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最強で最高な二人〜中途霊媒師コウとユキ〜  作者: 麻木香豆
第十四章 延長戦② 追いかけてはいけない
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第六十話

「んっ……。あっ……由貴くん!」

渚は体が宙に浮いたのには気づいたのだが一瞬記憶がなく、また先日みたいに怪我をするかと思ったら柔らかい地面に落ちた……と思ったらガタイのいい由貴がクッションがわりになっていた。


「大丈夫ですか、渚さん」

「あなたこそ……」

「僕は受身をしたのでこれくらいへっちゃらですよ」

と言うがなかなか起き上がれない由貴。渚がなんとか起こすが痛みが強い。


「俺も起こしてくれ……」

2人の後ろではコウが倒れていた。彼も拍子でこけてらしい。


「コウ、どうだったか? 綿」

「何の念も感じない……唱えて燃えなかったから幽霊でもお化けでもない、そして精霊でも人魂でもない。なんなんだ、あれは……」

「コウもお手上げか……て、何か音が鳴ってる」

コウのポケットからだった。


「あ、宮野警部殿から……はい、もしもし」

『すごい展開になったぞ!』

「はい?」

かなり興奮気味の電話越しの宮野。

『……白い綿、正体わかったぞ。今から喫茶店へ行く。いつも通りよろしく』

「ああ」


コウはふぅ、とスマホをしまった。ふと由貴達を見ると由貴を介抱する渚。

「ありがとう、由貴君」

「渚さんが無事で何よりです」

2人とも見つめ愛はにかんでいた様子を見たコウはやれやれという表情。そして坂の上から数人ほど生徒達が下校して来ていた。その生徒達はラングヘアーの茶髪であった。

白い綿は出てこなかった。



喫茶店に戻るともう閉店しているが奥の席に背を向けた席に座っている男の後ろ姿があった。宮野警部だ。

コウと由貴はその後ろに座る。宮野警部とは背を合わせる形だ。


「毎回言うかただの1人の客の独り言と思ってくれ」

「大丈夫っすよ、ほかの客もいないし」

「念の為だ。あんたらがよこしたキーワードでその事件の記録を見たら不正な箇所が」

「ほぉ」

「監査カメラの記録の一部が削除されていたこと。女性は当時坂を登っていたがその様子があってその数秒不自然に消されてすぐ事故が起きて五分後の映像になっていた」

「……その5分の間になにが……」

「当時の担当の刑事に当たったら吐いたよ」

カラン、と宮野警部はアイスコーヒーの氷を鳴らした。


「上から言われてその五分を消したと」

「あら、素直に吐いたのですね」

「まぁ……不正は許せませんからその刑事の他の弱みもちらつかせて」

「宮野警部、さすがです」

宮野警部は鼻で笑った。

そしてこう話した。


「記録は残ってないが彼の記憶ではその五分間の映像には……女性が飛び出たのは自分からではなくて……坂から降りてきたおしゃべりに夢中な高校生の集団にぶつかってバランスを崩して車道に出たものであった」



「高校生には故意は無いがそれをきっかけに事故が起きてしまったわけで。驚いて逃げて行く姿もあったそうだ。でも不正をした刑事の記憶によるもの、残念だが誰なのかわからない……」

「うわ……ある意味轢き逃げってか上から消させたって……」


「その刑事が言うには上から、とのことで……多分ぶつかった女子高校生の身内に警察に近いものがいたかもしれない。そしてこの事件の担当する上層部の名前も抜けていた」

「これは相当ひどい」

「そして刑事が言うにはもう一つ……」

コウは言う前からわかっていた。


「着ぐるみ窃盗事件は捏造だ」

「やはり……有名な作家がデザインした着ぐるみの盗難をでっち上げてそちらの記事を大きくした。女性が死んだ記事は小さくなった」

「酷い」

由貴は絶句した。


「……すまんがこれ以上は」

「いえ、結構です。ありがとうございます」

宮野警部は立ち上がった。


「あと一つ、白い綿……俺はそんなの信じないけども。被害者の死亡解剖の記録は残っててな……右手に何か強く握られていたらしく開いたらぬいぐるみの腕か足の部分が握られていた」

「ぬいぐるみ……の綿……てことか」

「市販されているぬいぐるみのものだと遺族や女性の友人達は特定できたが……大量生産されているものであった」

「てか警察じゃなくて遺族が、か」

「でも被害者の女子大生は日頃から心穏やかで争いの嫌いな人で……弁護士の夢を目指して前途洋々、周りからも慕われていた。これ以上残ったものがことをあらだてて足掻いていては天国にいる彼女が可哀想だと遺族達は身を引いたそうだ」

「……なんてことを!」

「警察もそれ以上動けないと判断した。いやもう動くなと。これで以上だ」


と宮野警部は喫茶店を去った。



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