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最強で最高な二人〜中途霊媒師コウとユキ〜  作者: 麻木香豆
第二章 曰く付き物件
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第15話

「……あのエレベーターを取り替えた業者によると、他の霊媒師を呼んでお経をあげてもらってから取り替え作業をしたと」

「ふええええええ」


 管理人は変な声ばかり発する。それにイライラするコウ。

「……奥様のことをもっと調べたのですがどうやら彼女はあなたの不倫に相当怒りを募らせていて呪いのサイトに登録されていたと」


「呼び出されていた時、部屋の中に何点もパワーストーンやお札、お守りがたくさんあった……昔からあいつはそういうのを信じていて、ムカつくママ友やわしのムカつく上司、近所の人を呪いと称してパワーストーンやサイトを利用して消し去っておった。だから今回は、わしを呪ってたんだ……」


 ようやくまともに話し出した管理人さん。そうやって喋る時はなにか裏があったり言い訳がましいこともあったりする。

 コウはふぅむ、とうなずく。たしかに管理人の妻は呪いのサイトの常連。そのサイトの運営者である呪術師とコンタクトを取り、管理人の妻の依頼メールを開いた。


「この呪術師さんはインチキですな。みてわかる。こういうのいるからうちら霊媒師の営業妨害、名誉毀損になるんだよ。だから今までの呪いも単なる偶然です。長年金蔓になっていた奥様も不憫ですがねぇ。あとインチキでも呪いをかけた方も如何なる場合でも自分に跳ね返ってしまう」

 管理人は頭を抱える。


「節子はわしを恨んでおったのか。別居してから毎日のように頭痛やめまいが起こってな」

「だからインチキ呪術師ですしね。実のところ……奥様、節子さんが恨んでいたのは不倫してた女性の方です」

「ほえ?」


 コウは画面を見せた。管理人さんは凝視する。


『夫をたぶらかすA子を呪ってほしい。夫は婿養子で気弱だが優しい人。きっとそそのかされてしまったんでしょう。A子が憎い!』


「せ、節子……!!!」

「怒りの感情はあったが、あなたのことは呪ってないんですよ」

「……そんな!!!」

「節子さんはエレベーターで帰るあなたたちをまた説得しに行ったところをあなたが隠し持っていたナイフで節子さんを刺して、A子さんも刺して自分も複数箇所を自分で刺して節子さんにナイフを握らせた……」


 ドン!


 とコウが机を叩く。


「なぜそれをっ……エレベーターもカメラはなかった、知ってるのはわしだけじゃ!」

「いえ、知ってるのはあなただけじゃない。節子さんとA子さんです」

「はい?」

「あなたの横に座ってるお二人に全部聞かせてもらいました」


 実は図書館から移動したのちに、コウと由貴はエレベーターで2階へ向かった。そこが事件現場であった。その場に節子とA子がが幽霊の状態でいたのだ。


「普段俺は二階にはエレベーターで行かないから今まで会わなかっただけだった……」


 管理人さんは失神して泡を吹いて倒れた。そして横にいた節子とA子は一緒に消えた。途中、節子の手がA子の首を絞めていたような気もしたが。コウと由貴は呆れ返った。




 1時間後、管理人を乗せた救急車がアパートから去った。数人ほどアパートから覗いているものがいたが、彼らも今後アパートの取り壊しで住む場所を無くして彷徨うのかと思うと由貴とコウは不憫だと思った。


 もともと管理人の妻、節子の所有となっていたアパート。世間的には妻に刺された管理人さんは生き延びて節子の所有していたアパートを管理する側として戻ってきたものの、その事件のせいで何軒か退去者がいた。


 しかし元々からの住人であるあのルームロンダリングの部屋の家族をはじめ数軒ほどまだ住み続けていた。


 節子の資産を切り崩してエレベーターを新しくしたりルームロンダリングをして再起を図ろうとしたがやはり経済面的に厳しかったようだ。


 取り壊せば事件は風化される……だがそんな浅はかな管理人の計画は由貴とコウによって白紙になる。

 だがのちの話、取り壊されてからある程度お金はのこって管理人さんは退院後、田舎に帰っていったそうだ。


「うーむ……」

「どうしたんだ。由貴」

「これの動画このまま公開したら節子さんの名誉回復になるだろうけども管理人さん、警察に連れていかれるのかな」

 由貴は気にしている。

「5年前の事件だからなぁ。でも2人の家族はとうに亡くなってるしお子さんもいない、特に友人もいなかったからなぁ……節子さんの名誉回復で喜ぶのは生きてる人の中にはいないだろ」

 その答えにコウは

「このまま俺らが公開したら管理人さんの社会的死になるだろう。だけどあの事件の目撃者はいない。だから管理人さんが拒否したらそれで終わりだが……まぁ事件、出てくる人たちの名前は特定できないように編集して配信しようか」

「……コウ、優しいな」

「そうか?」

「節子さんを騙してたあの霊媒師は許さんけどな」

 コウが由貴を見た。


「……俺らもみえない人たちにとってそういう人間の1人や。そりゃいい営業妨害やけどもさ、節子さんにとってはその霊媒師は心の拠り所だったかもしれんな」

「なるほどねー」


 アパートはボロいがその周りはとても綺麗で花もたくさん咲いていた。2人は幽霊の節子から聞いた。


 曰く付きのアパートになってしまって管理人さんも負債を抱えて大変だった、でもせめて周りだけは掃除をして綺麗な花を咲かせようと毎日管理人さんは手入れをしていた……反省してるのよ、だから多めに見てやってくださいって。


「優しいのは節子さんだ」

「ほぼそうだな」

 そのあと由貴が話を変え

「本当のコウは鬼畜や」

 と言うと

「おう、じゃあ家はもう別で探せ」

 コウは笑う。

「ほらぁー」

「うそだって。母ちゃんが物件情報送ってくれたから探そうよ」

「ほら母ちゃん頼み、マザコンコウちゃん!」

「おい、いい加減にしろー!」

「こわーい!!!」


 二人はまた子供のように無邪気に走り回った。


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