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異世界猫

ジョブお針子だからと婚約破棄された現場を猫から見た感じの話

作者: 山田 勝

「婚約破棄を宣言する!」

「マリア様、可哀想~」


「ミャン、ミャーミャー」


「そ、そんな。理由をお聞かせ下さい!」


 ゴロン!

「ミャアアーーーーーーーン」


「って、言うか、お前、お針子だろ?父上がどうしてもというから仕方なく婚約者にしてやったのだ」

「マリア様、プゥ、ジョブお針子で可哀想~、私は水の精霊の加護持ちよ。どちらがパルロ家に相応しいか・・・考えなくてもわかりますよね」


「ミャー、ミャー!」



「でも、私はパルロ家の服をあつらえて来ました・・」

「だから?」


「ウウウウ、グスン、グスン、ウエン」

「あ、そういうの良いから、帰ってくれないかな」


「ミヤーン」


「うっとうしい猫ね。水をかけてあげますわ」


「お止め下さい。ニケちゃん」


「ウォーターボール!」


 ビシャ!


 シュン!


「そこだよ。猫を庇って自分だけ濡れる。猫はかわして逃げたよ。それと同じだ。

 パルロ家は君がいなくても影響はないよ」




 ☆☆☆森


 ・・・ええ、私は放浪の猫、ニケというケチな家猫でして、私のご贔屓さんが、番から三行半を突きつけられたようでして、私の必殺、『ゴロン!ニャーニャー』しても場は治まりませんでした。


「大きな猫はわからねえ。猫は女が誘ったら男は絶対だ。拒否権はない」


「で、猫王に相談しに来た次第でして」


「何で、俺様が家猫ごときの言うことを聞かなければならないんだ」


「知っていますよ。ブラッシングをされにこっそりマヤって娘さんを訪ねて、ニャン!ニャン!ママーとしているのを」


「チィ、ママ、いや、あの大きな猫は猟師の娘さんだ。子猫の時に保護された事がある。顔見知りだ」


「その知り合いが私のご贔屓さんでして」


「分かったぜ。俺は何をすればいい」


「森のネズミを追い出して下さいな」





 ・・・・・・・・



 ☆お針子ギルド


「グスン、グスン・・」



「マリアちゃん。婚約破棄されたんだって」

「可哀想に・・何でもパルロ家の先代さんに腕を見込まれて是非にって、息子と婚約を結ばれたのにね」


「どーする。うちのエース、マリアちゃんをこんな扱いするなんて」

「でも、パルロ家の仕事を請け負わないと生活出来ない」


「・・グスン、皆様、大丈夫ですわ。仕事を受けて下さい。私は別に商会を立ち上げます。服を繕う仕事から始めようと思いますわ」


「マリアちゃん」



「こんちわー、マリアさんいる」

「マヤさん」


「話し聞いたよ!鳥を捕まえたから、これ、マリアさんに!」

「まあ、マヤさん。有難う」

「良いって、いつも服を繕ってくれているからお礼さ」




「ニャン、ニャー!」


「あ、ニケちゃんも来たわ。もう、お膝に乗りたいのね」


「ミャン!ニャン」


「フフフフフ、あの現場で慰めてくれたのね」


「ミャ~ン?」


「鳥肉食べるでしょう。少し、待っていてね」


「ミャン!」



 ・・・・・・・・



 それから、街に異変が起きた。

 ネズミが多量発生をしたのだ。


 この街では飼い猫以外は猫ギルドで管理されていた。



「大変だよ。山猫が活発化して、ネズミが森から逃げているよ」

「マヤさん。報告有難う」




 ☆☆☆猫ギルド


「さあ、お前達。稼ぎ時だよ!」


「「「「ミャアアアアーーーーーー」」」



 異変は一月で終わったかに見えた。


 しかし。



「「「「チュー!チュー!チュー!」」」(あの家は安全だ)


 猫が狩りに入らない家が一軒だけあった。

 パルロ家である。



「どうした!猫たちが来ない!」

「ヒィ、ネズミが生地をかじっている!」


「水の精霊よ!私に力をお貸し下さい!ウォーターボール!」



 ビシャ!


「「「「チューチュー!」」」(ワーイ、水だ)



「はあ、はあ、こうなったら、ウォーターカッター!」


 バリ!

