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「「中身が入れ替わったので人生つまらないと言った事、前言撤回致しますわ!」」  作者: 桜庵
~元に戻ったカノンの生活編 Chapter2~
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~カノンと占い師~

カノンとライラックの婚約の手続きから二ヶ月後の五月。

フローライト家の書庫。


ライラックが手続きした婚約に関する書類はあの後すぐに出来上がり、無事にフローライト家の署名ももらえて婚約は正式に結ばれた。

婚約の事を知っているのはまだ王家と各貴族だけだ。

生活に関してはカノンの希望通り王宮で一緒に暮らしてはいないが、週に二日はライラックがフローライト家に泊まりに来ていた。

姉のサントリナもいまだにフローライト家に滞在しており、カノンと政策に関する仕事に努めていた。


「お兄様とお姉様のおかげでわたくしが手掛けていた政策やこの間の災害の復興が早く進められて助かりました。」

「お兄様…あぁ見えて頭の回転が早く仕事も卒なくこなすものね。最近は縁談も多いみたいで余計に忙しそうだけど。」

「妹溺愛も落ち着いてますが…嵐の前の静けさなのでは…。」

「それは……ありえるわね。」


カノンと姉は書類に目を通しながら他愛のない会話をしていた。


「そうですわ!わたくしこの後、アイリスさんにお茶会にご招待されていましたの。準備しなくては。」

「あら、それなら後は私に任せて、カノンは準備に励んでちょうだい。気をつけて行ってくるのよ。」

「後の事、よろしくお願いしますわ。行って参ります。」


カノンは早々に出かける準備を済ませ、侍女のリリーと護衛を付けて招待を受けたカーネリアン家を目指した。



カノン一行が無事にカーネリアン家に着き、カノンとリリーはカーネリアン家の執事にお茶会の会場である応接室に案内された。


「カノン様、本日はお忙しい中来てくださりありがとうございます。」

「こちらこそご招待ありがとうございます。あの…アイリスさん…先日はご迷惑をお掛けしました…。申し訳ありません。」

「そんな、カノン様は何も悪くありませんわ。私こそ、何もお役に立てず申し訳ありません。街の人達を想うカノン様…とてもかっこよかったですわ。殿下もきっと、そういうカノン様をお好きになったのね。」


災害の時の自分達の行動を謝罪した二人。

アイリスは優しい笑みを浮かべ自分の気持ちを伝え、ライラックの話を持ち出した。カノンはアイリスの言葉に恥ずかしくなり顔を赤くした。

アイリスの案内で二人は応接室のソファに腰かけた。


「カノン様、殿下との婚約はどうですか?」

「どぅ…と言われましても…うーん…前と変わらないと言いますか…。前よりも優しい…いえ、意地悪ですわ。」


「ふふっ…そのご様子…とても大切にされているのですね。お幸せそうでなによりです。あ、そうですわ!今、カーネリアン家で治めている街の女性達の間で話題になっている事がありますの!なんでも、星占いで恋の相談が出来て、相性が見れたりあとは不思議な力を使う……占い師という方がいると侍女達がお話していましたの。」

「それは…とても興味深いですわね…。」


アイリスはとても楽しそうに会話をしており、カノンも彼女の話に興味津々に耳を傾ける。

二人は時間が来るまで最近の流行やお菓子の話、恋の話に花を咲かせた。


お茶会のお開きの時間になり、カノンとアイリスは挨拶をしてカノンは帰路についた。


帰りの馬車内。

カノンは先ほどのアイリスとの会話に出た占い師の事を思い返しており、リリーに尋ねると場所を知っているとの事で、フローライト家に向かっていた馬車を例の占い師のもとに向かうよう指示を出す。

リリーには恋の相談かと少し楽しそうに笑われたが、カノンは気にせずに別の事を考えていた。


そうこうしているうちに、アイリスとの会話に出た占い師が店を構える一角に来た。

店構えはこじんまりとしており、大きいテントを張ったくらいの大きさだ。

カノンは意を決して中へ足を運ぶ。

中へ入ると、長方形の小さいテーブル一つに椅子が二つ。

人が二人入るのがやっとな狭さだ。


「いらっしゃいませ。どうぞこちらへ。」

「こんにちは…よろしくお願いしますわ。」


占い師の見た目は女性でおとぎ話に出てくるおばあさんのような容姿だ。

だが、しゃべり方や雰囲気はものすごく柔らかい。


「今日はどういった事をみますか?やはり恋の相談でしょうか。」

「いいえ…恋では…ありませんわ。何と言ったらよいのか…。」


カノンがみて欲しいもの。

それは現代日本の事だ。

だがどう話していいかわからず下を向いた。

その様子をみた占い師は優しく微笑んだ。


「どう話したらよいか…お悩みのようですね。では、私がお嬢さんの事、僭越(せんえつ)ながらみさせてもらいますね。」


占い師は両手を机の上にのせ、手のひらを上にして目を閉じた。


「…過去の境遇…とても辛かった事があったのですね。ですが、それを変える大きなきっかけと出来事が……不思議な体験をしたのですね。お嬢さん…不思議な魂で繋がっていますね。お互いに考える事は一緒…今の家族構成、行動…価値観…それらが似ている誰か。どちらか一方が願えば、無意識のうちにひかれ合い、力が発動するのですね。ですが…その力が消えかかっています。」


占い師は目を閉じたままだが、顔が険しくなり言いにくそうにしている。

カノンは静かに話を聞いており、続けて欲しいとお願いした。


「……最初は、負の感情から力が発動した…今は…負の感情はなく未来に向けての明るい感情で力が発動しようとしています。それが…力が消えかかっている原因の一つ。もう一つ…お互いに欠けていたものが見え始めている…。一方は伝える大切さ…。もう一方は行動する大切さ…。もし、次に力を使う時は…無事でいられるかどうか…。もし、力が発動したら…いえ…お嬢さん達ならきっと大丈夫ですね。絆…運命…強く結ばれているのですから。」


占い師は言葉を告げ終わり、閉じていた目を開け、机の上に置いていた手を下げた。

カノンの表情はどこかスッキリとしていた。


「ありがとうございます。占い…すごいのですね。こんなにわかるなんて。」


「いいえ、私は…人に聞こえないものが聞こえるだけです。それが神なのかはわかりませんが、人々を導けたらと思って伝えています。それと…見たところ高貴な御方とお見受けします。所々の言葉使い大変不躾でございました。」


「いいえ、お気になさらないでくださいまし。そのお力…とても素晴らしい力だと思います。お釣りはいりません。あなたのおかげで、わたくしのやるべき事が再びはっきりしました。」


カノンはお代を多めに机に置き何か言われる前に颯爽とその場を後にした。


「(次の週末…殿下がいらっしゃる…その時に…)」


カノンは決意を胸に馬車に乗り込みフローライト家に向かった。

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