~ライラックまさかの発言~
フローライト家。
馬車から降りた父オリヴァーは屋敷に急いで入り、執事のカクタスに医者の手配が整っているか確認を取る。
ライラックは馬車から降りたカノンをお姫様抱っこしてフローライト家に入る。
「で、殿下…。このように抱きかかえられずとも自分で歩けますわ。殿下もだいぶお疲れのはず…。降ろしてくださいませ。」
「ダメだよ。これ以上、変な無茶はしないように見張ってなくちゃね。それにそんなに暴れるともっと強く抱き寄せるよ?」
急にお姫様抱っこされたカノンは恥ずかしさでまた顔を赤らめ抵抗してみるがライラックの力に敵わず、彼の言葉にさらに顔を赤くして渋々抵抗を止めた。
「もぅ抵抗は終わり?強く抱き寄せられなくて残念だな。」
ライラックはカノンの反応を楽しんでおり意地悪く言ってみる。
その楽し気な様子にカノンは拗ねた表情をしてそっぽを向くがその反応ですらライラックには可愛く見えた。
カノンの自室の前に着くとライラックはカノンを優しく降ろし、部屋をノックして扉を開けカノンが中へ入れるようにする。
部屋の中には父オリヴァーと執事のカクタス、侍女のリリー、医者の四人がすでに待っていた。
「カノン様!…ご無事で…何よりです………。」
「心配かけてごめんなさい、リリー。泣かないでくださいまし。わたくしは大丈夫ですわよ?」
「だって……カノン様…本当に、心配を…」
カノンの姿を見たリリーがカノンに駆け寄り泣きながら無事を確かめた。
「取り乱して申し訳ございません。お召し物を替えなくてはですね。こちらにどうぞ」
涙をぬぐいリリーはカノンの着替えをするために一緒にバスルームに向かう。
着替えが終わり医者に診てもらう為ベッドに入るカノン。
椅子で大丈夫だと本人は伝えたのだが、オリヴァーやライラック達の視線に負け横にはならず上半身を起こした状態でベッドに入った。
「……うーむ。腕に切り傷はありますが、傷は浅くすでに血も止まっておりますので幸いと言ったところでしょうか。他に具合が悪い様子もない事をお見受けしましたので大丈夫と言えます。しかし、2、3日は安静にしていてください。最近のカノン様は積極的かつ活発的と伺っております。なので…絶対に、絶対でございますよ。安静になさってください。」
「わ、わかりましたわ…。(これほど念を押されるとは…)」
医者の言葉にぐうの音も出ないカノンは従うしかなかった。
カノンを診た後、ライラックの事も診ようとしたが、本人が怪我をしていないと断る。
一通りの事を終えた医者は「また何かありましたら」と挨拶をし部屋を出ていくがリリーが玄関先まで見送ることになり二人は部屋を出た。
「娘の無事も確認できたところで、殿下、王宮までお送りします。殿下も昨夜から娘の為に動いてくださり、本当に感謝してもしきれないくらいのご恩を…。感謝致します。」
オリヴァーは娘の為にここまで動いたライラックに頭を下げる。
「顔を上げてください。そんな、お礼だなんて…僕は何もしてないですよ。逆に彼女に助けられましたから。」
ライラックの言葉にオリヴァーは顔を上げ、彼の助けられたの言葉に疑問を感じたがそれでも何か多大なお礼をと申し出るオリヴァー。
「うーん…。本当にお礼はいいんだけど…。そこまで言うなら、一ついいかな?カノン嬢が回復するまで僕を侯爵家にいさせてくれないかな」
ライラックの言葉にオリヴァーを含め執事のカクタスやカノンが目を丸くしている。
「な、何を言っておりますの!?殿下ともあろう人が王宮に帰らず侯爵家に居座るとはご自分の立場をわかっておりますの?!」
「わかっているさ。でも、また君が無茶しないように見張るって決めたし、フローライト侯爵がお礼をと言うんだからカノン嬢が回復するまでの間、侯爵家にいるのをお礼だと思って。ね。」
カノンはベッドから身を乗り出し反論するが、悩んだ末にオリヴァーはライラックの押しに負け侯爵家での滞在を認め、娘を頼みますと再度頭を下げる。
その後、カクタスに屋敷の使用人達に殿下滞在の旨を伝えるよう指示し、屋敷の皆が行動を始める。ベテランの使用人がライラックのお世話をする事になり風呂やらなんやらと部屋から出ていき屋敷内が慌ただしくなった。




