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第6話 俺の人生は超能力のせいで滅茶苦茶だ!

 同じ頃・魔王はというと


「ご飯まだかな?⋯⋯って、作ってくれる人いないんだった」

 私はずっと身の回りのことは全部、使用人ならぬ使用魔に任せていた。というか、何もしなくても勝手にやってくれた。だけど色々あっていなくなったり、生き残ったのは私一人だけ。今まで私は何不自由なく生きてきたが、それも全部食事から掃除まで全部やってくれる魔がいたからであって、私自身家のことは何もやった事はない。

 ここ最近は適当にテレビを見ながら、カップ麺をすすっている。毎日カップ麺だが、それしか作れないのだから仕方ない。水を入れて魔術で熱を加え、3分から5分待てば出来る便利な食べ物で、ラーメン、うどん、そば、焼きそば、油そばと味の種類が豊富にある。


 昼飯を食べた後、特に何もすることもないので、外に出ることにする。この服装なら人間にしか見えないから、魔王と思われることはまずないだろう。いつもの普段着だけど。



 俺は特に行く宛もなく森を歩いていた。

「俺の帰る場所はどこにも残ってないし、これからどうして生きればいいんだか⋯⋯」


 家族もいたらしいが、生まれながらの超能力を気味悪がり、物心がつく前に孤児院の前に捨てられた。

 孤児院で暮らしていた時にも、俺はいつしか、みんなから避けられるようになった。幼い頃は、能力が制御出来ず、人の心を読んだり、空中を歩いたり、俺に近づいた人が動けなくなっていたり、瞬間移動したり(実際は時間を止めて移動している)ということを無意識に繰り返してたら、誰も寄り付かなくなった。周りからは化け物と呼ばれ、俺が通ってた学校でも、近づく人はいなかった。


 冒険者職に就き、彼らの方から俺の超能力の噂を聞きつけて、ブドー達のパーティに招き入れた。俺は超能力を上手く活用して、パーティの中でも最強とも周りから評されるようになった。

 当時は4人共、平均より少し強いぐらいで、戦う敵も俺の超能力が十分効く相手だった。ほとんどの敵が自分よりも高い戦闘力を持っていたが、足止めをしたり、敵の不意を突いたりして、戦闘力は一番下にも関わらず、当時一番の戦力だった。


 だが、4人は沢山の戦いを経て強くなっていく一方で、俺の強さの伸び具合は低く、4人との差は広がるばかりだった。更に俺の超能力のほとんどは、魔術士でも難易度は高いが習得することが可能で、俺が強かったのは、冒険者職を始めた時から、すぐに上級者が使うような魔術が使えたからというのもある。生まれもって得た超能力で、俺にしか使えない技は割と少ない。魔術士でも覚えるような技はレンジがほとんど習得してしまい、戦闘能力でも圧倒的に差をつけられ、次第に俺はパーティのお荷物となっていた。


 それでも彼らは俺のことをずっと戦ってきた仲間として接してくれた。⋯⋯だけど、それは表面だけの話で、本当はずっと俺のことを嘲笑い、いなくなって欲しいと思われていたのは、今日彼らに初めて読心術を使って分かったことだ。


「⋯⋯あいつら、結局最後まで口では悪口を全く言ってなかったな」

 もし本音だったら、もう少し本気で引き止めに来るはずだよなぁ⋯⋯


 もうこれ以上色々考えるのはやめよう。俺も修行したけど、結局最後まで平均の戦闘力より低いままだったし、冒険者職にそもそも向いてなかったのかもしれない。あいつらも俺がいなければ、もっとチームとして強くなれるし、現に俺がいなければ魔王も倒していた。俺のサポート無しでは全く戦えてなかった頃が懐かしい。20年生きてて、それが唯一の良い思い出だ。


 思えば、生まれもった超能力でロクな目にあってない。冒険者職を始めた頃ぐらいに、上級者向けの魔術や魔術でも無理な能力を持て囃されていた時ぐらいで、他は全部超能力のせいで酷い目に遭っている。


 家族に捨てられ、拾われた先でも学校でも化け物と呼ばれ、誰も近寄らなくなり孤立して、最初はみんなから頼りにされていたが、周りが急激に強くなるとついていけなくなり、全く役に立たない試合場のゴミ拾いみたいなものになってしまった。みんな口では言わないものの、魔王を倒すようなパーティに俺は必要ないとずっと思われて、魔王との戦いでは置いてかれた。


「なんで俺は超能力者なんだ⋯⋯」

 普通の人間だったら、たとえ冒険者職でやっていけなくても平和に暮らしていることだろう。少なくとも家族に捨てられないことは確実だ。

 超能力は生まれた時からずっと無くなることはない能力だが、何度超能力が無ければと思ったことだろう。この世界でそのような能力を持って生まれた人は俺だけで、読心術、時間停止等は俺しか使えない唯一無二の存在だが、俺は唯一無二になんてなりたくなかった。