「チュー!」


「やめろ。生地がネズミの血で台無しになる!」

「じゃあ、どうすればいいのよ!」



「あの、服を納めにきましたが、この屋敷において大丈夫ですかね?」

「はあ、たったこれだけ?」

「いや、これが普通ですよ。今までがおかしかったのよ。マリアさんは・・」

「マリアは禁句だ!服はお前らの家で保管しておけ!」


「じゃあ、倉庫代を・・」

「金の亡者め!仕事やらないぞ!寝ずに働いて納めろ!でないと支払いが出来なくなるんだよ!」

「無茶な」




 ・・・・・・




 ☆☆☆一月後



「おい、猫ギルド!うちに猫が狩りに来ない!」


「はい、そりゃ、猫ですから基本自由でして、何か猫が入らない障害があるのではないですか?」


「あ、空き瓶に水をいれて四方に置いた!」

「それよ。撤去するわ!」




 ・・・・・・



「空き瓶は撤去したのに何故来ない。おい、お前ら、こっちに来い!」


「ニ゛ァァアアア」(こっち来るな!)

「シャアアアアーーー」(やるんか?!)




 ・・・フフフフ、猫仲間に伝えておいた。あの家には入るなとね。


 さて、仕事をしますか。紳士がいるね。親子ってな感じか。



「パルロ殿、こんな街中で猫を構うのはいいから、今月の支払いはどうなっているのかね?それに、作業が遅くなった。並のお針子ギルドと同じだ」


「それが、その、猫が仕事をしないので」

「意味分からない。猫の手で服が作れるとは思えないがな・・・おい、コラ、猫!」


 シュン!


 偉そうな方の紳士が手に持つ書類をくわえて逃げた。お魚くわえたドラ猫じゃなくて、書類をくわえた美猫だい!


「待て、それは大事な書類だ!」

「父上、追いかけましょう」


 行き先は・・・


 マリア商会だ。

 お、マヤと猫王も来ている。



「マリアさん。服の繕いお願い。森でトラ坊と遊んでいたら、服が破れたわ」


 シュン

「ミャアアン」(ごめんなさい)


「いいわ。すぐに終わるわ。それにしても大きな猫ね。毛色もマダラ、珍しいわね」

「山猫さ。子猫の時に親父が保護した子で、もう、甘えん坊でね」



「ニャン!ニャン!」


「ニケちゃん。書類をくわえてどうしたの」


「待て!そこのお嬢さん。その書類は私のものだ」


「まあ、ニケちゃんのイタズラね」


「はあ、はあ、有難う。少し、休ませてくれ」

「父上、ここは服屋では、お嬢さんの仕事を拝見させて下さい」

「まあ、たいしたことないのよ」



 ・・・・・



「はい、終わりました」

「うわ。ピッタリ。有難う。お代は?」

「こらくらいなら、いらないわ」

「そう言わずに、一手間大銅貨一枚ぐらいにしなきゃ、商売にしなよ」



「速い。引っ掻き傷のような服の裂け目が寸分違わずに直った」

「お嬢さん。もしかして、お針子のジョブ持ちか?」


「ええ、そうです。と言っても三人力ですが」


「違う。ベテランの三人力だ・・貴重だ。是非、私の所から生地を仕入れて商売をしないか?私はベルガー商会のフランツだ」


「え、あの大きな商会?でも、パルロ家は?」

「あそこはダメだ。せっかくの生地を台無しにした。そうか、君が独立したから、作業が並になったのか。君がいなければパルロ商会は並の下ぐらいの商会だった」

「まあ、大げさですわ」



「そうだ。息子だ。紹介する。ロバーツだ」



「ロバーツです」

「君の腕はいいが、商会を開くには専門の商会員が必要だ。しばらく、ロバーツに事務仕事をやらせる。もちろん、住居は別だ。商業を学んだが、どうも、パートナーに恵まれなくてね。どうかね?」


「ヒャア」

「素敵なお嬢さん。是非、君を商会長として輝くお手伝いをさせて下さい」


「こら、ロバーツ、いきなりご婦人の手を握るな」

「いえ、いいのです」(ポッ)


 フフフフフ、祝福のゴロン!ニャーニャーやろうかね。



 ゴロン!

「ミャー!ミャー!」



「「「・・・・・・」」」


「猫殿に導かれたか・・」

「ええ、この子は不思議な力があるみたいですね」

「自分の可愛さを理解して最大限に活用している。見習わねば」





 その後、私はマリア商会専属のネズミ退治担当に採用された。



 それから。


 パルロ家は空家になって、猫たちの集会場に使われている。

 マリアはお針子ギルドのギルマスにも就任して忙しくてあまり私に構わなくなった。


 まあ、いいけど、それに私も忙しい。ほら。


「ニィケ~ちゃん」

「ミャン、ミャン!」(はいはい、オネンネしようね)


「まあ、ニケったら」

「まるで姉妹のようだな」


 妹分が出来た。マリアの新しい番ロバーツとの子、ターニャちゃんだ。

『ニャ』が入っているじゃない?



 この子はお昼寝で急がしくて、猫の手も借りたいようだ。





最後までお読み頂き有難うございました。

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