〜美桜の自伝(Ⅱ)〜
17歳になった今も相変わらず家族とは距離があるままだ。
今では家で家族と過ごすより図書館や古本屋にいる時間のほうが長い。
読んでいる本の中には異世界ものや恋愛もの、歴史や神話などあらゆるジャンルがあった。
多くの本を読んでいるうちに貴族に関する物語が好きになった美桜は貴族について調べた。言葉遣いやテーブルマナーを身に着けたり、動画を見ながらダンスのステップをぎこちないながらもやってみたりドレスやアクセサリーといった装飾品を雑誌を見ながら真似て描いてみた。そういった時間が何よりも楽しく美桜の心を満たしていった。
そんなある日の休日、いつも通り古本屋に行き好きなジャンルのものを3冊ほど購入を済ませる。
すると、店主から「嬢ちゃんみたいな若い子がこんな小さい古本屋にいつも来てくれてありがとうね。だが、もう時代に合わなくて店仕舞いをすることになったんだよ。これは閉店サービスってことでもらってくれないか。中身は嬢ちゃんの好きそうな内容ばかりだから家に帰ってのお楽しみだ」とウインクしがちにもう3冊ほど譲ってくれた。美桜は申し訳ないという気持ちもあったが好きな本をタダでもらえるなんてラッキーだと思い、店主の気持ちに甘えることにした。
「ありがとうございます!たくさんの本と出合えて嬉しかったです。お世話になりました!」
と気持ちが高ぶってお礼とその場にあっているかどうかわからない言葉を店主に伝えた。店主は嬉しそうに、けど少し寂しそうに頷いていた。
古本屋を出た美桜は幾年かぶりに軽い足取りで家に向かっていた。今日買った本と頂いた本どちらから読もうか頭の中はその事でいっぱいだった。
家に着いた美桜はさっそく買った本と譲り受けた本を広げてみた。
その中にタイトルもなく作者名もない古びた本が目に入る。中身が気になり開いてみると外国の文字が並んでいる。
幸い、外国語は勉強のおかげで読める程度まで取得していたのでわかる単語を拾っていき読み解いていく。
どうやら内容はおまじないのようだ。薄い本だが種類は豊富のようで、その中でも美桜の目に留まったのが『人生一番つまらないときに唱えるだけで奇跡が起きる』という内容のものだった。
おまじないで今のつまらない現状がどうにかなるわけではないと頭ではわかってはいるが心のどこかでは期待をしてしまう。
葛藤の末に唱えるだけでいいというのなら物は試しということでおまじないをしてみることにした。
その前にこうして自伝を書き残しておこうとペンを走らせたのだった。