 もっと平凡で、静かに暮らしたかった⋯⋯。



 一方その頃

「これで良し、でもこんな森の中の掲示板に貼ったところで見る人ほとんどいないわよね⋯⋯」

 私は散歩ついでに、使用人募集のポスターを貼っていった。本当は街の中まで行って貼りたいけど、人間を装っているとはいえ、正体がバレないか心配で街へ出れない。あまり意味がないと思いつつも、ずっとカップラーメンばかり食う生活にも飽きが来たり、自分の部屋がもうそろそろ、私では手がつけられない状態になっている状況をみると、一刻も早く使用人が欲しくて、少しでも募集することにした。

「⋯⋯帰って、ゲームしよ」



 森の中を通っている道をひたすら歩いていたら、ちょっとした掲示板があった。まあ、モンスター出没情報とかが貼ってあるだけで、いつもなら特に気に留めることは無い。だけど一枚、気になる貼り紙があった。


『使用人募集;仕事内容・家事等:給与・月給XXXXXX円から(一部出来高制):その他・〜〜〜〜

  人間、魔族不問:詳しくはこちらまで(住所)』


「⋯⋯使用人募集、どこかの貴族の家が出してるのだろうか、でも何でこんな森の中に貼ってあるんだ?⋯⋯まあいいか」


 家事に関しては、俺がパーティの中でも常に担当していたこともあり、人よりも手馴れていると思う。冒険者職になる前も自分の身の回りのことはやっていて、使用人になったことは無いが、家事等という内容なら出来ないことはないだろう。

 丁度、何も当てがなかった所に、この使用人募集の貼り紙が、何故かこんな山奥にあったのは何かの運命だと思い、俺は早速書いてある住所の所まで行くことにした。


「しかし、この住所なんか見覚えのあるような⋯⋯まあ、有名な貴族なら見覚えがあるのも不思議では無いか」



「あ〜〜!もうちょっとなのに!」

 よくある、横スクロールアクションなのだが、これは様々な人が作ったコースを遊ぶことが出来るし、勿論自分がコースを作ることも出来るビデオゲームで、最近新しいハードで出たので買ってみたらハマった。ちなみに私はコースを作るのがめんどいので、コースをやる方がほとんどだったりする。



 俺は書いてある住所へたどり着いた。

「ここか⋯⋯しかし、こんな山奥に使用人を雇うような金持ちが住んでるとは、意外だな」

 周囲には森しかない山奥で、こんな所に人が住んでいるとは到底思えないような所にある、一番近くの町まで直線距離で30kmはかかるし、魔王の本拠地である城から500mぐらいの距離だ。大きさは少し大きい庭付き一戸建てぐらいだが、王都にある同じような家の10分の1以下の価格で買えそう。


 少し緊張が交わりつつ、俺は新しい生活への第一歩を踏み出すように呼び鈴を鳴らした。

「はい」

「すみませーん、使用人の件でこちらへ伺いました、ただ今お時間は大丈夫でしょうか?」

 一体、どんな人なんだろう、良い人だといいけど⋯⋯


 テレビゲームを続けていると、呼び鈴が鳴り、とりあえず一回中断して受話器に出る。

「こんな時間に誰よ⋯⋯」

 まだ午後4時ぐらいである。

「はい」

「すみませーん、使用人の件でこちらへ伺いました、ただ今お時間は大丈夫でしょうか?」

 まさか、こんなに早く使用人志望の方が来るとは思ってなかった。ゲーム中なので本当なら、お時間はないが、森の中に一枚だけ貼った紙に気づいた上に、わざわざこの山奥の家まで訪ねてくる人が珍しく、二度と無いと思い、ゲームをしばらく中断して会うことにする。

「今、ドアの鍵を開けるから、玄関から突き当たりまで行った部屋に入って、そこにいるから」


 と返事が来ると玄関のドアが開き中へ入る。俺はここで新しく暮らすのかと思いながら、靴を脱いで上がる。しかし一つ気になったことがある。


 しかし一つ気になったことがある。


「「どっかで、聞いたことのある声だな(だわ)⋯⋯」」


 突き当たりまで歩き部屋の前の扉に着いた。確かこの前、面接のマナーについて少し聞いたんだよな。確かまず、ノックを3回やって⋯⋯

 ドアを3回ノックした後「入って」と言う声が聞こえた。

「失礼致します」

 そう言ってドアを開けるのがマナーだった気がする。そして、ドアに対して斜めに向いてドアを閉める。今のところ完璧だ。

 後は相手の方向を見て⋯⋯⋯⋯え?


 そこにいたのは、完全体の姿になった魔王だった⋯⋯因みにその姿は俺の一番好みの黒髪紅眼巨乳美人である。


「「⋯⋯⋯⋯」」


 互いにしばらく何も考えられず何も言えなくなったが、ようやくお互いに気を取り戻すと。


「な、なんでおまえがこんな所にいるんだよ!」

「な、なんであんたがここに来たのよ!」


 二人は同時に、驚きの声を発した。



 ただの金持ちだと思ってたら、な、な、なんと数日前に戦った魔王だった!?カイスは魔王の使用人になるのだろうか?


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