第15話 報酬の時間
「スヴェン君。ここが依頼元のポーション屋だね。」
「ありがとうアレク君。えと、ごめんください!」
扉を開けるとムワッと生暖かい空気とともに、いろんな種類のお線香を同時に焚いたような香りがした。
これポーションを煮込んでる香りか。うーん。嫌いではないな。
「おやおや、小さいお客さんだね。いらっしゃい。お使いかな?」
「こんにちわ、カウントさん。お久しぶりです。」
「・・・おぉ、これはアレク様。大きくなられましたね。」
「おかげさまで、今年で10歳となりました。」
「もちろん覚えていますよ。私の孫と同い年なのですから。」
あれ、アレク君と店主のおばあさんは知り合いなのか。
お店も結構広いし、有名店なのかな。
「そういえば今日は学校ではないのですか?アロナは学校だと・・・。」
「僕達は特別に休みなのです。少し事情がありまして。」
「今日の目的は?・・・ああ、なるほど。そういうことですか。」
「はい。レイン様が納品した薬草の報酬を頂きに来たのです。」
「確かに伺っていますよ。『報酬は作業者に渡してくれ』と。」
レイン様、なんというか真面目だなー。
うちの村の冒険者なんて自分の報酬だけ割り増しにしてくれ、ぐらいが普通なのに。
「さて、薬草を採ってきてくれたのは君なんだね。お名前は?」
「えと、スヴェンっていいます!スヴェン・ツオイスです!」
「スヴェン様。覚えたわ。私はカウントばあさんです。よろしくお願いしますね。」
「お願いします!」
あいさつもそこそこに、この前採った薬草の量と質を考慮した報酬が支払われた。
合計銀貨3枚だった。つまり基本の金額と同じで、可もなく不可もない結果ってことか。
「ありがとうございました。次も頑張ります!」
「よろしくお願いしますね。」
・・・ん?なんだかアレク君がほっとした表情でこっちを見てる。
ちゃんと受け答えができるか心配されていたのかな?
報酬の話も一段落したので買い物の時間になった。
アレク君がポーション棚を漁りながら、あれやこれやをカウントおばあさんに聞きはじめて暇になった。
ふと気になって目立つ棚にぼんやり眺めていると小さな看板があった。
『最新製法で作った新ポーション!いつもの倍効きます。』
なんだそりゃ。前世でもこんな感じの商品紹介あったな。POPっていうんだっけ。あの小さいカード。
『最新製法では鍋が違います。新しい鍋は効率的に熱を伝えることにより、薬草が持つ本来の成分を十分に引き出し、さらに混ぜた有効成分をーーー』
難しい話が始まった。全然よくわかんないけど、単純な冒険者は飛びつきそうだ。
『近年王都で発明されたこの製法は、タクチャー・ツオイスがこの町にもたらしーーー』
あれ?兄ちゃんの名前がある。相変わらずよくわからないことしてるんだな。
昔から知らないことを本で調べて、よくオレに見せてくれていた。
当たり前すぎてよくわかんないことも多かったけど、今度は難しすぎてよくわかんないことをしている。
すごいなぁ、兄ちゃんは。
『兄ちゃん。王都に行くの?ずるい!』
『王都の学校に行くんだよ。勉強しに行くんだ。』
『オレも王都に行く!』
『それならスヴェン、町の学校で一番になれ。一番になったらどこでも行ける。王都でもいい、もちろん別のところでも。』
『えー、嫌だよー。難しいよー。』
『お決まりの”イヤイヤ”かスヴェン。じゃあ大人になるまで待て。』
『オレもすぐ行きたい!』
『学校で一番になって、それでも来たかったら勝手に来いよ。スヴェン。』
そういえば一番になりたい理由ってこんなのだったな。
今は別に王都に絶対行きたいわけじゃないけど、一番にはなりたいよ。
「スヴェン君お待たせ。ごめんね長くなっちゃった。」
「大丈夫だよ。オレも気になるものを見てたんだ。」
「・・・ああ、スヴェン君のお兄様の協力で作成された新ポーションか。すごいね、お兄様は。僕もさっきカウントさんに補足して貰ってようやく理解できたんだ。」
「わかったんだ!」
「最初のところだけだよ。」
嘘だろー。これくらいはわかって当たり前なのか?
・・・後でアレク君に説明してもらおう。
「カウントさん。今日はありがとうございました。」
「アレク様。スヴェン様。またいらしてください。」
「はい!また来ます!」
さて今日は帰ろうか。体も十分に動くし、明日からは学校だな。
外に出ようと扉を開けようとすると、扉が先にスッと開いてーーー
「いだい!」
よれて扉の枠に頭をぶつけた。痛い。
「大丈夫ですか?・・・あれ?なんで二人ともうちにいるの?さぼり?」
そこには同じクラスの女の子の・・・えと?
「アロナさん、こんにちわ。さぼりじゃないよ。先生には伝えてるんだ。」
そう、アロナ・カウントさんが扉の前に立っていた。




