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「「中身が入れ替わったので人生つまらないと言った事、前言撤回致しますわ!」」  作者: 桜庵
最後の入れ替わり 最後の異世界生活・カノン編
125/170

~わたくしは…~

現代日本。


おまじないを唱えた夜にみるいつもの夢とは違い、不安を覚える夢を見たカノン。


現実世界に意識が引き戻され、うっすらと目を開けると、見慣れない天井が目に入り、まだはっきりしない意識の中、頭を動かし、目に入る情報から今の状況を把握しようとした。


「……こ…こは…。…変わった匂い……しますわ。」


カノンが、(まばた)きを幾度かし、意識がはっきりし始め、体を起こすと、見慣れない部屋のドアが横にスライドして開いた。

ドアが開いた先から、現れた見慣れた人と目が合い、カノンは勢いよく抱き着かれた。


「美桜!!良かった!!二日も目を覚まさないから心配したのよ!どこも痛いところはない?具合はどう?」


カノンに抱き着いた人物。

それは美桜の母だった。

美桜の母に続いて、美桜の父や兄、峰岸君や原さんが部屋に入ってきた。


「あの…ここは…。見た事もない器具ばかりですし…独特な匂いがしますわ。それに…この腕に付いているもの…。」


カノンに抱き着いていた美桜の母は、体を離し、目に浮かべていた涙を拭いながら説明をした。

ここは病院の個室で、二日も目を覚まさなかったのが栄養的にも心配だったので、栄養を補給するための点滴をしてもらうべく、検査入院をする事にしたそうだ。


峰岸君や原さんに関しては、美桜が学校を休んだので心配になり、家にお見舞いに来た所で、美桜の着替えを取りに来た美桜の母と家の前で会い、事の詳細を聞き病院に一緒に来たとの事だ。


説明を聞いたカノンは納得したような表情を浮かべた。


「そうでしたの…。ご心配お掛けして申し訳ありません。わたくしは、痛い所もないですし、具合の悪さもありませんわ。ご安心ください。」


「「「………。」」」


カノンが、皆に安心して欲しくて自分の状況を伝えるが、美桜の父と母、兄は目を丸くしてカノンを見た。


「美桜……口調…またお嬢様になっているわよ。」

「最近は貴族の真似事やめてたはずだけど…急にどうしたんだ…。」


美桜の母や兄の言葉に、後ろの方にいた峰岸君や原さんは顔を見合わせた。

二人は以前、美桜から聞いた話を思い出し、峰岸君がカノンに視線を戻して近づいた。


「……美桜ちゃん…じゃない?……もしかして…カノン…さん?」

「どうして…。」


峰岸君の問いに、今度はカノンが驚いた表情をした。

カノンの問いに、原さんが答えた。


「美桜ちゃんから聞きました…全部…。なので…知ってます。あなたがどこから来たのかも…。」


「なんだよ…どういうことだよ。美桜じゃないって言うのか?じゃぁ…誰なんだよ…美桜の姿をしているのに!いったい…お前は誰だよ!!」


原さんと峰岸君の言葉を聞き、話が見えず動揺を隠しきれない美桜の兄が、原さんや峰岸君、カノンを交互に見て、最後にカノンに視線を向けて問い詰めた。

美桜の母や父も、信じられないものを見るような目でカノンを見ている。


その場に緊張が走り、カノンは言うか言うまいか迷ったが、カノンを見る皆が、「ちゃんと聞かせてくれ」と言わんばかりの瞳を向けている。

視線負けをしたカノンは、俯き、拳を握り、深呼吸を一つして、意を決した表情を言葉を待つ皆に向けた。


「先に……謝罪致します。皆さんの大切な方のお体を…お借りしている事…申し訳ありません。わたくしは…別の世界から来ました、カノン・グレイス・フローライト…と申します。」


「美桜じゃ…ない?……そんな…どうして…。」


カノンの言葉に、気が抜けたような表情で膝から崩れ落ち、地面に座り込んだ美桜の母。

そんな美桜の母に、寄り添うように美桜の父も地面に膝立ちをした。

美桜の兄は拳を握り、唇を噛み、キッとカノンを(にら)んだ。

峰岸君や原さんは寂しそうな表情でカノンを見ている。

そんな中で口を開いたのは、美桜の兄だった。


「……カノン…と言ったな。こんな事になった理由とか…原因とか…なんかあるんだろ。どうしてこうなった。美桜はどこに行ったんだ。……もとに…戻るのか。」


「……全て…お話致しますわ。」


カノンは事の全てをその場にいる皆に話した。


「……俺らの…せいで…。」


美桜の兄の言葉に、カノンは伏し目になった。


「……たしかに…。最初の『つまらない』…は、そうかもしれません。ですが、二回目の『つまらない』は、わたくし達のやり残した事をしたいという意志ですわ。誰のせいでもありません。」


「……やり残した事をやり遂げたら…お前は自分の国に帰って、美桜は帰って来るんだな。……なら…そのやり残しが終えるまで…協力してやる。」


美桜の兄の言葉に、カノンは伏し目だった顔を上げ、驚いた表情見せた。

地面に座り込んでいた母や、母の隣にいる父、峰岸君や原さんも驚いた表情をしている。


「…よろしいのですか…。」


「にわかに信じられないが…受け入れるしかないし、実際、美桜と口調とか違うし…お前を責めても仕方ないだろ。二人が決めた事で今、目の前の事が起きてるなら…俺らにはどうしようも出来ねえし…。その代わり…無茶はするな…。」


美桜の兄はため息を一つ吐き、「とりあえず、これからよろしく」と、ぶっきらぼうながらに手を差し伸べてきた。

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