第8話 超能力者と魔王の共同生活始まる
今回から第1章へ突入しました
この物語は、ただの超能力者と魔王の共同生活を淡々と描くものです。過度な期待はしないでください。
あと小説を読む時は、画面から3メートル離れて見やがって下さい。
魔王の使用人としての、新しい生活がスタートした。その後、魔王から自分の部屋の場所を教えられ一度二階にある部屋に行くことにした。二階には3つほど部屋があり、俺の隣の部屋は魔王が使っているらしい。部屋には6畳ぐらいの広さで、すでにベッドと机と椅子が一つあった。
「ここが新しい拠点か、何もないと思ったけど最低限の設備はあるんだな」
出て行く時に持っていった僅かな私物を部屋に置き、俺はベッドに横たわった。今日だけでも色々なことがあり過ぎて疲れた俺は、そのまま気がつくと寝ていた。
目が覚めたらもう夜になっており、部屋にある時計は8時を指していた。
「寝てたのか、いつの間に」
起き上がって、俺は一階のリビングへまた戻った。15畳ぐらいの広いリビングだが、使ってない場所もあって、魔王はというと大きい画面のテレビでゲームをやってた。画面を見ると、プレイヤーの視点が動いて自由にプレイヤーを移動することができるらしい、持っているのは銃とかを使って武器で相手を倒していき、生き残った時間の長さで順位が決まるものらしい。俺はやったことないからシステムがよく分からないが。魔王も何か言ってるようだが、全く用語が分からない俺には魔王が一人でぶつぶつしゃべっているようにしか聞こえない。
「ああああああああ!いるなんて知らなかったし、てかどうやって死角に回り込んだのよ!どう考えても今のはおかしいじゃない」
いきなり魔王が大声を出したので少しびっくりした。どうやら魔王が操作してる人が死亡したらしい。
「いきなり大声出すなよ」
「あんたいつの間にここにいたの?!」
少し前からそばにいたのだが、全く気づいてなかった様子で俺を見てきた。
操作の仕方が慣れた手つきで結構テレビゲームやってそう。
なんか俺の思ってた魔王って、数日前戦った完全体になる前の2.5mあるベタな魔王みたいな容姿で、沢山の部下を従えてるイメージなんだが、今目の前にいるのはそのかけらも無い。
もっとも、人間に近い完全体の姿も魔族の長としての雰囲気は十分にあった。数日前に戦った時は⋯⋯
ダサい服でスナック菓子をつまみながら、俺に気づかないほどゲームに熱中してる姿を見て、完全に魔王のイメージが崩壊した。
「別にいいじゃない、魔王とか関係ないわよ⋯⋯」
因みに背丈は180cmを超えており人間の女性よりも十分に大きくて、俺より30cm近く背が高い。因みに俺の背は154cmしかない。
「あと魔王って呼ばれるのは好きじゃないから、これからは名前で呼んで⋯⋯あ、そういえば名前を言ってなかったわね」
そういや、まだ魔王に名乗っていなかったので改めてここで名乗ることにする。
「俺は『カイス』だ」
「あんたの名前はわかってる、数日前の戦いで勇者が『カイスは置いてきた』って言ってたから」
知ってる理由が、俺が置いてかれたからかよ⋯⋯
「⋯⋯で、魔王の名前はなんだ?」
「私の名前は“ メロ・レギューム ”⋯⋯メロって呼んでいいわ」
魔王はそう名乗った。『メロ』というらしい。
ところで、こんな夜にお菓子を結構食っているようだが、飯はどうしたんだろうか?
