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超能力者として生きてて良いことなんて一つも無いし、超能力関係無いけど得意の家事能力を活かして生活力0の美少女魔王の世話をします  作者: 赤城つばめ
2章 新生活は新たな出会いの機会

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第49話 知らない方が良い事実を知らずに生きるか、知りたくない事実を受け入れて生きるか

最初に沈黙を破ったのはパーシモンだった。

「メラーナ……なんでここに来たんだ」

一旦女を寝かせ、俺はベッドから立った。


「パーちゃん、な、何してるの……」

私はとにかく戸惑いしか無かった。部屋に入ったら知らない女の人とベッドの上で……


「……あ、久しぶりパーシモン……えっと、その……お前に謝りたいことがあって」

聞き覚えのある声が聞こえ俺はあたりを見渡すと、もう一人もっと思いもよらない男が入ってきていた。


「オレン、なんでここが分かった……何しに来たんだ!」

「忘れたのか、僕は敏腕記者だってことを……それでも5年かかったが」


僕は彼が消えてからの5年間、パーシモンにずっと言いたかった言葉があった。


「僕は、記者として……いや一人の友達として一番やってはいけない、見て見ぬふりをした……あの時の僕にもう少し勇気があれば、お前がいなくなることも無かったと思う」

僕は床に正座し頭を地面につけた。


「ごめんなさい」


僕はその一言を言うために5年間彼を探し続けた。今更謝ったところで彼が許すことは無いかもしれない、何も思わないかもしれない。でも喧嘩別れのまま終わるのは一番嫌だった。


「僕はただ謝りたかった……それ以外何も無い」

オレンが再び立つと彼は言葉を返した。

「もういい……俺の中ではもうとっくにあの女に復讐して終わった話だ」


このダンジョンであの女を殺し彼の復讐は達成されたという。だがなぜ今も、人間関係を破壊し続けるのだろうか。

「そ、そうか……じゃあ、もう故郷に帰らないか?お前を探していたのは僕だけじゃない、お前の両親もずっと探していたんだ……もうここにいる必要は無いんじゃないか?」

「断る、故郷には近づきたくも無い……」

僕は故郷に戻ってくることを求めたが、しかし彼は頑なに拒んだ。


今度はしばらくして黙っていたメランザーナが話し始めた。

「……もう止めましょう、人間関係を壊してなんになるの?……そんなの誰も得しないわよ!」

その言葉を聞きパーシモンは怒りも悲しみも無い表情になり。


「またか、それを言いにわざわざここまで来たのか?何度も言うけど俺は本音を知ることが出来ないお前たちを救っているんだよ……例えばさ、一見すると仲の良い家族にみえるけど実は妻の方が浮気してその男と出来た子供を旦那の子と嘘をついている……それでも事実を知らない方が幸せだと思うか?」


知らない方が良い事実を知らずに生きるか、知りたくない事実を受け入れて生きるか、どっちが正しいかは誰にも分からない。でも、一つだけ言えることがある。

「確かに隠している本音や秘密がバレることで人間関係は壊れることもある……だけど壊していい人間関係なんて一つも無い!今あなたがやっていることは余計なお世話でしかないわよ!」


「余計なお世話か……」

俺は人間関係を壊すことで何を求めていたんだろうか?本音も知らずに仲良くしている友達恋人パーティ仲間等に羨ましく嫉妬して攻撃していただけなのだろうか。


あの時、絶対俺には嘘をつけないと心の中の本音を信用しきっていたが、心の中でも二年間も騙され続けたショックで頭がおかしくなってしまったのだろうか?姿を消して5年間メラーナ以外の者と会話をしたことは無い。5年ぶりの人間との会話がオレンだとは思わなかったが。


「別にいいじゃないか余計なお世話でも、魔族軍からも強力なパーティを解散させたりして高い評価を得ているんだ……弱小ダンジョンしか作れないお前に何が出来るんだよ!……心の中を読めないお前に俺の何が分かるんだ」


