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「「中身が入れ替わったので人生つまらないと言った事、前言撤回致しますわ!」」  作者: 桜庵
最終章~最後の入れ替わり 最後の異世界生活・美桜編~
123/170

~ありがとう(前編)~

美桜が、アザレアの人達の急な贈り物に満面の笑顔を見せ、フロックスやサントリナは安心した表情を浮かべた。


街の人達に囲まれて笑顔で話していた美桜に、アザレアの長、ハンプスが近づき、「付いて来てくれますか」と、にこやかに声を掛けた。

ハンプスの言葉に美桜は、疑問に思いながらも付いて行き、美桜を囲んでいた街の人達や、サントリナ達もハンプスに付いて行った。


ハンプスが向かったのは、マラカイト通りの真ん中で、その場所に近づくにつれて、いい匂いが漂ってきた。


「み…カノン様、こちらです。」

「?……えっ……これは…。」


ハンプスが美桜に振り向き、片手を広げて見て欲しい方向を示した。

美桜がハンプスに促された方を見ると、そこには、広いテーブルにいっぱいのお菓子が並んでいた。

美桜はその光景に、本日二度目の驚いた表情を見せた。

そんな美桜に街の人達が笑顔でお菓子を持って駆け寄ってきた。


「カノン様!こちらのお菓子、食べてみてください!カノン様が、最初に教えてくれたお菓子です!あ、あと、こちらも!こちらは応用を活かしたお菓子です!どうぞ!」


「いやいや、昨日、持ってきてくれた新しいレシピの方だろ!こっちも食べてみてください!」


「ちょっと!カノン様に先にお菓子を持ってきたのは私よ?!後にしなさいよ!」


「何を?!新しい方が先だ!!今日が初のお披露目なんだからな!!」


「それを言うなら、こっちだって新作だぞ!!」


「あ、あの…皆さん…順番に全部頂きますので、落ち着いてください。」


美桜にお菓子を食べて欲しい人達が、順番を取り合っているのを美桜は、慌てふためきながら止めに入った。

美桜達を囲んでいた周り人達が、その様子を見て、その場は笑いに包まれた。

美桜も可笑しさが込み上げ、笑顔になり、持ってきてくれたお菓子を順番に食べていった。


「すごいです…。先に教えたお菓子…味も、食感も完璧です。次の応用のお菓子…果物を使っていて、見た目もキレイで、基本を活かしつつ、何一つケンカせずに組み合わせられていて、美味しいです。…昨日渡した新しいレシピのお菓子も…美味しい…完成度高いです!すごいです!皆さん…お菓子の職人ですね!!」


「カノン様に喜んでもらえてよかったです。頑張って準備したかいがありますね!!それに、このお菓子達があるのは、カノン様のレシピのおかげですよ。カノン様こそ、お菓子の職人ですよ!!お菓子を作り方から種類まで教えてくださり、ありがとうございます!!」


美桜はお菓子を一つ一つ食べながら、素直な感想を伝えると、街の人達も嬉しそうな笑顔を美桜に向けた。

美桜は、街の人の言葉、『お菓子の職人』がスッと心に入り、頭の片隅にあった将来やりたい事が、漠然と決まった気がした。


美桜はお菓子を食べたり、街の人達と話をして、一段落したしたところで、街の人達の輪から抜け、通りに設置されていたベンチに腰かけた。

そこへ、サントリナやハンプス達が近づいてきた。


ハンプスは、少し曇った表情でベンチに座っている美桜の前に立った。


「……申し訳…ありませんでした。カノン様に……幾度も、失礼な態度をとった事、謝罪致します。お心も…幾度も傷をつけました。どんな罰でもお受けいたします。本当に…申し訳ありませんでした。」


ハンプスは頭を下げ、美桜に謝罪した。

そこに、サントリナがハンプスの言葉に補足した。


「あまり責めないであげて。実は、ずっと復興祭をやりたいって言ってくれてて、いつやろうか考えてくれてたんだけど、スリジエの花の話が出た時に、開花と同時にやろうって話になって、復興祭や開花を祝う準備を美桜ちゃんに驚かせようと、内緒で進めていて態度がよそよそしくなったんですって。」


「……サントリナ様のおっしゃる通りです。準備をいつ見られてしまうか不安で…。それと…以前、カノン様がおっしゃっていた、街の建物の修繕…こちらは、アザレアを…災害があった事を刻む為に街の皆で話し合い、残そうと決めたのです。やはり、一番に被害を受けてしまうのはこの街ですから…他の街の皆さんに忘れて欲しくなくて。…ですが…カノン様を傷つけた事に変わりありません。」


ハンプスは頭を下げたまま、美桜の今までの提案を断った理由を伝えた。

ハンプスの言葉に美桜は、納得し、ベンチから立ち上がり、柔らかい表情を浮かべた。


「顔を…あげてください。罰を受けるのは、私の方です。ハンプスさんが…アザレアの皆さんが、こんなに頑張って立ち上がり、私を驚かせようとたくさんの準備をしていたのに、私は自分で嫌になるくらい、頭の中で悪い考えばかり巡っていたんです。


……つまらない…そんな事さえ思いました。でも…間違ってました。こんなに…考えてくださっていたなんて……。


皆さんがよそよそしい態度だった理由を知る事が出来て…笑顔が見れて…私も…すごく、この街を誇りに思います。皆さんに会えて良かったです!皆さんの復興のお手伝いが出来て良かったです!!私に……大切な街を任せてくださり、ありがとうございます。」


美桜はハンプスに向けていた視線を、ハンプスやサントリナ達の後ろの通りで、楽しそうに騒いでいる街の人達に向けながら話した。

美桜の言葉に、ハンプスは下げていた頭を上げた。


「こちらこそ、何から何まで…本当にありがとうございます、美桜様。」

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