第14話 目が覚めて
『今日は漢字のテストだって、○○○君!』
『嫌だな~。オレはともかく、△△君は当然満点でしょ。』
『100点取ったらお小遣い1割増しだからね。やるしかないよ!』
前世の記憶だ。これを見ているときは体の自由が効かなくて、水の中にいるように感覚になる。
そしてその日の印象に残る場面が現れては消える。
大体は恥ずかしい記憶を見せられて、嫌な気持ちになるんだけど。
・・・でも今回は随分と長いな。いつもだったらもっと早くに終わってるのに。
そろそろ起きよう。寝坊すると学校に遅れちゃうーーー
目が覚めると部屋が暗かった。
あれ?まだ夜だったか。
じゃあもうひと眠りだ。おやすみ。
「スヴェン君。目が覚めたんだね。」
声の方を見ると、誰かがいる。
その人影がろうそくに火を灯し、アレク君だとわかった。
「ごめんよアレク君。起こしちゃった?」
「いいや、大丈夫だよ。スヴェン君が目を覚ますの待っていたんだ。」
「オレが?変なの。」
「元気そうでよかった。今グレジオ先生を呼んでくるから、少し待っていて。」
「先生?!なんで?!」
「君は怪我をしているだよ。覚えてないかい。」
じゃあ、と言ってアレク君は部屋を出て行ってしまった。
そういえば体が痛い気がする。
特に足の当たりがチクチクして、痛痒い感じ。
布団の中を除いてみると足には包帯・・・ではなくて黒い布が巻き付いていた。
なんだこれ、包帯がなくて別の布で覆ったのかな?
そもそも何の怪我をしたのだっけ。
なんだかすっごく痛かった覚えがあるな。
・・・ドタバタと音がするな。誰か走ってくる。
「スヴェン君!」
バタンとドアを開けて先生が入ってきた。
「指の本数わかりますか?腕は上がりますか?触られている感触は?肌に張っている感覚はある?足は動かせますか?」
「えと、2本です。腕は・・・上がりますね。それから、なんだっけ。」
全ての質問に答えると先生はホッとした様子で胸を撫で下ろした。
「簡易的な検査では後遺症などはないようですね。」
「えと、ありがとうございました。」
先生の語尾が伸びてないのは新鮮だな。
いつもはおっとりしてる雰囲気だけど、今はキリっとしている。
「スヴェン、目が覚めたか。」
「レイン様?どうしてこんなところに。」
ああ、思い出した。薬草採取の終わり際に狼襲われて・・・
オレ死んでなかったんだな。
「レイン。事の起こりと顛末を正確に報告しなさい。」
先生からピリッとした空気を感じる。怖い。
「グレジオ。先ほど説明した通りだ。私がスヴェンの依頼に同行し、私がテレポートの準備をしている間にスヴェンが狼に襲われた。」
「”正確に”と言いました。あなたがこの程度の依頼でミスをするなどありえません。」
「事実だ。私は失敗した。責任は全て私にある。」
「そういう!話を!しているわけではない!」
びっくりした!先生どうしたんだ。なんでそんなに怒るの?
レイン様も予想外のことだったならしょうがない、いや全然しょうがなくはないけれど。
オレにとっては。
「グレジオ先生。スヴェン君の体に障るので。」
「・・・ごめんなさい。スヴェン君。ありがとう、アレク君。」
「あの、大丈夫です。ちょっと、その、驚いただけです。」
先生は深呼吸して、レイン様の方を振り返ると
「後で面貸しなさい。私が納得するまで逃げられると思うなよ。」
とんでもない低音でレイン様を脅していた。コエー。
その日の夜は解散して、朝目が覚めるとアレク君がそばに座っていた。
「おはよう、スヴェン君。」
「ぅん。おはよう、アレク君。今日は学校だね。」
「動けるかい?今日僕は学校を休むつもりなんだ。」
「ええ?!ダメだよ。ちゃんと学校行こう!」
そう言ってオレが立ち上がるとアレク君は目を丸くしていた。
「驚いたよ。また歩けるかわからないぐらいの怪我だったろうに。」
そういえば、とんでもない大怪我だったはずなのに。
全然元気だ。むしろ前以上に元気だ。
「なんか。こう、すっごい元気だ!」
「その黒い外套のおかげかな。レイン様曰く伝説級の1点ものらしいね。」
「へー。・・・こんな高そうなの、早く返したいね。」
「いいや。君の物なんだって。元々この町に来た理由もその外套を贈るためだったらしいね。」
「なんで?!ほんとになんで?」
「レイン様は不思議な人だから。理由を聞くのは難しいね。でもほら、実は僕もレイン様からお古の剣を貰ったんだ。」
そう言って取り出した剣は、白い本体に金色の意匠を付けた年季の入った剣だった。
触ってみると何かの骨を削りだしたような感触だ。
あれ・・・これもしかして・・・。
「これってもしかして”聖剣”?」
「スヴェン君、そんなまさか。子供に譲るにはあまりにも貴重すぎるよ。」
「そ、そうだよね。」
いやいや、そんなまさかね。
でもあまりにも挿絵に似てるな。レプリカだったりするのかな。
「そうだね。・・・今日は学校休むって伝えてしまったから。スヴェン君が元気だと僕もやることがないね。」
「そうなんだ。」
「君もだよスヴェン君。そうだね、せっかくだし薬草採取の依頼報告に行かないかい。」
「あれ?でも薬草は落としてきちゃったよ。」
「レイン様が納品と報告を済ませてくれたんだ。元気になったら報酬を受け取るように言われたんだ。」
「そうなんだ。寝てる間に色々やってくれたんだね。」
「どうする?今日はまだ休むかい?」
「いいや。報酬を貰いに行こう。たしか商店のポーション屋が依頼者だったね。」
そういって身支度を始めたときに、ふと違和感に気が付いた。
あれ?外套が掴めない!なんだこれ?もしかして外れない装備?!
そう思うと外套がふっと透明になった。でも感触はある。
引っ張ろうとすると?ダメだ。掴めなくなる。
・・・伝説級の呪いの装備だったかこれ。




