お空のロウソク
「ふー、ふー」
小さな明りが灯る子供部屋、小さな男の子が窓を開けて白い息を吐いています。
「ふー、ふー、おかしいなぁ。消えないなぁ」
男の子のお母さんがその音に気付いて、ドアをそっと開けました。
「なんでなんだろう」
子供はなんだか悩んでいる様子です。
「たっくん、どうしたの?眠れないの?」
お母さんが息子のたっくんに話しかけます。
「うん、お空のロウソクが、なかなか消えないんだ」
たっくんはムキになって空に向かって息を吹きかけます。
「さっき吹いたらロウソクがスーッと消えてったんだ」
お母さんは不思議に思って窓の外を眺めます。
その時、お空をスーッと流れ星が、
「あ、ほらほら、お母さんロウソク消えたでしょ?」
たっくんは喜んでお母さんに伝えます。
「そうだね、ロウソク消えたね」
「うん、全部消えればきっと朝になって、そしたらお父さん帰ってくるよね?」
たっくんは顔いっぱいに喜びを表してお母さんに伝えます。
たっくんは、早く朝になってお父さんがお仕事から帰ってくるのが楽しみで仕方ないんです。
「そうだね。でも、たっくん。お空のロウソクはが全部消えたらお父さん暗くて迷子になっちゃうよ?」
「えー、そんなの嫌だ」
お母さんの言葉に、たっくんは目に涙を浮かべます。
「なら、最後にもう一個だけ消えたら寝ましょうね」
お母さんに言われてたっくんは素直にうなづきます。
そんな親子の頭の上を流れ星は通り過ぎていきます。
「おやすみ、たっくん」
眠いのを我慢していたたっくんは、お母さんの腕にもたれ掛かります。そして、ベッドに横になったたっくんは、その寝息で部屋の灯りを消しました。