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「「中身が入れ替わったので人生つまらないと言った事、前言撤回致しますわ!」」  作者: 桜庵
最後の入れ替わり 最後の異世界生活・カノン編
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~心のこもった演奏なら~

学校中で広まっていた図書館や第三音楽準備室の噂は、徐々に収まっていき、生徒のほとんどが口にしなくなった頃、週明けにはテストが控えている。

そんな平日の放課後。


この日は図書館ではなく、生徒が何人か残っている教室で勉強をする事になった。


「いのりちゃん、今日はこれを聞きながらお勉強をしてみませんか?」


「?美桜ちゃんのスマホ…と、イヤホン?」


「はい!もう再生準備はバッチリですわよ。少しだけ…雑音がありますが…。」


カノンと原さん、峰岸君が机に教科書を広げて勉強の準備を始めた途端、カノンは

原さんにスマホとイヤホンを渡した。

それを受け取った原さんは疑問に思いながらも、自分の耳に装着し、画面をタップして再生をした。


「!…これ…ピアノ?」


「わたくしの作曲した演奏で申し訳ないのですが…。」


「……キレイな曲…ありがとう!さっそくやってみる!!」


原さんは、イヤホンを装着したまま机に向かい、ペンを走らせた。


「美桜ちゃん、ピアノって?それに、美桜ちゃんの作曲って?」


「実は…図書館で勉強したあと、駅前のショッピングモールに一ノ瀬家の皆さんと行きまして、買い物の途中で皆さんを待っている間にストリートピアノを拝借しまして…。

いのりちゃんが集中出来るようにと、思いを込めながら演奏をしたものを、携帯で録音したのですわ。


ストリートピアノのルールと、一ノ瀬家の皆さんとの待ち合わせ時間もありましたので一曲しか演奏出来なかったですが…。」


「そうなんだ、作曲ってすごいね。音楽にはサブリミナル効果があって、睡眠に入りやすくなったり、集中を高めたりするとも言われているからね。」


「はい…今思えば、わたくしの演奏ではなくとも良かったのでは…と。

音楽を投稿出来るサイトはいくらでもありますし、つたない演奏よりも、プロの方の方が良かったのでは…と。」


「そんな事ないと思う。原さん…いつもより集中しているよ。

美桜ちゃんの気持ちがこもった曲って言うのが大きいと思う。」


「そうだと…嬉しいですわ。」


峰岸君の言葉通り、原さんを見ると、時々考える素振りはあるものの、スラスラとペンを動かし、いつもよりも集中しているように見えた。

原さんに続き、峰岸君やカノンもペンを動かし、勉強を進めた。


「(そういえば…ショッピングモール内の掲示板で見かけたあの広告…。

応募…してみましょう…。)」




そうして、カノン達は期末テストに向けて勉強を進めていき、週末も勉強のために一ノ瀬家に集まった。


カノンお手製のスイーツをもてなしたり、休憩をはさみ談笑を交えながら、やれることは全部した。


そんな中で迎えた期末テスト。

一日、一日と最終日まで難なく過ぎていった。


テスト最終日の放課後。

言わずもがな、カノンは余裕の表情を浮かべており、峰岸君は手ごたえありという表情だ。

原さんはと言うと、相変わらず自信のない表情を浮かべている。


「今日でテスト終わりですわね。お二人とも、お疲れ様でした。」


「うん、美桜ちゃんもお疲れ様。……原さんは…だいぶお疲れ…。」


「うん…燃え尽きた…。我が人生…悔いなし…。」


「武士か!原さん、まだ終わってないよ!辛いテストを乗り越えたら後は楽しい事しか残ってないよ!夏休みとか!」


「そっか、そうだね!夏休み!!海にお祭り!!おっしゃーー!!」


「ふふっ、やっといつものいのりちゃんに戻りましたわね。」


「でも、やっぱり、今回も美桜ちゃんに助けられたな…。ありがとう。ご褒美とか、楽しみとか、用意してくれて…。」


「?わたくしは何もしてませんわよ?」


「週末、一緒に勉強してくれた時、私のモチベーションを維持してくれようと、お菓子作ってくれたじゃない。すごく嬉しくて、すごい美味しかった!ありがとう!

あと、曲も!!


あの曲、本当に何回でも聞きたくなるし、何回も聞いたおかげでこう…勉強がはかどって、記憶に残っていたというか…なんというか…とにかく、今回のテストもカノ…美桜ちゃんのおかげでいっぱい解けたの!いっぱい協力してくれてありがとうございました!!」


原さんはカノンにお礼を伝えると同時に思いっきり頭を下げた。

その様子はクラスメート達の視線を集め、カノンは恥ずかしくなり、原さんに顔を上げるように伝え、峰岸君は楽しそうに、にこやかに笑って二人を見ていた。


「…こんなに…喜んでもらえるとは…。」


「「ん?」」


「あ、いえ、曲ですわ…。こんなに人に喜んでもらえたのは初めてですので…。

わたくしの国では…と言うより、家では、どこかで、誰かの前で演奏する事はなくても、令嬢ならピアノは弾けて当たり前…でしたので。

こんな風に誰かに聞いてもらえて、喜んでもらえた事はないのです。」


「えーー!!もったいない!!すっごく上手で、キレイで、何回でも聞きたいし、他のも聞きたいくらいなのに!」


「…そういえば、僕はまだ聞いていなかったな…。あの第三音楽準備室の時のちょこっとだけしか…。」


「それももったいない!!この間もらったデータ、今から送るから聞いてみて!!

絶対惚れこむから!!それくらい、効果あったの!えっと…サブ…サブリ…な?」


「サブリミナルだね。」


「そう!それ!」


「ふふっ…いのりちゃんたら…雅君が呆れた顔をしてますわよ。」


「うぅ…とにかく!聞いてみて!」


原さんの促すまま、峰岸君もこの間カノンがストリートピアノで弾いた曲のデータをもらい、イヤホンで聞いてみた。


「!…この曲…たしかにキレイだ。これを作曲したなんて…本当にすごいね。」


「(お二人とも…そこまでよい反応を見せて頂いて…嬉しいですわ。やはり…音楽は素晴らしいですわね。)テストも終わりましたし、空手も、演奏も頑張りますわ!!」


カノンは原さんや峰岸君の曲に対する反応を見て、自分のやりたい事を再度意気込んだのだった。

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