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第22話 豪華な昼ご飯

今日は午後の演習が休みでやることないなって思っていたら、メラニーに声をかけられた。

「アレクさん。スヴェンさん。昼食を一緒に食べませんか。」

「ありがとうメラニー君。是非ご一緒させて欲しいな。」

「よし!じゃあ今日は屋台じゃなくてギルドで食べるなんてどう?」

「それもいいね。メラニー君はどう思う?」

「実はですね。今日は皆さんを私の家の昼食にお招きしようと考えていました。」

「ほんと?!行きたい!」

前世では友達の家で遊ぶこともあったけど、こっちで友達の家に行くのは始めてだ。

ん?でもアレク君は少し微妙な顔をしているな。

「アレク君どうかした?」

「僕は皆に不要な気遣いをさせてしまうから・・・。」

「今日はアレクさんを誘うと事前に伝えています。ですからお気になさらないでください。」

「ありがとうメラニー君。じゃあお邪魔させてもらうね。」

アレク君は気軽に友達の家にも行けないのか・・・。

でもずっと気になっていたことがある。この機会に聞いてしまおう。

「その、当たり前のことだったらごめん。アレク君は町長の息子で偉いってわかってるんだけど。なんかこう、大人もアレク君にすごい丁寧だし・・・。オレとどれくらいの差があるのかなって。」

「ははは。スヴェン君、多分そう考えていると思っていたよ。」

「なるほどだからか・・・スヴェンさんはかなりギリギリのラインを攻めてるなと思っていました。」

あれ?オレのアレク君への態度って結構まずかったのかな。

「アレクさんは言いにくいでしょうから僕から説明します。アレク君は表向きは町長のご子息という立場ですが、実は貴族としての立場もあるのです。」

「貴族?チャート様と同じってこと?」

「そうです。アレクさんはチャート家に名を連ねる方なのです。」

「えー!でも名前が違うよ!アレク君はイージスだよ?!」

「スヴェン君。僕の本当の名前はアレク・イージス・チャートなんだ。」

うわわわわ。知らなかった!なんで誰も教えてくれなかったんだ!

「僕のお父様がこの町の町長になるときに改名したんだ。お父様はその時にチャートの名前を名乗らないことに決めた。でもそれは決意であってチャート家に名前は残っているんだよ。」

なんでそんな面倒なことを。そのせいでオレがとんでもない生意気野郎になってしまった。

「ファラド様とアレクさんはいとこの関係になります。お父様どうしがご兄弟でおじい様が同じ方ですね。」

先生!一番最初の授業でこれを教えてください!この町の一番大事な歴史じゃないですかー!

「こ、これまで・・・えと、生意気ですみません。」

「・・・。」

一瞬、アレク君が悲しい顔をしているように見えた。

・・・そっか。だからオレには言わなかったのか。

「・・・でもアレク君に怒られないならそのままでいくね!正直”ちゃんと”するのは苦手なんだ。アレク君も知ってるよね?」

「怒らないよ。それに会話するたびにスヴェン君の挨拶を考えてあげなきゃいけないのは大変だ。」

「ひどいな!最近はうまくなったのに!」

少しほっとした。アレク君はうれしそうに見える。

・・・でもそれはそれとして、”ちゃんと”しないとダメな時はある。気を付けよう。

「さて、外は長く居ると寒いです。我が家は暖かいですから急ぎましょう。」

今日はメラニーの家で昼ご飯だ!


「町の西側は初めて来るなー。」

町の東側と比べて建物が豪華というか、飾ってあるというか。

「私の家は代々町の西門の衛兵をしているので、身分は高くないですが西側に住んでいるんですよ。」

「代々門番してるってこと?すごいね!」

「ベール家はチャート領の開拓が始まるときから続いている歴史ある家だよ。」

「ありがとうございます。お恥ずかしいです。」

へー、皆色々あるんだなー。

うちはオレが2代目だから歴史も何もないけど。

「見えてきました。あれが我が家です。」

西門のすぐ近く、衛兵の詰め所の隣の家を指さした。

あれ?でかくない?!屋敷じゃん!

