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第9話 魔王の朝は遅くて、もはや昼

俺はしっかりと眠りにつき、朝までぐっすりと寝た。

「⋯⋯よく眠れた、昨日はどうなるかと思ったけど、どうにかなったな」

今日も何事も無い一日が始まるのだろう⋯⋯それで良い。


冒険者職だった時は戦いだったり、強くなるための修行だったり、気が休まることはほとんど無かった。戦いと修行の毎日だったけど、それでもずっと気味悪がられた自分の超能力が役に立ってたときは嬉しかった。でも、いくら修行しても戦闘能力が上がらず、唯一の武器である超能力すら全く効かなくなり、それでも必死に喰らいつこうとしたけどダメだった。


やはり俺は元から冒険者職に向いてなかった⋯⋯自分の超能力によって不向きをカバーしていたに過ぎなかった。ここ最近は戦闘では役立たずと思われてたと思うが、一つ例外があった。それが料理と家事であり、あいつらから半ば押し付けられる形だったが嫌だった訳では無く、俺の作る料理はいつも美味いと、あいつらから評判だった。

今日から戦いの日々を辞め、魔王の下で身の回りの世話をする役目に就いた。超能力が効かない魔王だったら俺を気味悪く思うことも無いだろう。

『魔族軍と戦い最終的に魔王を抹殺し人類に平和をもたらす』という役目から解放され、超能力など関係無く、平凡な日常を静かに過ごすことが、俺の悲願だった。


今日から俺は超能力者でもなんでも無い、ただの魔王の使用人だ。



部屋にある時計をみると8時を指していた。俺は1階に降りキッチンへ向かい、朝食を作ることにしたがパンしか無く、しょうがないのでそのチョコチップの入った細長いパンを食べることにした。その後リビングを掃除したり、適当にテレビでも見ながら過ごしていていた。


12時を過ぎ、昼食にすることにした。しかし、まともに食べ物が残ってない。カップ麺もお湯を沸かす魔術が使えないので食えない。

「後で、夕食の材料買いに行くか」

とりあえず、食パンとスライスチーズがあったのでオーブントースターで焼いて二枚程食べる。

フライパン、大小二つの鍋、炊飯器やその他調理器具は一通り揃っているのだが、しばらく使われていないようだった。


昼過ぎになってようやくメロが一階へ降りてきたが、俺に見向きもせずキッチンへ向かった。一方俺はテレビの昼のニュース番組でも見ながら横になっていた。

「ねぇ、戸棚にあったチョコチップ入りのパン知らない?」

「ああ、それ割と美味しかったよ」

パンぐらいしかまともな朝食がなかったから、食べたんだが思ったより美味かった。


「そうそう、美味いよね⋯⋯って、あんたここにあったやつ全部食べたの!?」

典型的なノリツッコミを決めたメロは、俺が食べたと思ってるらしい。まあ事実なのだが。

「メロも食うつもりだったのか、残しておいた方が良かったか?」

「そういう問題じゃないわよ!私が昼食に取っておいたパンを食うな!あんたのせいで、食べるものなくなったじゃない!」

パンを全部食べられた魔王は手に黒い球のようなものを作って俺に当てようとこっちを睨んでいる。

「⋯⋯ま、まあ、カップ麺とか残ってるし」


「そういう問題じゃない‼︎私はあのパンが食べたかったのよ!!!!!」


魔王は俺に殺意を向けた形相で黒色のエネルギー弾を何発も投げた。時間停止が無かったら当たってた所だ。エネルギー弾が当たった床や壁は爆発し、当たってたら生きているかどうかも怪しい。粉々になっておりリビングどころか家までボロボロになった。

「⋯⋯ご、ごめんって、食べたりして悪かったよ、夕食はあれよりずっと美味しいものを作るから許してくれないか?」


「⋯⋯⋯⋯美味しくなかったら、追い出すからね」


こうしてどうにか魔王の機嫌は回復し、半壊した家も魔王の修復魔法によってすぐに直った。



さて、部屋にあった生活費用の財布を持って、夕食の材料を買いに行くことにした。もし魔王が俺の作った夕食を気に入らなかったら俺は即クビ、また路頭に迷う事になる。いや、下手するとクビどころか命まで取られるかもしれない⋯⋯さっきだって昼食のパンが原因で殺されかけたし。


いずれにせよ、いつも通りに夕食を作ればいいだけのことだ。あいつ等からも俺の料理は美味いって評判だったし。


一番近くの町まで直線距離で30km離れてるが、幸い食料品類や日用品を扱う店はあるので、買い物はここで済みそうだ。空を高速で移動出来る俺や魔王にとっては15分かからずに町まで行けるので大したことは無いが、もし普通の人間がここで生活するとなると途轍もなく不便である。


メロの家から町まで人が住んでいるような気配は全く無く、ただ森と平原がずっと続いていた。町が見えてきて俺は入り口の前に着地した。魔道具を使わずに空を飛べる人間はいないので、目立たないように町の外で降りることにした。

露店が集まる市場があったり、意外とそれなりに人がいる町で、魔王の城から一番近い町なのに活気がある。


早速俺は露店街で買い物を済ませることにした。

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