~美桜と家族とクリスマス~
兄におぶられたまま家に着き中に入り、兄はゆっくり美桜をおろす。
二人を心配して奥から両親が慌てて出てきた。
「帰りが遅いから心配したのよ。って美桜!ずぶ濡れじゃない!早くお風呂に入って温まってきて。ご飯やお話はそれからね。お兄ちゃんも風邪ひかないうちに着替えてきてね。美桜を迎えに行ってくれてありがとう。」
「美桜。ゆっくり湯につかって温まるんだよ。」
母や父は心配して声を掛けるが美桜はその様子に戸惑いながら返事をしてお風呂に向かう。
お風呂で冷え切っていた体を十分に温めリビングに行くと家族がそろっており、料理も温め直したのか湯気が出ている。
美桜がうつむき加減でダイニングテーブルにつくと母が先に話し出す。カノンに話した内容を今度はちゃんと美桜に伝える。
「クリスマスを祝う前にいいかしら…。――――。美桜…今まで、本当にごめんなさい…。このひと月、美桜の様子がどこか違っていて、いろいろ考えさせられたの…。私達美桜の事全然見てなくて…。さっきも美桜にあんな風に言わせてしまうなんて…。それくらい美桜を傷つけたわ。本当にごめんなさい。許してくれなくてもいい。この気持ちをわかってもらうのも今すぐじゃなくてもいいの。もう一度…あなたの『お母さん』に…なってもいいかしら。」
「父さんからもいいかな。―――。本当に今まで悪かった。母さんと一緒で『お父さん』としてできる事をこれからはする。機会を…くれないか。」
両親は兄と同様にこのひと月の間本当に今までの事を考え悔いて、これからの事を考えてくれていたようだ。それを聞いた美桜は兄に言ったように自分の気持ちを伝える。
「今すぐに許すことは…できない…。ものすごく時間がかかると思う。でも…また昔の仲が良かった時のように『家族』でいたい。私も…お兄ちゃんやお父さん、お母さんとちゃんと話し合わず勝手に距離を置いてごめんなさい…。大っ嫌いって…言って…ごめんなさい…」
気持ちを伝え終わった美桜はまた涙が溢れてきた。
美桜の気持ちを聞いた両親は美桜の言葉を受け止め今はそれでもいいと涙ながらに言ってくれた。
話がまとまり終えた頃ぐうぅと大きな音が鳴った。音のしたほうを三人が見ると兄のお腹の音のようだ。兄は気まずそうにしている。
「あーー…。この家族崩壊の原因を作った俺が言うのもアレだが…。すみません、お腹空きました……。」
その兄の様子と言葉に可笑しくなり笑い出す三人。兄はきまずいやら恥ずかしいやらが入り混じった表情をしている。
「もう!笑い過ぎだ!俺は先に食べるぞ!頂きます!」
まだ笑っている三人に兄は宣言してご飯を食べ始める。
こんなに笑い合ったのは幾年ぶりだろう。美桜はこんな風に家族と過ごせるのはカノンの力があっての事と思い心の中でカノンに感謝をし、変わるきっかけをくれたおまじないの本や聖夜の奇跡に感謝をして目の前にある大好物のグラタンを食べ始めた。
「あ!そういや、言ってなかったな。遅くなったけど、メリークリスマス。」
兄が思い出したかのように父や母、美桜に言う。言われた三人の声がそろった。
「「「メリークリスマス」」」
美桜は料理を食べながら今は冬休み中なのでカノンの日記を読んだり学校の勉強を振り返ったり自分の日記も書いたり、おまじないの本について調べようと今後の予定を立て、あちらの世界の事も思うのだった。
「(カノンさん…。今頃どうしてるでしょうか…。フリージアの街は盛り上がってますでしょうか…。)」




