第20話 魔法の授業と先輩と
「皆さんおはようございます~。今週から魔法の特別授業が始まります~。今年は10人も参加してくれるなんて先生うれしいです~。」
今日は待ちに待った魔法の授業だ。
秋に貯めたお金のほとんどを使ったからには気合を入れて勉強しよう。
「2年目の皆さんが5名、1年目の皆さんが5名となっています~。合同の授業は1年目の皆さんは初めてですね~。それでは先輩の皆さんに挨拶しましょう~。」
実は校舎と寮は2つあり演習場だけが共有となっている。1年目と2年目の生徒はそれぞれの校舎と寮で活動する形式のため、先輩を見かけることはあっても話す機会はない。
演習でもオレたちはランニングばかりなので、演習場で顔を合わせることもほとんどなかった。
「アレク・イージスと申します。先輩方ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。」
アレク君に続きみんなが挨拶をする。最後はオレの番だ。
「スヴェン・ツオイスと申します。先輩方ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。」
ふぅ、なんとか噛まなかった。
アレク君とあいさつの準備をしてきてよかった。
「ツオイス・・・もしかしてタクチャーさんの弟か。」
誰だろう。すごい凛とした人だ。なんだか見覚えがあるぞ。
「すまない。今度は私達の番だった。」
おお、立ち上がるとメラニーぐらい背が高い。11歳でこの迫力はすごい。
「ファラド・クレイグニル・チャート。以後よろしく。」
チャート様の息子だ!やばい、全然準備してない。どうしよう大丈夫かな。
「えと、初めまして。タクチャーは私の兄です。えと、兄とお知り合いですか?」
「・・・。」
うわわ、めっちゃ見られてる!
失礼だったかな?兄じゃダメだっけ。お兄様じゃないとダメだっけ。
「タクチャーさんには色々教えて貰ったことがある。君は・・・あまり似ていない。」
「そ、そうなんですね!す、すみません!」
コエー!これで1つしか違わないとか噓でしょほんと。これが貴族と平民の差?
「いや大丈夫。すまない皆、時間を取った。」
その後は2年目の先輩のあいさつ・・・だったけど頭が真っ白でなにも覚えてないや。
「皆さん素晴らしい挨拶でしたよ~。早速授業に入りましょう~。」
先生の指示で一列にみんなが並ばされた。
なにをするんだろうか。ドキドキする。
「今から風の魔法を使用します~。1年目の皆さんは先輩達をよく見ていてくださいね~。」
先生が腕を上げると空気がピリッとなるのを感じた。
同時に先輩たちは真剣な表情で構える。
「3・・・」
「2・・・」
空気のピリピリが大きくなるのを感じる。
「1・・・」
息が苦しい・・・空気がこう押されているような・・・
「放て!」
「「「「突風」」」」
その瞬間風船を肌に押し付けている感覚が弾け、一陣の風が吹いた。
その風は砂埃を掬い上げ視界を覆い隠す。
・・・おおお!かっこいい!
「「「「すげー!」」」」
1年生たちは大はしゃぎだ。
これが魔法かー!オレも早く使えるようになりたい!
あっ、騒ぎすぎたかな。先生がこっち見てる・・・。
「・・・魔法はかっこよく、使いこなせれば便利な道具です。」
先生はオレの瞳を見つめながら続けた。
「正しく使えば命を救う奇跡になりますが、誤ればあなたの大切なものを一息で消し去るでしょう。」
生徒の顔を見渡し、また続ける。
「ではスヴェン君。この魔法を使えばどんな良いことができるでしょうか。」
「えと、あの、荷物を・・・荷物を風で浮かせて運べます。」
「そうですね。ではアレク君。どんな悪いことができるでしょうか。」
「はい先生。至近距離で人にぶつけて大怪我をさせることができます。」
「はい。どちらも正解です。」
先生は真剣な顔でさらに続けた。
「ですが未熟であれば浮かせた荷物を人にぶつけることもあるでしょう。反対により優れていれば風魔法で強力な魔物を打ち倒すことも可能です。」
最後に笑顔でこう続けた。
「魔法は”使いどころ”なのです。私達はそれを今、ここで学びます。」
1年生はそれぞれ風車を手渡され、風の魔法で10回転させるように言われた。
それ以外はどういう条件でもOK。
結構簡単そうに見えるけど、これが全然うまくいかない。
みんな風を起こすこと自体はできるけど、大体は弱すぎで風車が回らない。
たまに強い風を起こせても変な方向に吹いてしまって風車に当たりもしない。
・・・うん。超難しい。手で回した方が早いなこれ。
「皆さん苦戦していますね~。これが誰でも魔法が使えるのに、誰もが魔法を使うわけではない理由です~。正直面倒な割にコスパが悪いんですよね~。」
そういいながら先生の風車は羽を回しながら、体の周りをくるくる周っていた。しかも5つも。
「魔法に必要なものは、"条件"と"意思"です~。条件とは即ちあなたを取り囲む全ての物事、意思とは魔法が発生した結果を頭に描くことを示します~。」
風車がそれぞれ違う速度で回転し始めた。なんだそれ。すごすぎ。
「さあ、あなたの風車はどこにありますか~。手の上それとも3m先の地面でしょうか~。その風車が回っている姿をイメージしてくださいね~。」
風車が回る・・・回る・・・。イメージ・・・イメージ・・・。
ぐるぐる・・・ぐるぐる・・・。ここだ!
「って・・・ぅぅぅああああああぁぁぁぁぁ!!!」
オレは突風に巻き上げられて宙に浮いた。
うげっ!痛いー!尻もちついた・・・。
「スヴェン君は力を込めすぎですね~。風を吹かせることをイメージしすぎだと思います~。」
「はい、先生。頑張ります・・・。」
できない。風魔法が全然できない。向いてないのかなー。
熱魔法だったらいつでもできるのになー。
「アレク君。どう?うまくできる?」
「それなりには。スヴェン君は苦戦しているみたいだね。」
アレク君は手に持った風車を同じ速さで回していた。
・・・まぁいつものことだ。気にしても仕方がない。
もう一回やってみよう。
「スヴェン。出来ていないのか。」
「ファラド様?!えっと、できてないです!」
「・・・少し教えてやろう。」
うれしい、うれしいけど!
緊張しすぎてそれどころじゃないよ!
人物紹介
ファラド・クレイグニル・チャート
領主様の息子。11歳とは思えない雰囲気。
話かけられるとめちゃめちゃ緊張する。