「今から晩飯でも作ろうと思ってたんだけど⋯⋯二人分の材料はあるかな?」
そもそも食事が人間と同じかどうかも⋯⋯そういや、カップ麺を食べてるようなことを言ってたから、そこは心配しなくていいか。
「料理するような材料は何もないわよ、それに私腹へってないから別に作らなくてもいいよ」
「そりゃ菓子をこんだけ、たくさん食ってれば腹の足しにもなるだろうけど⋯⋯」
魔王のすぐ横には食べ終わった菓子の袋が二袋そのまま放置されていた。今食べてるのが三袋目らしい⋯⋯
「いつもこんな感じなのか⋯⋯」
「時間を忘れてるとつい、菓子で済ませちゃうけど⋯⋯美味しいから大丈夫だよ」
何も大丈夫な要素が全く見当たらないんだが!?⋯⋯こいつ今までどうやって生きてきたんだろう。
「まあ、何を食おうが死にはしないし」
「いや、ずっと菓子だけを食ってたら死ぬだろ」
多分、糖尿とかその類の病気で死ぬと思う。
まず、こいつの食生活からどうにかしないと⋯⋯
キッチンに行き冷蔵庫を開けたら、やはりほとんど何も無かったので、戸棚にあったカップ麺を一つ頂くことにする。ところが、キッチンを見てもお湯を沸かすポットなどは見当たらないので、薬缶で沸かそうと思ったら薬缶もなく、あるのはフライパンと鍋だった。
「お湯を沸かす道具ってどこにあるんだ?」
またゲームを始めたメロに聞いたが、返事は返ってこない。ゲームをやってる時は近くに行かないと、俺の声が耳に入らないらしい。仕方ないのでゲームをしてるメロの側まで行きもう一度言った。
「わぁっ!?⋯⋯いきなり話しかけないでよ!操作間違えて死んじゃったじゃない!」
俺はただ、お湯をどうやって作ってるのか聞いただけなのに、メロは俺に怒り出した。驚いてゲームの操作をミスしたらしい。
「今度、ゲームやってる邪魔したら、体すら残らないようにしてあげるわ⋯⋯」
数日ぶりに彼女から魔王のような気迫を感じた。体が残る残らないと言う時点で、殺されるのは言うまでもないらしい、こいつが魔王だということを肝に銘じておく必要がありそうだ。話かけただけで命の危険を感じるとは思わなかった。
「普段どうやってカップ麺食べているんだ?お湯を作るような道具もないのに」
一応フライパンはあるが、お湯を注ぐのには向かない。
「水に魔術で熱を加えれば、一瞬でお湯なんて出来るわよ、わざわざ沸かす必要なんて無いの」
「あいにく俺は、そんな便利な技は持ってないんだが⋯⋯」
せめて超能力でも日常で使えるようなちょっとした能力があれば便利だったのに。
「しょうがないわね⋯⋯水入れて持ってきて、私がやるから」
カップ麺に水を入れてメロに渡すと、すぐに湯気が出てきた。カップ麺の容器を俺が持ってみると、確かに温かくお湯になってることが分かる。特に何かしたようには見えなかったが、一体どういう仕組みなのか?
とりあえず今日はカップ麺を頂く。実を言うとあまり食べた事はなく、いつも食事は自分で作ったものばかりだったので縁が無かった。
お湯だけで出来る、簡易的な食事だと思っていたが、これが意外と美味かった。新生活最初の食事は簡単だけど、普通に作るのと劣らないものだった。
食事を済ませて風呂に入ることにした。今日は風呂を掃除して沸かしてないので、シャワーだけだが。風呂は普通の家庭と同じような大きさで、浴室もこのような少し大きい一戸建てにあるようなものだった。
シャンプーとかリンス等は持ってなかったので、魔王が使ってる物を使うことにする。体を洗って今日の濃密な1日の疲れを取った。
俺はその後リビングで適当にテレビ番組を見ていた。メロは相変わらずゲームのコントローラから手を離そうとしない。テレビは二台あって、ゲーム用とテレビ用に分けてるらしいが、何故かゲーム用の方が画面が大きいし、画質も良い。
今日一日で人生がこんなに変わるとは思わなかった。仲間から戦力外に思われるようになり冒険者職を引退したけど、直ぐに新しい生活の場が出来たのは大きい。
数日前の魔王との戦いをやった時には想像もつかなかった事だが、嘘で固められた仲間との友情を断ち切り、人間との繋がりを捨てたことは後悔するはずは無い。
俺は何一つ嘘も無く、人間であり一度は敵になった事もある俺を歓迎した魔王を、俺は人間以上に信頼している。人間として生きるより、魔王の下で魔族同然のように俺は生きてきたいと、彼女の何一つ嘘の無い言葉と俺好みの美貌(黒髪紅眼巨乳)を見て決意した。
テレビを見たりして、気がつくと23時を回っており、俺は歯を磨いて寝ることにした。歯を磨いて戻るとメロがゲームを中断して、ようやくシャワーに行こうとしていた。
「そろそろ寝ることにするよ、おやすみなさい」
「もう寝るんだ、おやすみ」
メロは『結構早く寝るんだ』という少し驚きの反応を見せた。⋯⋯いや、普通の就寝時間だと思うが。
俺は自室のベッドに横たわると直ぐに眠りについた。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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