第10話 依頼を受けよう
「ギルドで会うのは初めてですね、アレク。」
「はい、レイン様。今日は見学のためここに。」
アレク君が”様”で呼ぶってことは結構偉い人か。
銀色の槍、革の鎧、高い身長、筋肉質な手足、あと銀髪黒目の男性。
なんだか頭の中に浮かぶ人がいる。
「『無敗の勇者』シルバー。」
「ん?それで君は誰だい。」
やべ、声に出てた?とりあえず、あいさつ・・・。
「スヴェンです。アレク・・・様のクラスメイトです。」
「どうぞよろしく。そういえば今年はアレクの入学式でしたね。」
「はい。おかげ様でーーー」
つもる話が始まってしまった。
レイン様の若い見た目には似合わない威厳・・・。
オレの大好きな英雄譚に出てくる登場人物、『無敗の勇者』シルバーがそのまま出てきたみたいだ。
無敗の勇者は第2章の主人公で、道の勇者とは別の時代の魔王を倒した伝説の人物なんだけど。
実在したとして、100歳は超えているから本物ではないはず。
そうなるとお孫さんだったりしないかな?ひ孫?
「すまない、スヴェン。つい話し込んでしまった。」
「ああ、いえ、大丈夫です。」
「今日は1日を通して良い天気だ。用事が終われば外で遊ぶといい。」
そう言ってレイン様はギルドから出て行ってしまった。
「スヴェン君、じゃあ行こうか。」
「ああ、うん。ギルドに登録だったね。」
ギルドに登録するには、登録料を払うだけ。
あとは受付嬢に名前を伝えれば終わり。
希望すれば住所や年齢、経歴などを伝えるなり記入できる。
冒険者ギルドの登録証はいわゆる身分証明書で、冒険者ランクが高ければどの町でも”良い”旅人として迎えてくれる。
反対に旅人や流れてきた人は、登録書がなければ滞在を許されないことが多い。
・・・とパパに教わった。あと登録の仕事は手伝わされた。
「スヴェン君、記入するところは全部埋めるべきかな。」
「ああ、うん。書類を全部自分で記入できると、選べる依頼が増えるんだ。」
「それはお得だね。じゃ全部埋めようか。」
ギルドの登録には冒険者の識字能力を試す意味もある。
例え腕っぷしが強くなくても、文字が読めたり知識があれば山ほど仕事がある。
当然読み書きが必要な依頼は人手不足になりがちだ。
うちの村は開拓村だから、名前だけの綴りもわからない人が多くて大変だったな。
「使用武器の項目・・・は勝手に埋まっているね。剣と魔法。これは勝手に埋まるのかな?」
「そうだよ。魔法がかかっているから登録証の使用武器の欄は自動で埋まるんだ。」
「魔法か、便利だね。全部の項目がそうじゃないのは、うん。」
「喧嘩の種だし。名前と使用武器さえあればあとは要らないってお父様が言ってた。」
記述した紙を受付嬢がギルドに保管して終わりだ。
そんなこんなでアレク君の登録が終わって、次は依頼を受けることになった。
「そちらの坊やは、登録しないの?」
「えと、はい。もう持ってるので。ツオイス村の息子でスヴェンって言います。」
「あー、なんか覚えてるかも。お父さんにはよく合うし、坊やも付き添いに来たこともあったわね。」
坊やってオレそんなに子供に見えるかな。お姉さんも新人さんに見えるけどな、15とか。
「来た事あります。覚えていてくれたんですね。」
「あ、やっぱりそうよね!記憶には自信あるの、”受付嬢”だしね!」
「んと、依頼の話なんですけど。」
「スヴェン君。この依頼とかはどうかな?」
アレク君が選んだの手紙の代筆だった。確かに頭のいいスヴェン君なら十分にこなせるだろう。
「いいけど、思ったより楽じゃないよ?書くのは良くても話を聞くのが、その。」
「ありがとう、でもやってみたいんだ。話を聞いてみたいしね。」
「あーいいね!私もそれ進めようと思ってたのよ!」
「どうもありがとうございます。それで依頼の受注についてはどうすれば?」
「任せて!登録証を依頼の紙の上に乗せると、ほらここに登録証の跡がついたでしょ?これでこの依頼はあなたが受けましたって証拠になるわ。」
「ありがとうございます。それでは依頼者と連絡をーーー」
アレク君は頭がいいから後は依頼の完了まで何もなく進むだろうな。
そうなるとオレの依頼を選ばないと。
他の依頼かぁ。狼退治は無理。荷物運びは体が痛くなるから嫌。本の音読はいいけど今日は他のがいいな。
あれ?こんなところに依頼書が落ちてる。薬草の採取で桶一杯で銀貨2枚、結構割がいい。
村でも取れる薬草だから達成はできる。だけど町の外は危険だし、パパとママが怒るしやめとこ。
そう思った矢先、突然扉が開いた。
ビクッ体を震わせた瞬間、懐から登録証が滑り落ちてーーー。
「あああ!嘘!そんなつもりじゃ!」
薬草採取の依頼を受注してしまった。
登録証
名前と使用武器、冒険者ランクを示す鉱石が埋め込まれたカード。
カードは魔法が刻まれた鉄製。鉱石の周りは装飾が施されている。
冒険者ランク
白/銅/銀/金
金に近いほどランクが高い。銀と銅ランクが冒険者のほとんど。
金:一流冒険者。全ての町で歓迎される。ほんの一握り。
銀:主力冒険者。だいたいの町で歓迎される。職業冒険者と名乗れるのはここから。
銅:町の冒険者。副業で冒険者している人レベル。町の身分証としては十分。
白:素人冒険者。誰でもなれる。身分証としては最低限。
装飾
ランクとは別に冒険者の系統が鉱石の周りの装飾でわかる。
赤の装飾:討伐依頼の達成が多め。
青の装飾:知識を必要とする依頼の達成が多め。
緑の装飾:町の仕事や採取の依頼の達成が多め。
複数種類の依頼を十分にこなすと色が混ざる。
黒の装飾は冒険者として尊敬される。




