~講義と仕立て屋~
無事に砂糖の実を割り中身を取り出すことに成功した次の日。
何度も庭師のハサミを借りるわけにもいかないので砂糖の実をいっぱい収穫して特注のハサミが来るのを待つことにした。ハサミが出来たらいろんな種類のお菓子を作ろうと今から楽しみにしている。
今日は姿勢とダンスの講義があり、講師からは最後の講義だと言われた。
講義まで少し時間があるのでその間自室でお菓子のレシピを何種類か書きとめることにした。
しばらくして講師が到着し、別室で講義が始まる。
姿勢を保つ練習。ピンと背筋を伸ばし丹田に少し力を入れる。これが基本的な姿勢だと習う。習ったばかりの人なら数分でだんだんときつくなり姿勢が崩れるだろう。
だが、カノンの体には長年の努力が染みついており美桜にとっては苦に感じない。
「さすがでございます。とても綺麗な姿勢でございますわ」そう言われた。「では、お次はダンスに参ります。」そう言って講師が男性パートを美桜が女性パートを踊る。曲はないため講師が口でリズムを取る。
独学ではぎこちない動きだったが、カノンの体だ。やはりダンスもカノンの努力の成果もあり美桜の思いとは裏腹に難なくこなす。のみ込みの早かった美桜は休憩を入れつつ講義を受けたことで数時間で全部のステップを思い出したかのようにスムーズに出来るようになっていた。
(カノンさんすごいです。こんなにスムーズに…きっといっぱい姿勢やダンスの練習をしてきたんですね。ご令嬢として本当に多くの努力を……。)
「さすがはお嬢様。復習だと伺っていたのでどのような具合かと心配しておりましたが不要でございました。講義は以上で終了でございます。お疲れ様でございました。」
「今までご指導ありがとうございました。先生の名に恥じぬように立派に振舞います」そう言ってきれいなお辞儀をした美桜。その姿に感涙する講師だった。
講師を見送った後、昼食の時間になっていたので食堂へ向かう。
昼食を終えた頃、新たに客人が来た。侯爵家御用達の仕立て屋だ。
以前シンプルなドレスを着たいとデッサンを描いていたものを見せるために足を運んでもらったのだ。
ゲストルームに集まり挨拶を程々にすまし早速本題に入る。
「ご機嫌麗しゅう。カノン様。この度は『サーラの仕立て屋』をご利用ありがとうございます。新しく仕立ての依頼をと伺っております。」
「よろしくお願いします、サーラさん。実はこういったデザインのドレスを仕立ててほしいのですができますか?ワンピースという名の服です。あと、このタイプの制服も何着かお願いしたいのです。」
そうデザイン画を見せる。どれもワンピースタイプのシンプルなデザインの服と制服だ。派手ではないカジュアルな雰囲気のデザインにサーラは「制服にこのデザインですね。かしこまりました。……まぁ…斬新なデザインですわね。ですが殿方とのデートの際に邪魔にならないですし。可愛らしく気品もありますわ。面白いですわね。これは夜会やお茶会には向きませんがお屋敷の中の普段着や町にお出かけされる際にとても快適なデザインですわ。作り手のわたくしとしても出来上がりがとても楽しみです。」そう絶賛し美桜とサーラは何着か二人のアイデアをまとめつつ寸法を測ったりしていった。
サーラは美桜がデザインした用紙とサーラ自身のデザイン画を持ち帰り「後日お届けいたします。お楽しみに」とアトリエに帰っていった。サーラを見送った美桜は自分のデザイン画が受け入れて貰えたことにすごく嬉しさを覚える。
デザイン画が描けるようにデッサンの努力を認めてもらえた気がして内気だった性格がまた少しだけ自信を持てた。
こうして講義や打ち合わせが終わり気が付くと日も暮れていた。
今日の夜ご飯は何だろうと今後の予定を考えながら軽い足取りで食堂へと向かう美桜だった。




