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最強で最高な二人〜中途霊媒師コウとユキ〜  作者: 麻木香豆
第二章 曰く付き物件
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第13話

 その夜。


「ああ、由貴が裏があるとか言い出すから気になって寝れんっ!」

「羊数えようか?」

「うーん、羊が……って、やめる。てかお前が数え始めたらどっかの牧場から羊が来るからやめてくれ」

「たしかに。やめようか……キリがない。数えるの無理」

「面倒!」


 コウのクイーンベッドはエアーベッド。そこに由貴と一緒に寝るが体格が由貴の方が大きく体重があり、横で寝ているといつもとは違う寝心地でもある。

「なぜクイーンベッドなんだ?」

「そこ、気になるのか?」


由貴はここ数年の互いの生活をわかり合っていない。ベッドのサイズに気になってしまった。


「一応一緒に住んでた人はいた」

「そういう話、好き」

「ニヤニヤするな」

「コウは小さいけどイケメンだし」

「小さいは余計」


由貴は恋バナにウキウキする。もちろん自分自身に恋バナなんぞは良いものはない。片思い、振られた、振られる以前の問題ならいくつか。


「でも長く続かなかった……」

「なんで?」

「抱いてる後ろにその人の守護霊や怨念や生き霊がみえてダメだった」

「……そんなことがあったのか」


由貴は考えるとゾッとした。自分は人の後ろに何かいる、みえるは経験してたが抱いてる時に、というシチュエーションがないため想像できない。

「意識的にみえないようにもできるし、除霊すればよかったんじゃ」

「どうも性欲が高まるとストッパー解放されてコントロールしていた雑魚や低層霊がみえてしまうんだ……ほら、自分でやってる時とかどうだ?」


と由貴に同意を求めるコウだが自分のことになるとサァ? と言い、なおかつそうなのか? みたいな返事をするためコウは話さなければ良かったという顔だ。


「それに全裸で除霊も滑稽だ。萎えて終わって恋も終わりだ」

コウは鼻で笑った。


「てかさ、まさかだけど率直に僕が横にいるから寝られないとか」

由貴がそういうとコウは頷いた。


「……それもある」

「はっきりいえばいいのに」

「言うほどではない」

「てか寝るのは子供の頃以来だね」

「そうだなぁ……でも布団一枚だと今めっちゃ嫌」

「すまんなぁ」

「いいよ、あっちに帰ったら布団買えばいい」

「僕もこれ買う」

「いいぞ、これ。もともとキャンプ用品メーカーが作ってな。メインはテントとかグリルとかそっちがメインだが寝具としては異例の大ヒット。昨今のソロキャンプブームでキャンパーがこのベッドの採用、コンパクトに収納できて電動手動で好みの硬さに膨らませてお手入れも簡単、だったら家でも使えるって口コミで広がってな、特に一人暮らしの若者、単身赴任の多い中高年……って、寝てる!」


 コウが力説している間に由貴は寝てしまったようだ。

 布団がずれたことにも気づかずに寝てしまったようでコウはやれやれという顔で布団をかけてやる。


「別に新しく買わなくてもいいんだけどな。おやすみ……由貴」


 由貴の寝顔を見ると昔の頃の寝顔を思い出す。子供の頃よく遊んで昼寝して。幼馴染との過去に浸ってコウは眠りにつく……。







 翌朝。


 ベッドからコウは落ち、由貴がベッドのど真ん中にドーンといびきをかいて寝ていた。


「やっぱり撤回……絶対ベッドは別々にする!」

 そう寝起きにコウがつぶやくと

「ん……なんだ。もう朝か」


 と由貴。


「そうだよ、もう朝だよ。よかったな! 熟睡できて」

「おう、めっちゃいいベッドー。ふぁああっ」

「やるわ、それ。引っ越したら」

「まぁ2人で寝りゃいいじゃん。スペースとるしな、寝具ってさ」


 という由貴にハッとしてしまうコウ。自分も2人で寝ればいいとは思っていたがやはり今日のような寝相だと無理だとは思ったのであった。


 そしてコウが朝食を作る。ギャルの子が作った作り置きから綺麗に並べる。彼女は出てくるのは特定の時間のみだ。


「あ、美味しそう」

「だろー」

「あの子の作ったやつを盛り付けしたりアレンジしたりして……でもちゃんと作れるんなら自分で作ればいいのに」

「とにかく1人の時は時間なかったんだよ……それにあっちからやるやるーって。ならなんならやってねーって頼んだんだよ」

あっちから、というのはギャルのことである。

「ふぅん」


 スクランブルエッグとトーストとベーコンの朝食。


「いただきます」

「いただきます」



 朝食中にやることリストを書き出した2人。


「あ、帰ったら天狗様に会いにいかなかんよな……もう」

二人の命を救い、そして能力を宿した天狗様。会うと言っても山まで行って祠に手を合わせるだけなのだが。

あの夢に出てきた……と由貴。


「忘れちゃいけないやつだなー」

「俺は帰るたびに行ってるから」

「よく帰ってたのか」

「一応定期券持ってるから……渡された」

「なにっ、やっぱりあの人妻所長とできとるんだろ!」


 由貴はコウに詰め寄る。あの、と言っても見たことはない。コウは苦笑いする。


「違う、お母さんが買ってくれたやつ」

「またお母さんか! お前のお母さんは甘い! 板チョコよりも甘い! マザコン!」


 コウの母親はバツイチで二人の子供を一人で育て上げ、少し手に入ったお金をもとに投資を始め、運良く大儲けして居酒屋も経営しても儲けが出るほど稼いで客の一人がたまたま資産家でその男と結婚してバリバリ稼いでいるのだ。


 その前からコウの母親はとても甘く可愛がる。なんでも買い与えてしまう。そんな様子を由貴は見ていた。


 ルームロンダリングはする必要のないはずなのだが、コウは住む家や生活費は自分で稼いで手に入れるという彼のプライドでその辺りの援助はしてもらってないというが……。


「まぁいいか……て、所長はその定期券あることは知っとるのか」

「知らない。俺の分は浮いたからそれで好きな弁当食べよや」

「おうっ……て、それ所長さんにバレたら不正になるんじゃ」

「……な、い、しょ!」


 明らかに一瞬コウはニヤッと笑った。昔からこういうところが彼の世渡り上手なところだな、自分にはない……と由貴は少し羨ましくなるようだ。


「あとここの管理人さんにもお世話になったからなー」

「どっちかといえばコウは依頼された方だけども……」


 なんか由貴はんんんーっと顔をする。


「そういう細かい気配りすることが、のちにいいことを運ぶんだ」

「マメだな、ほんとそこ尊敬するわ」

「どうもどうもー」

「だめだ、それ以上言うと調子乗るからもうやめとく」

「そこだよ、由貴のだめなとこは」


 2人は部屋を出てエレベーターに乗ろうとする。が、エレベーターが来ても由貴は乗ろうとしない。


「どしたんだ、乗らんのか」

「コウ、どうしてこのエレベーターが新しくなったか聞いたか」

「確かに新しいけどこれは依頼されてないし、俺も何かしら感じはしたが」


 由貴はコウの腕を引っ張って外に出す。


「ちょ、なんだよー」

「このままここのアパート解体されるんだろ。これ解決しないまま解体、てことだろ?」

「……たしかに、でも」

「珍しいな、こんな美味しいネタを動画に上げようとしないコウ」


 由貴はバッグからカメラを取り出した。そしてエレベーターを映し出す。


「……それは……まぁやるっきゃなだろ」

「だな」

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