この時私は彼の本心を初めて察した。心の中を読むことは出来ないけど5年も一緒に住んでいると察することは出来る。人間関係を壊すことはもう彼の中ではどうでも良かったのかもしれない。


「分かるわよ、あなたの考えていることなんて……逃げているだけなんでしょ?人間がいる世界から……」

「……」


俺は何も答えられなかった。人間のいる世界から逃げ続けるために、友情、恋、結束力等人間を繋げるものを破壊していった。そして破壊すればするほど俺は益々人間を恐れ忌み嫌うようになった。隠している本音や秘密を知らせることで人間を救う、そんなのは俺が人間の世界から逃げる為の言い訳だった。


心の中の本音が聞こえるせいで、そういう生き方しか出来なくなった。俺はただ普通に友達と普通にしゃべり、恋をして上手くいかなくても何年か経って笑い話になればいい、あわよくば好きな人と仲良くなれれば最高だった。


生まれてから20年俺がずっと欲しかったものは……心の中の本音に関係なく仲良くいられる人だった……だけど20年探しても、そんな人は誰もいなかった。


町を歩けば聞こえるのは、もし聞かれたらまずいような本音ばかりだった。仲の良いカップルが浮気していたり、仲の良い友達グループだけどある一人に対してみんなが陰口を言っていたり……本音を心の中に言わずにしまっていることで仲が良い状況を維持していることに俺は絶望してしまった。心の中にしまっていることでも、俺にとっては声に出して言っているのと同じである。プラムも心の中まで仲良くなれたと思っていたのに、心の中まで全て演技だった。


「そりゃ逃げるよ……誰しもが隠している本音秘密を持って他人と付き合っている……そんな奴らが沢山居るところで過ごしていたら頭がおかしくなりそうだ」


相手の心の中の本音を知っても、俺に知られたとしても仲良くいられるなんてあり得ないことを知った俺が次にとった行動は相手の全てを操ることだった。


「人間の世界に帰れとは言ってないわ……人間関係を壊すことをもうやめてほしいだけ」

彼が少し黙ると、無表情だった顔が突然笑顔になった。

「メラーナ、実は今日でこのダンジョンで人間関係を壊すのは最後にするつもりなんだ、もうその必要が無くなった……全てを解決できる方法を手に入れたんでね」


急に止めると言い出したことに、喜びが半分ある一方、突然すぎて疑問が出てきた。

「そうなの、もう止めてくれるのね」

(でもなんで急に止めるって言いだしたんだろう。全てを解決できる方法って一体何?)


彼は表情を変えずに話し続けた。

「相手に隠している本音や秘密が全く無ければいい、つまり何から何まで自分の意のままに相手を操ることが出来れば、知りたくない本音や秘密を全く持たない人を作ることが出来る……メラーナ、催眠魔術を教えてくれてありがとう……これでやっと、欲しかったものが手に入る」


催眠魔術は私の一族が得意としていて、人間や魔族を催眠で操りまるで人形のように自由自在に動かすことが出来る魔術である。主に敵を操って共倒れさせたり、操った人を使って攻撃させたりすることに使うことが多い。ある時彼は私に突然催眠魔術を教えてほしいと頼まれた。



1年ぐらい前


「催眠魔術を教えて欲しいって、急にどうしたの?」

「新しいダンジョンの仕掛けに活用したいと思って……俺も一応その辺の冒険者よりは戦闘力が高いわけだし、覚えておいて損は無いと思うから」

「いいけど……簡単じゃないわよ」

「やって見せるさ……これが唯一の方法なんだ」

「……?なんか言った?」

「独り言だ」


こうして私は催眠魔術を教え始めたのだが彼の上達のスピードは速く、あっという間に戦闘力関係なく人を操れるようになっていた。


「すごいじゃないたった3か月でここまで……」

「メラーナに比べれば俺なんかまだまだだよ」

彼がどういう目的で催眠魔術を覚えたいと思ったのかは、結局最後まで分からなかった。



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