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最強で最高な二人〜中途霊媒師コウとユキ〜  作者: 麻木香豆
第十三章 延長戦①シンクロカップル
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第五十五話


「にしてもびっくりだ」

 由貴は動画を編集している。しかしアクティブな登山が体に来たのか全身湿布だらけである。部屋もツンとした湿布の匂いが漂う。


「あのまま除霊してたら亜美さんは死んでしまうところだった」

 とバスローブを着たコウが風呂場から出てきた。毎晩塩風呂に入っているが流石に今日は疲れがとれるらしい炭酸の素を入れた風呂に入った。その匂いも相まってなんとも言えない匂いが部屋の中を漂う。


「生まれ変わりでなくて乗り移りかぁ。髪の毛だったら切られたらおしまいだし……皮膚とか、目玉とか」

「目玉に乗り移るケースはなんかで聞いたことあるけどさーそれの筋肉なのか……」

「いやー、筋肉に乗り移った藤澤さんは自分の声を聞いているのだろうかって言われた時は……『筋肉に声かけてみてください』って言おうとしたけど……さすがにねぇ」

すると由貴か腕を捲り

「おい、この筋肉! 筋肉痛いつまでなんだいっ!」

と筋肉に話しかける。コウはそれみて大笑いする。

「そう、それそれ! あそこでは言えなかったけど!」

「意識がないからなぁー、聞こえないだろうけど意思疎通……どうするんだろうなぁー」

 と今までにないことで盛り上がった。


「それよりも由貴、湿布貼ってくれー」

 とおもむろにバスローブを脱ぐコウ。すっぽんぽんである。由貴は驚いた。


「パンツくらい履け」

「炭酸風呂めっちゃ体暑くなるなぁーあれでも疲れ取れん! ふくらはぎパンパンだから早く!」

 うつ伏せになるコウにハイハイと由貴は湿布を貼る。


「ついでに腰も揉んで」

「ハイハイ……てやるか! にしてもそのだらしない体なんとかしろよ」

 とコウの体を見る由貴は笑った。


「除霊師もいつどこで何あるか分からないから筋トレ必要だなぁ。やるか、明日から。桐生さんからジム紹介してもらったら安く済むかもしれんぞ」

「がめついな。てか明日からか、お前の明日からははるか向こう何年先もないことだな……」

 と由貴はいいつつも自分の体もダルダルでお腹も出ている。

 そのお腹をコウにつままれた。


「お前も言えないじゃん」

「るせー! そういう家系だ」

 たしかに、と幼馴染同士だから由貴の家族のことがすぐ思い浮かんで納得するコウ。


「残念だがあのお美しい亜美さんには不釣り合いだね」

由貴はムッとした。

「筋トレ好き元彼と、山岳救助隊のマッチョだもんな……婚約してるのなら諦めがつく」

 どうやら由貴は亜美に一目惚れしていたようだ。だが亜美は桐生にぞっこんだし、結婚もすることだし無理。ついでに桐生からも目をつけられなかったようでもある。


「にしても筋肉に乗り移って今の彼氏と触れ合うって心中複雑だろーな」

「まぁ、知ったこっちゃない」

「キスする時もまだしも、ねぇ」

2人は見つめあった。筋肉はいろんなことに使われる。体全身。


「……」


2人はもう、深く考えないことにした。


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