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「「中身が入れ替わったので人生つまらないと言った事、前言撤回致しますわ!」」  作者: 桜庵
最後の入れ替わり 最後の異世界生活・カノン編
155/170

~真相(後編)~

第三音楽準備室。

そこでピアノを弾いていたのはカノンだった。


「カノンちゃん?!何でこんな所に!」


「え~っと…実は…秘かにピアノの練習をしてまして…。」


原さんと峰岸君は噂の真相を確かめるために再度、第三音楽準備室に来たのだが、そこには思わぬ人物、カノンがいた為、動揺を隠せずにいた。


「えっ、はっ、待って、何から聞けばいいかわかんないんだけど。」


「……たしかに…まさか、こんな結果なんて、意外過ぎるよ。」


「いのりちゃん、雅君、落ち着いてくださいまし。」


「落ち着こうにも、限界があるよ!

だいたい、何でカノンちゃんがこんなとこにいるの?!

そして何で落ち着いているの?!一番お化けを怖がってたじゃん!!

それに、ピアノがない部屋で何でピアノの音がするの!!

部屋も暗いし、楽譜なんか見えにくいじゃない!!」


「…原さんが勢いで聞きたい事全部聞いた…。」


「だって!!カノンちゃんの為に噂の真相を暴こうとしたら、原因が幽霊とかじゃなくて、怖がってた本人なんだもん!!

ガッカリ感やら、ちょびっとのイラ立ちやら、安心感やらで今の感情、複雑なの!」


「……す、すみません…。」


「…はぁーいいけど…ちゃんと全部説明してくれたら許す…。」


「はい…全部お話します。」


「その前に…。」


「?…。」


「ピアノの無い部屋からピアノの音が聞こえる秘密から教えて。」


「ピアノなら…ありますよ?」


原さんの言葉に、しょんぼりと肩を落としながら事の説明をしようとしたカノンに、原さんが一番疑問に思っていた事を聞いた。


「ピアノなら、こちらです。」


「?って、せま?!こんな狭い所で練習してたの?!

それに…薄暗い部屋でどうやって楽譜を見ているのかなと思ったら、スマホのライトか…しかも工夫されたスマホ…。うん、なるほど……なんだろう…なんか…いろいろ規格外過ぎる…。」


「そ、そうでしょうか…。」


「照れている所悪いけど、褒めてないよ。」


カノンは原さんの問いに応えるため、ピアノがある事を伝え、その場所まで案内した。

第三音楽準備室は書類棚や机、今は使われていない楽譜や音楽に関する道具などが、部屋いっぱいにあふれている。

その部屋奥にある書類棚の後ろにひっそりと置かれている家庭用の黒いピアノ。


そのピアノが置かれている場所は、美桜の体や原さんくらいの小柄な女子ではないと収まらないくらいの狭いスペースだった。

そのスペースさえも、溢れかえっている物のせいで見つけにくく、この部屋にピアノがないと思われていたのだ。


カノンは、再度帰る準備をしながら、この部屋での事を説明した。


「この部屋を見つけたのはつい最近で、ピアノの練習がしたいと思いながら校内を歩き回っている時の事ですわ。

たまたまこの部屋の鍵が開いており、古い楽譜ばかりが置かれていて、いつしか読み漁っている時にこの狭い所にあるピアノを見つけましたの。


もの凄くほこりをかぶっていたので、おそらく古いピアノだと思うのですが、音はまだちゃんと出るので、絶好のチャンスだと思いましたわ。


楽譜も大量にありますし、ピアノもある。こんな嬉しい事は他にないと思い、放課後の部活前や、部活後の時間に少し練習をしていましたの。


この部屋…電気が付かないので、携帯の電気を頼りにしていましたの。

災害の時に使える技法の一つで、携帯のライトが懐中電灯並に明るくなると言う技法ですわ。」


「へ、へぇ…。」


「カノンさん、すごいね。そういう所まで調べて行動に移していたの?」


「いえ…わたくしの国で災害があって、家が停電になった事がありますの。そういう時の対策を調べていたら、出てきたのですわ。」


カノンが帰る準備を終え、三人は音楽準備室を出て廊下を歩いていた。


「噂の真相がわかったのは良いけど、でもカノンちゃん、よくあんな噂が流れていて、お化けを怖がっていたのに、一人で薄暗い部屋の中で練習できたよね。」


「そう…ですわね…噂や、お化けはたしかに怖いですが…。それよりも、やらなければ…と言う気持ちの方が強くて…集中していたらお化けも怖くない、と思いましたので。」


「カノンさんらしいね。原さんも、お化けより怖いものがあると言っていたし、二人ともお化けが怖がるぐらい強い女の子だね。」


「いのりちゃんのお化けよりも怖いもの?」


「あー…うん。これ…美桜ちゃんにしか言ってないんだけど…中学の頃、理由もなくクラスの女子から避けられていたの…しばらくは一人で過ごしていて…そんな時、美桜ちゃんに声を掛けられて一人じゃなくなった。


…でも、そんな美桜ちゃんがこの間オーバーワークで倒れて…そしてカノンちゃんまでもが倒れて…また一人になるのかなって思ったら…怖くなった。


一人が怖い…なんて、私、何言ってんだろうね、あはは。」


原さんの自嘲する様子にカノンは、胸をギュッと掴まれるような感覚を覚え、持っていた荷物をその場に放り、原さんをそっと抱きしめた。


「……一人は…怖いですわ。

…わたくしは以前、一人でも構わないと思い、周囲と距離を置きました。


でも、一人では…何もかも、楽しくないのです。

得るものもありません。

誰かがいるから、誰かといるから、得るものが大きく、増えていき、時には息苦しく、けど、とても…心地良いのですわ。


それが無くなる…一人になる…それはとても…怖いのです。

今までいろんな方々に出会った事もあり、この間の夢で教わりましたの。」


「…ふふっ…ありがと…。受け入れてくれて。カノンちゃんとも友達になれてよかった!」


カノンは原さんから離れ、優しく微笑んだ。

そんなカノンの言葉に原さんは満面の笑みを見せたのだった。


峰岸君が、カノンの放った荷物を拾い上げ、カノンに手渡し、三人はまた靴箱に向かって歩き出した。

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