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「「中身が入れ替わったので人生つまらないと言った事、前言撤回致しますわ!」」  作者: 桜庵
最後の入れ替わり 最後の異世界生活・カノン編
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~うわさ~

カノンが大会に向けて精を出している中、学校では二つの噂が流れていた。


その噂の一つは、登校してきたカノンの耳にも微かに入り、自分の席で荷物を整理していると、クラスメイトからの視線がやたらとカノンに集まる。


「(………皆さん…わたくしの方を見て何やら小さくお話しをしていますわ。言いたい事があるなら直接聞きますのに…。


でも、直接言えない方がいるのも事実…。


それに、わたくしを見ているからと言って、自分に関係のある話であるとは限りません。ここは………直接聞いてみましょう!)


あのっ!」


カノンは気にしないという選択も頭をよぎったが、やはり、自分を見ながら何人ものクラスメイトがひそひそと話をしているのを放っておけず、直接聞くために、近くに4人で固まっている女子グループに話し掛けようとした刹那、慌てて教室に入ってきた原さんに呼び止められた。


「カノ…美桜ちゃん!!!なんか変な噂流れているんだけど、知ってる?!」


「おはようございます、いのりちゃん。ちょうど今聞こうとしていましたの。いのりちゃんは何か知っているのですか?」


「あ、お、おはよう…じゃなくて!……それが…この学校、そんなに歴史が古い訳じゃないのに…………出たんだって…。」


「出た…とは…。」


「……幽霊。」


「「「「「え…。」」」」」


「え…。」


原さんが教室に来るまでに耳にした噂を、カノンや女子グループに聞かせると、そこにいるカノンを含めた5人の動きが止まり、それを見た原さんも動きが止まった。


「え、あ、あれ?今、皆が噂しているのって、その幽霊に関する噂じゃないの?」


原さんは皆の予想外の反応に、おどおどした様子を見せ、噂の事を聞いた。

その原さんの疑問に、女子グループの一人が気まずそうな顔をして、カノンを見たり視線を()らしたりして、もごもごと小さく話し出した。


「あー…えー…っと…幽霊の事は…初耳で…私達が話してたのは……その…えっと…。」


「……わたくしに関するお噂でしょうか。……ちゃんと…聞かせてくださいまし。事実なら肯定しますし、虚構なら否定致しますわ。」


歯切れ悪く話すクラスメイトに、しびれを切らしたカノンは真っ直ぐに見つめ、聞く覚悟を持った表情を見せた。


そのカノンの表情に、クラスメイトはグッと息をのみ、俯きながら、話し出した。


「……一ノ瀬さんが…峰岸君と別れたって…皆が言ってる…。」


「そんな事…。」


「何それ!!そんな事ないよ!!!そんなのただの噂に決まってるじゃん!!!ねぇ!美桜ちゃん!」


「え…えぇ…。」


クラスメイト達が話していた噂、それは美桜と峰岸君が別れたという内容で、学校中の皆がその噂と、もう一つ、原さんが聞いたという噂で持ち切りのようだ。


女子グループが話していた噂の内容に、カノンが否定しようと口を開いたのと同時に、原さんが勢いよく大声で否定した。

その様子にその場のカノンや女子グループ達は驚いた表情で原さんを見て、他のクラスメイト達の視線も集めた。


そこへ登校した峰岸君がクラスに入ってきて、原さんへ集まっていた視線が今度は峰岸君に向かった。


「……?…何?」


「何?じゃないよ、峰岸君!!美桜ちゃんと別れたって噂が流れてるんだよ!!なんでそんなに呑気なの?!ちゃんと美桜ちゃんの事好きだよね?!ね?!」


「う…うん…。ていうか噂って何?僕、今来た所なんだけど…。」


「だーかーらー!二人が別れたって噂!人の話聞いてた?!」


「あ、あの…いのりちゃん…落ち着いてくださいまし…。み…やび君も、好きって言ってくれてますし…。わたくしも…す…。」


峰岸君は教室に来るまでの間、噂をちゃんと聞いていなかったようで、原さんから聞かされた内容や言葉に啞然とし、少し感情的になり始めた原さんをカノンが止めに入った。


原さんを止めに入った際に、言いかけた言葉…「好き」。

たったその一言を伝えるだけで、幾分か噂の効力をかき消せるはずだが、カノンはその一言を言うのに躊躇(ちゅうちょ)した。


美桜の体に入っている自分が言ってもいいものか、人格が違う今、「好き」と言って峰岸君を不快にさせたくない、たとえ噂をかき消す為とはいえ、「好き」をいう事で、自分の国にいる婚約者のライラックを裏切ってしまうのではないか…そんな考えが頭をよぎり最後まで言葉を出せずにいた。


峰岸君はそんなカノンの考えを汲み取ってくれたのか、カノンに優しい笑みを浮かべて近づいた。


「『好き』って言おうとしてくれたんだね、ありがとう。僕も、ちゃんと『好き』だよ、『美桜』ちゃんの事。」


そう言いながら、峰岸君はカノンの頭を優しくなで、自分の席に向かった。


一連のやり取りを見ていたクラスメイト達は、「なぁんだ、やっぱり噂は噂だな」と期待を裏切られたような表情を浮かべ、原さんは「やれやれ」と言わんばかりの安心したような、呆れたような表情を浮かべた。

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