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追放する側もされる側も問題があったケース

作者: 中井 香

アタシは魔法使い。とあるパーティーの一人である。『であった』が正しいかもしれないが。


1年前、勇者と盗賊に誘われ、その後僧侶、戦士を仲間にし結成されたこのパーティー。結成時から問題がなかったかと言われれば嘘になる。勇者の偏見が強かったからだ。


勇者はパーティーができる前から、盗賊を邪険に扱っていた。役立たずやら足手まといやら、僧侶が言い過ぎだと止めるくらいには罵り、盗賊には敵の囮、宿に置けない荷物の番くらいしか指示をしなかった。


僧侶が止める通り、盗賊は役立たずではない。むしろ盗賊の「敵の所有するアイテムを必ず盗める」のは非常に優秀で、ここが勇者率いるパーティーでなければ、あっという間に他のパーティーに引き抜かれていただろう。


盗賊の扱いが不当では、せめて荷物番くらいは交代にしようと、一度勇者に頼んだこともあった。が、「役立たずに払う宿代なんてない。それとも戦士に番させて盗賊と寝るか?」と下衆な言葉と共に一蹴されただけだった。冗談じゃない。実害が出ているから頼んでいるのだ。


盗賊は囮とされているため、パーティーの最前線にいる。最前線故、攻撃した魔物の返り血も浴びる。そして、荷物番をしている間、装備はおろか自分の身体すらろくに手入れできない。




単刀直入にいう。臭いのだ。




不快なにおいというのは戦闘の妨げとなる。獣族の僧侶のため、においのキツイ治療薬の使用を禁止するほどだ。においで集中力が削がれ、戦士の攻撃やアタシの魔法が失敗することも多々あった。そのたびに勇者は何故か盗賊を罵ったが、失敗した手前、強く言えなかった。


麻痺魔法を応用すればにおいを気にしなくて済むと気付き、それが実施できるようになったのは、人や血のにおいに耐性のある僧侶すら気にしだした頃であった。鼻の神経を麻痺させればよいのだ。かなりの精度が必要なため、他の神経に多少影響があったものの、大きな悩みが解消されるとお互い喜んだ。


あくる日、勇者はパーティー全員を招集し、盗賊を指さしながら叫んだ。


「お前は追放だ」


その日は口の神経も麻痺していたため、不当な追放に誰一人反論できなかった。




逃げだした僧侶が盗賊とスローライフを送ったり、酒場で暴れた勇者が牢屋に投獄されたり、呆れたアタシと戦士が2人で魔王を倒したりするのはまた別の話になる。

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