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最強で最高な二人〜中途霊媒師コウとユキ〜  作者: 麻木香豆
第三章 焼き鳥屋台
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第十八話

 それから数日経った夜。


 焼き鳥屋台の店主は今日も屋台を開いてる。

「父がここの道で亡くなったんですね、ようやく見つかりました」

 と誰かに声をかける。


「数週間かかったな。ここは道がたくさんあってお父さんの幽霊を探すのは大変でしたね」


 焼き鳥屋台に座っていたもう1人の客は黒い大きなコートを脱いでその下には上下黒スーツを着てブラックグローブをはめていている。そしてサングラスをクイっと上げた。そう、コウである。


「父にも十年越しにようやく美味しいって言葉をもらえて良かったです」

「そうだな、俺も横で聞いていたが、おいしい、と言ってたな」


 店主は十年前に自分の誕生日の夜に父親が行方不明になっていた。そして翌日、遠くの川に遺体で見つかった。

 なかなか捜査も進まず、犯人も捕まらず今まで過ごしていた。


 大人になって自分で生計を立てるために得意な料理を活かして焼き鳥屋台を出すことになったのだが犯人探しと父親の最後の姿を知りたい、そして父親に自分の焼き鳥が美味しいって言って欲しいと思っていた頃に、ネットでふと目に止まった、霊媒師コウという怪しい男の存在。


 いろんな怪奇現象を独自の視点で暴いたり、画面ではみえはしないが幽霊と対話して除霊するという動画を何点かネットに載せていたのを見て最初は半信半疑であったが、未解決事件を解決するというものを見て、もしかして……と気になって連絡を取ったのがはじまりであった。


 依頼を受けたコウは早速、店主の父親の帰り道であろう通りを一箇所ずつ探し出して屋台を出店していたのであった。


 気が遠くなるものであったがようやく父親の霊と遭遇した。

 幽霊になった父親は息子の焼き鳥をむしゃむしゃ食べてくれたのだ。


 ちなみに父親を轢いた男は代議士の息子、自動車整備工の友人もいた、柔道経験者もいた。

 それをらをコウは知り合いの刑事に情報を渡し、先日当時の代議士の息子で現在の市長と、自動車修理店の店長と警察官の3人が捕まった。


「本当はあの時に成仏させたかったけど、ようやく犯人捕まったってことで報告するためにこの世に残しておいた」

 コウはそういうと店主は頭を下げた。


「すいません、僕のわがままで」

 店主はそう言うがコウは首を横に振る。

「……まぁ霊界の方では早くしないのかって言われてるがおおめに見てやった……もうそろそろかなぁ」


 コウの前にはたくさんの焼き鳥。コウは焼き鳥が大好物なのだ。

 ハフハフ言いながら食べ尽くす。ここ数日張り込んでいる間はこの焼き鳥が晩御飯であり、普通なら飽きるだろうがそうでも無かったようだ。


「ありがとうございます。どうしても父と最後に一緒に酒を飲みたくて」

 店主である息子も酒を飲める歳になった。子供の頃に母親を亡くして親戚頼らずに仕事をバリバリして男手一つで自分を育ててくれた父親を彼は尊敬した。

 大きくなったらビールを一緒に飲みたいなと子供の頃言われていたが父親の突然の死で叶わなかった。


 事件解決のお祝いもだが、親子男2人の約束を……。コウはその場を設けた。


 遠くから自転車の音がする。今日は20歳になった息子の誕生日、少し日が暮れる前に現れた父親、あの頃も息子の誕生日のために早く帰えろうとしていた。


『おう、焼き鳥食べにきたぞ。あとだし巻き卵もな』

 店主は目を潤ませた。


「はい、ビールも一緒に飲みましょう」

 店主と父親がビールを一緒に飲んでお祝いしている横目でコウは2人にバレないように泣きながら焼き鳥を食べていた。


「う、う、う、うメェええええええ」

 クールを売りにしているし、いちいち情を持ってはいけないとはわかってはいるが無理だった。


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