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~カノンが紡ぎ、美桜が繋いだもの~

兄、(かなめ)からの連絡を受けて慌てて帰ってきた父と母。

母は美桜の姿を目に入れるなり、抱きしめ、父はそんな母の後ろで静かに二人の様子を見ている。


「美桜…お兄ちゃんから連絡を受けるまで、気づかなかった…すまない。」

「美桜…ごめんなさい…。無理しているの…気づけなくて…。あなたの事…見ると言ったのに…結局何も気づけなくて…本当に…ごめんなさい…ごめんなさい…。今までも…。―――。」

父は静かに伏し目がちに謝り、母は美桜を抱きしめ涙を流しながら何度も謝る。

母は今回の事と今までの事を含めて何度も謝った。


「……私が…足を引っ張りたくなくて、心配や迷惑を掛けたくなくて…勝手にした事なの。誰も悪くないよ…。皆…雅君も…いのりちゃんも…お兄ちゃんも…お父さんも…お母さんも…謝ってくれたけど…本当に…私がしたくてやった事なの…ごめんなさい…。こんなに心配掛けて…。」

美桜も気持ちを伝え次第に涙が出てきて、空になったコップをベッドの上にそっと置き、抱きしめている母の背中に腕を回し背中を優しくなでる。


「それにね…お母さん…。」

美桜は体を少し動かし、抱きしめている母から少し離れ、母の顔を見ながら真っ直ぐに伝える。


「もう…十分だよ…。十分…気持ちも、行動も伝わっているよ…。最近…お兄ちゃんも…お父さんも…謝ってばかり…お母さんも…すごく謝ってばかり…。今までの事…謝ってほしいんじゃない。ただ、私を見て欲しくて…家族の一員だって認めて欲しくて。……けど、それはもう叶ってる。だからもう…謝らないで、自分を責めないで…。」


美桜はここ最近家族から謝罪をもらい態度や行動で幾度も示してくれていた事を受け止めていた。

自分の心がキュッと掴まれるくらいにもう十分、家族からの想いは伝わっていた。


美桜の言葉に母はさらに涙を流し顔を両手で(おお)う。

父は母に近づき、母の背中を撫でながらハンカチを母に渡し、ベッド脇に座る。


原さんは涙ぐみながら美桜達家族の様子を見ており、峰岸君はまた少しだけ表情が険しくなる。

峰岸君の険しい表情は今度は見てわかるものだった為、兄の(かなめ)が峰岸君に近づき付いてくるように(うなが)す。


兄の(かなめ)と峰岸君は美桜の部屋から廊下に出た。

(かなめ)は峰岸君に自分の過去を簡潔に含めながら今までの家族関係を話す。

峰岸君は静かに話を聞いていた。


「――。そんな事があって…美桜を…だいぶ傷つけた…。美桜と…付き合ってるんだろう?美桜の家族がこんなのだって事を…恥ずかしい話だが…聞いて欲しくて…。」


「…話はわかりました。…お兄さんって……シスコンなんですね。」

静かに話を聞いていた峰岸君が口を開く。

険しい顔が話を聞いた事で穏やかなものになり、笑顔で(かなめ)に思った事を伝えた。


それを聞いた(かなめ)はあっけらかんとした表情をして次第に顔が赤くなり峰岸君に反論する。

「……はぁー?!今の話を聞いてどこにシスコン要素があるんだよ!」


峰岸君は(かなめ)の反論に動じず、ケロッとした表情で答える。

「全部ですよ。一ノ瀬さんを想うからこそ寂しさで、勉強にのめり込み離れていった一ノ瀬さんに冷たくあたったのですよね。それに、さっき頭なでてましたし、素直ではないですが、一ノ瀬さんを大事に想っているの…第三者の僕でも伝わります。」


峰岸君は自分の視点を伝え、今度は楽しそうに軽く笑いながら伝える。

「あと…僕の事、本当は快く思ってませんよね。この間のパーティーで、僕が一ノ瀬さんといる時ずっと不服そうな表情してましたから。」


峰岸君の言葉にぐうの音も出ない(かなめ)は、悔しさから少しだけ意地悪な事を言う。

「お前…いい性格してんな。本当に美桜でいいのかよ。こんな家族を持ってて、お前の家なら付き合いとかうるさいんじゃねぇの。親に反対されたりとか。」


(かなめ)の意地悪な問いにも動じず、むしろ堂々と言い放つ。

「たしかに、一ノ瀬さんを傷つけた事は許せません。…けど、それは僕が口を挟む(はさむ)事ではないです。一ノ瀬さんはもう十分に皆さんの気持ちを受け止めてますし、好きな人のご家族ですから…何も問題ありません。それに…僕は、美桜さんじゃなきゃダメなんです。親に反対される事があるのなら、僕が実力を付けてねじ伏せますので、安心してください。」


峰岸君の堂々とする姿にもうこれ以上何を言ってもダメだと感じた(かなめ)は真っ直ぐに峰岸君を見て頭を下げる。

「正直、悔しいが…妹をよろしく頼む。」


二人は話が終わり美桜の部屋の中へ戻るべく扉に体を向ける。

先に歩き始めた(かなめ)が扉の前でドアノブに手を伸ばしたまま動かずにいる。

その事に疑問に思った峰岸君が声を掛ける。


「…悪い…ドア…開いてたみたいで、話…全部聞かれた。」


閉めたと思っていたドアは少し開いており、中まで話が筒抜けだった。

二人は顔を引きつらせながら少し開いているドアを開け、美桜の部屋に入ると女性陣は顔を赤らめており、父はようやく美桜と峰岸君の関係を把握し動揺していた。


美桜はその光景に少し可笑しさが込み上げ笑顔になり、峰岸君と原さんに向かって伝える。

「雅君、いのりちゃん、お恥ずかしい所をお見せしました。改めまして、(とおる)お父さん、(ゆい)お母さん、(かなめ)お兄ちゃんです。……私の…大切な家族です。」


美桜の口から自然と出た言葉。

峰岸君や原さんは笑顔で頷き美桜の言葉を受け止めた。

その場に美桜の大切な人達の笑顔が溢れる。


美桜はこの光景を噛みしめながら思う。

「(カノンさんが家族と雅君を私に紡ぎ(つむぎ)、私自身が未熟ながらも繋いだ結果…。私…もう一人じゃない。この先何があっても大丈夫。大切な人達がいて…大切に想ってくれる人達がいるから。……ただ…心残りは…アザレアの事…。)」



しばらく皆が美桜の部屋で和気あいあいと過ごしていたが、峰岸君の美桜を気遣う一言でその場は解散となった。

静まり返った部屋に一人残った美桜は、今までの疲労がどっと出て、ベッドに沈み込むように眠りにつく。


その日、美桜は夢を見た。

その夢の内容はアザレアの街が災害に見舞われる夢だ。

美桜にとっても思い出深い出来事な為、その夢を機に何か出来ないか模索する事となる。

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