「家は兵士の住居も兼ねているので大きさだけでは自慢できます。」

「びっくりしたよ。とんでもないお金持ちかと思った。」

「ほとんどは町の持ち物ですよ。」

オレたちは正門を通り過ぎた後、小道に入って裏口から家に入った。

「ただいま、お母さん。友人を連れてきました。」

「おかえりメラニー。アレク様とスヴェン君ですね。お待ちしていました。」

「今日はお世話になります。」

「おじゃまします!」

メラニーのお母さんはその後昼食の準備に奥に戻ってしまった。

オレたちはメラニーに連れられて食堂へと進んだ。

「メラニー、今から昼食か?ちゃんと食べるんだぞ!」

「お前は細いからもっと食べろ!筋肉がつかないぞ!」

「まずは食べろ!そしたらもっとでかくなるぞ!」

メラニーは通りすがりに兵士の皆から声を掛けられていた。

いいやつだから気に入られてるんだな。


「もう少しで昼食が運ばれてきますから、お待ちください。」

「これが食堂?でかいなー。」

冒険者ギルドの酒場の方が大きいけど、ずっときれいだ。

ちゃんと掃除されているのがわかる。

「メラニーとそのお友達!これが今日の昼食だしっかり食べろ!」

少し雑談していたら前掛けをした中年のおじさんが料理を運んできた。

「いつもありがとうございます。」

「おうよ!今日は腹いっぱい食ってくれ!お友達も遠慮なくな!」

料理は鹿肉のシチューと冬野菜の炒め物、それにバスケットいっぱいのパン。

最高の昼食だ!あまりにも豪華すぎる!

「はい!いただきます!」

「こんなに沢山の料理を作って頂けるなんて・・・ありがとうございます。」

「腹いっぱい食ってくれ!それじゃ。」

そう言っておじさんは厨房に引っ込んでしまった。

「すごい料理だ!もしかしてメラニーの家のコックさん?」

「ふふ。違うよスヴェンさん。彼は軍の専属コックなんだ。」

「そんな人がいるの!全然知らなかった。」

「ここは衛兵の詰め所であり、宿泊施設だからね。彼が昼食と夕食を作ってくれるんだ。」

「そうなんだ!アレク君知ってた?」

「綺麗な寝床とおいしい食事が有名と聞いたことはあったね。でも実際に見るのは始めてだよ。」

「ありがとうございます。後で皆さんに伝えますね。」

将来はここで働いてもいいかなー。

・・・って危ない。目標が変わってしまうところだった。

「冷めてしまうのはいけませんので、料理を頂きましょう。」

「いただきます!」

「「頂きます。」」

オレたちは最高に豪華な昼食に飛びついた。


「ごちそうさまでした!」

「本当によく食べましたねスヴェンさん。」

「メラニー君の分まで食べてしまうんじゃないかって心配したよ。」

「ちゃんと考えてたよ!」

それにしても本当においしかった。

こんな豪華な食事はいつ以来だろう。

「お、全部食べたんだな。いいぞ!それでこそ作りがいがあるってもんよ!」

「おいしかったです!」

「おうよ!また来いよな!」

気が付いたらコックのおじさんが食器を全て片付けてしまった。

なんだか落ち着かないな。

「メラニー。片付けとか手伝うよ。」

「・・・今日はほら、初めての我が家なので。」

メラニーの視線が一瞬アレク君を捉えた。

そうか、今が”ちゃんと”する時なんだな。

メラニーの周りのみんながアレク君を”歓迎”している。

だからオレもお客様じゃないと。

・・・だけどそれはそれ。

「アレク君!今度はオレたちの最高の料理をメラニーに食べて貰おう!」

「・・・いいね!僕料理には少し自信があるんだ。スヴェン君と考えた最高の冒険者ご飯を味わってほしい。どうかなメラニー君。」

「是非おねがいします!」

今度はオレたちが最高の料理でメラニーをおもてなしするんだ!

何がいいかな?やっぱり贅沢パン?鳥の串焼きでもいいな。

「あの・・・スヴェンさん。信頼がないわけではないのです。ですが、食べられるものでお願いしますね?」

「大丈夫だよ!なんたってオレはツオイス村のギルド長の息子で、ギルドに集まる冒険者からこれぞ!っていう料理を聞いてまわってたんだ!それにーーー」

そこから先はあんまり覚えてないけど、とにかく楽しいおしゃべりをして過ごした。


「メラニー君のお母様。アレク・イージスは最高のもてなしを頂きました。お礼を申し上げます。」

「いいのですよ。これからもメラニーと仲良くしてください。」

「そんな、こちらからお願いしたいです。」

「僕・・・えと、私も招いて頂いてありがとうございました!」

「はい。またいらしてください。」

メラニーはオレたちを裏口まで誘導した後、西門の前まで送ってくれた。

「アレクさん。スヴェンさん。またいらしてください。」

「メラニー。また明日ね!」

「今度はこちらから誘うよ!」


寮に戻りながらオレはぐるぐると考え事をしていた。

アレク君と一緒にいるなら色んなことができないとダメだ。

アレク君は友達だけど、貴族だ。

オレは貴族の連れとして、ちゃんとしないといけないことがこれから先何回もあるだろう。

その時オレのせいでみんなが困らないように、しっかり勉強しないとな。

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