
湖に氷が張り、息が白く染まる季節になった。
冬のチャート領は多くの雪が降る。
そんなわけで学校は雪が溶けるまでお休みだ。
週末に1度魔法の特別授業がある以外は特にやることがない。
・・・なんてことは全くない。子供も大人も早朝の雪かきから一日が始まる。
「スヴェン!こっちを頼む!店が潰れてしまうよ!」
「おい!順番はこっちが先だ!早く頼むぜ!」
オレはにわかに大人気になっていた。
思い付きで熱魔法をつかった除雪作業をしていたら、こっちも頼むあっちも頼むと引っ張りだこだ。
「すぐ行きます!・・・ごめんアレク君!後お願い!」
そんなわけでアレク君に除雪依頼のお手伝いと揉め事の解決をお願いしていた。
「わかったよスヴェン君!・・・ではお店の様子確認しますね!」
アレク君がサクサク問題を解決して、オレはとにかく除雪する。
完璧な作戦だ。
・・・アレク君がいなかったらオレはぶっ倒れていただろう。
「じゃあ今から雪溶かすので!下がっていてください!」
オレはいつものように心臓に熱を込める。
そして体を伝って辺りが熱くなるイメージを広げた。
このときやりすぎると壁や屋根が割れてしまうので、積った雪を溶かすぐらいに調整する。
最初はだいぶ時間がかかったけど今はもう慣れてしまった。
・・・犠牲になったオレの部屋には敬礼。(アレク君がお父様に言って直してくれた。)
「終わりました!これぐらい大丈夫ですか!」
「はいよ!お金はギルドに持っていくから。次行ってやんな!」
「お願いします!」
さて次の場所に行くか!
「今日もお疲れ様スヴェン君。昼食食べに行こうか。」
「お疲れアレク君。もうへとへとだ~。」
昼前になってやっと依頼が完了する。
秋の頃よりかなり稼いでいるけど、使うタイミングがない。
昼ご飯を食べたらすぐ寝て、夜に起きて家事や宿題をしたら次の日に備えて寝る。
そんな毎日の繰り返しだ。
「そういえばギルドにお金を受け取りに行ったら、溶かした雪の処理について相談されたんだ。」
「今までのじゃダメってことだよね。」
「そうだね。道路の溝に沿って水が流れた後、町の外で凍って水がせき止められているらしい。」
「うえー。ギルドのみんなで相談して決めたのにまだ足りないかー。」
除雪した雪、溶かした雪はどうするかは町の大きな問題だ。
当然色んな対策をしているけど、今年は雪が多すぎる。
「町全体で対応する案はチャート様とお父様で考えているけど・・・。」
「やっぱり大変なんだね。とりあえず今日は寝る前にギルド行かなきゃ・・・。」
ササッと昼食を食べてアレク君とギルドに向かった。
「だ・か・ら!そんなことギルドの管轄じゃないでしょ!」
ナナリさんの声だ。また依頼の件で揉めてるのか。
「そんなこと言われても!壊れた壁はどうするんだよ!このままじゃ寒さで死んじまうよ!」
魔法を使い慣れていない人が魔法で雪を溶かそうとして、そのまま家を壊してしまう事故が沢山起きている。
そして壊した本人はバックレてしまうことがあり、その時はギルドに文句がくるという流れだ。
「張り紙にある通り、役所が対応してくれるので!それまでギルドでお待ちくださいね!」
受付嬢って大変だな。いつもありがとうナナリさん。
「・・・ああ、坊や達。呼び出しちゃってごめんね。今日はギルドマスターからの呼び出しだからここ問われなくて。」
「大丈夫ですよナナリさん。詳細は伺っていますので後はお任せください。」
「ありがとうね。・・・こんなに小っちゃいのに坊やも大変ね。」
「お父様の付き添いですから。大したことではありません。」
今までの流れから考えると・・・。
ギルドマスターとアレク君のお父様が問題解決の話合いをする。
そこにアレク君と・・・オレが呼ばれているらしい。
なんで?
「ごめんねスヴェン君。本当は呼ぶつもりはなかったんだけど・・・。お父様から申し付けられたんだ。」
最近アレク君はオレの表情と会話できるようになった。
・・・なにが出来てももう驚かないけど、怖い。
「アレク、スヴェン。会議は2階の応接室だ。」
この渋い声は・・・ギルドマスターだ。
ギルドマスターのエイデン・ヴァロストボルト。
この町の唯一の金クラスで最強の男。
一度だけギルドマスターの登録証を見たことがあるが、金鉱石に赤の装飾がかっこよかった。
「ありがとうございます。私たちは先に上がってます。行こうかスヴェン君。」
「えと、先に行きます!」
階段を上がり応接室に入ると、”歓迎”って感じの内装になっていた。
「あれ?今からパーティ?」
「・・・マスターはお父様を歓迎してくださるみたいだね。」
オレも今ならアレク君の表情は読めるぞ。
困ったどうしよう、だね。
「・・・これが普通ですって顔で乗り切ろうか。」
「スヴェン君。頑張ろうね。」
「メルガレア、歓迎するぞ。」
「エイデン。町長と呼んでくれ。今日は公的な場だ。」
「そうか。気を付けよう。」
メルガレア?あ、アレク君のお父様か。
「スヴェン君。さっきの通りよろしくね。」
「任せてよアレク君。」
オレは部屋を出て町長とマスターを待つ。
・・・扉の前まで来た。嚙まないように、噛まないように・・・。
「本日は冒険者ギルドにお越し頂きありがとうございます!えと、部屋は暖めておりますのでおくつろぎください!」
よし!それで扉を開けて頭を下げる・・・。OKだ。
「ん?どうしたんだ。スヴェン。」
「迎えてくれているのだ。いい加減慣れろエイデン・・・。」
少しため息をつくとこちらに町長は向き直った。
「君がスヴェンか。アレクからは話を聞いている。」
「はい!いつも、その、いっぱい助けてもらっています!」
「そうか。ご苦労、楽にしてくれ。」
”楽にしろ”がきた。これで後はアレク君に任せればいいんだよな。
「ふーむ。楽にしろスヴェン。」
「私が言った。1回で大丈夫・・・いやお前は毎回言ってやれ。」
「そうか。面倒だ。」
ほっとしたけど毎回これだと肩凝っちゃうな。
気を緩めたその途端・・・
「おい。」
やば!まだ早かったか!
「エイデン。これはなんだ?」
「歓迎だ、メル・・・町長。」
「子供のパーティではないのだぞ・・・。まあいい、会議だエイデン。」
マスター・・・でもちょっと親近感が湧いた。
「進行役はアレクが務めるように。」
「承りました、お父様。」
「一ついいか町長。なぜこの会議は大人二人に子供二人なのだ。」
「ギルドマスターのエイデン。それは君の日頃の業務態度の確認のためだ。・・・あと今回の件はアレクも関わっているのでな。」
「ふむ。それならそれでいいが。・・・スヴェン。後で皆に詳細を伝えるように。」
「え?あ、はい!」
なんか大役を任されてしまった。嫌すぎる。
とりあえず内容はメモしよう。
「それでは会議を始めます。」
よくわからないまま会議が始まった。本当に大丈夫なんだろうか。
人物紹介
ギルドマスター
エイデン・ヴァロストボルト
唯一の金クラスで最強の男。渋い声で迫力がある。
32歳って皆が言ってた。考えることは得意じゃないらしい。
メルガレア・イージス(・チャート)
アレク君のお父様。町長。
ギルドマスターと幼馴染らしい。




