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第4話 思いもよらないことは、いつも突然に

 爆発の煙が立ち込めてたが、次第に晴れてきた

「少しやり過ぎたわ⋯⋯ま、いいかどうせここなんとなく雰囲気で魔王の城っぽいから勝手に使っているだけで、私の家じゃないし」

 完全に煙が晴れ、爆発の中心には人らしきものは全く無かった。

「死体まで残らないとは、これでは本当にやったかどうかわからないわね」

 しかし、妙なことに、全く人が吹き飛ばされたような形跡は一切無い。

「もしや、あのチビが、超能力を使って逃げたのでは?」

 さっきも私に向かって撃った技が、瞬間移動してきたり・・・奴はゴミみたいな戦闘力だが、様々な超能力が使える。そういえば、当たる前にあのチビに全員掴まっていた…

 私は部屋にあった水晶玉を取り出し、あの5人が生存しているかを調べた。水晶には5人の姿がはっきりと写っており、つまり5人全員が生きているということが表されてた。

「逃したか…しかし、あのチビは一体何故、私を完全体にしたんだ?・・・いずれにしろあのチビが来なかったら、勇者によって心臓を突き刺されてた…」

 あの光線が直撃して、体中の魔力が急激に上昇し、完全体になれるほどのパワーを取り戻した。何故そんなものを私に向かって撃ったのか、全く分からなかった。

 あいつは、私が真っ二つにされ秘剣で貫かれそうになり万事休すかと思ってた時に、遅れてやってきて、あの遅い波を放ち、どういうトリックを使ったわからないけど、剣で刺される前に私の目の前にワープして直撃した。そして完全体になる莫大なエネルギーを手に入れ、この姿になることが出来た。


「ヒーローは遅れてやってくるって言うけど⋯⋯」

 あいつにとって敵である私に何故そんなことを?

「あのチビ、私を助けようとしたんじゃ⋯⋯いや、そんな事はない筈、あのチビは私を倒そうとしてきた仲間の一人だし」


 あーもう!気になって夜しか寝れなさそう!



 黒い玉が目の前に接近し、これを喰らったら間違いなく死ぬと肌で感じた瞬間・・・俺たちは瞬間移動に成功した。移動した先の目の前には青空と下を見ると池があり・・・池?


 俺たちは全員池に落ちた。



「なんで水の上に移動するのよ!」

 リンが俺に文句を言うが、俺にはどうすることも出来ない。

「瞬間移動の移動先は選べないんだよ、下手すると移動先が火山の火口っていうこともあり得る」

 だからあまり瞬間移動は使いたくない。どこに飛ばされるか分からないし、移動した方がかえって危険になる場合もあるからだ。今回みたいに最後の手段として使うことしか出来ない。

「レンジ、お前がいなかったら絶対間に合わなかった、もう一度礼を言うよ」

「いや礼を言うのはこっちだよ、お前がいなかったら、俺たち全員黒い玉にやられて死んでいた」

 とりあえず全員生きて帰ってこれただけでも良かった。生きているうちなら、また何度でも魔王と戦う機会はあるだろう。


「完全体か⋯⋯桁違いの戦闘能力だ、この秘剣も簡単に折られた、パワーもスピードも全部…」

 ようやく魔王と同程度の戦闘力を持つことが出来た彼らが、まるで歯が立たなかった。

「みんなごめん、俺が出しゃばらなければ、魔王を倒すことが出来た筈なのに…」

 俺が余計なことをしたせいで、魔王にとどめを刺せずにパワーアップさせてしまった。この戦いで一番の失態だろう。

「気にするなよ、お前はあの攻撃で魔王を一撃で倒せると思ったから、時間を止めてまで俺を止めたんだろ?」

「本気を出してない魔王なんかを倒しても面白くないし、それにウチは負けたままなのが一番嫌い、だから次はもっと強くなってリベンジするだけよ」

「今倒せなかったら、次倒せるようにやれることをやる、ただそれだけだ」

「スピード世界一の座をもう一度取り戻す、完全体の魔王を倒して!」

 俺のせいで魔王を倒すどころか強化してしまったのに、誰一人として俺を責めることはしなかった。


「ありがとう、みんな」


 俺たち5人は魔王にリベンジを誓い、都へ帰ることにした。




 数日後・国王官邸


「また、魔王を倒せなかったのか⋯⋯」

 俺たちの戦果の報告を聞いた、国王が難しい顔をしながら言った。

「申し訳ありません、次こそは絶対に魔王の息の根を止めてみせます」

「しかし、魔王と同程度の戦闘力を持つ4人がいて、こうもあっさりやられるとは思えないのだが」

 魔王の敗北はほぼ確実だと考えていた国王にとって、敗北の知らせは想定外の出来事であった。

「実は、魔王には完全体という真の姿がありまして、俺たちよりはるかに上回る戦闘力を持っていました」

「四天王まで倒した勇者達なら大丈夫だと思っていたのだが⋯⋯変身を食い止めることはできなかったのかね」

 そう国王から言われて、俺は少し焦ったが、ブドー達なら上手くフォローしてくれるだろうと思い、落ち着いて話を聞いていた。


「完全体になる前に実は仕留めることが出来たのですが⋯⋯カイスが魔王を一撃で倒せると時間停止を使って無理に入ったために、トドメを刺すことが出来ず、完全体になってしまいました」

 ブドーに続いてレンジも

「しかもその時カイスが放った攻撃が当たったら、体を真っ二つにされて瀕死だった魔王が回復どころか、完全体にパワーアップしてしまったんです」


 え?なんか俺が悪いみたいな方向に話が進んでない?


「彼は、邪悪な心を増大させて、体を爆発させるみたいなことを言ってましたけど、本当は魔王を回復させるような技を放ったんだと思います」

「ウチらに置いてかれたのが悔しくて、腹いせに魔王を回復させるような技を使ったんじゃないんですか」

 リンとパイナは俺が魔王を回復させたみたいなことを言っていた。もちろんそんなつもりは全く無い。

「信じたくはないが、魔王を回復させたのは本当か?」

 魔王を倒す目的を持ったパーティの一員が、魔王を回復、パワーアップの手助けをするとは、にわかに信じ難く、国王は俺に話を振った。


「結果的にそうなってしまったのは事実です、ですが俺は魔王を一撃で仕留めるつもりであの技を撃ちました、完全体になるとは全く思っていませんでした」

 俺は事実を話し、全く魔王の手助けをしたつもりでは無いことを話した。


 だが、ブドー達は俺にこんなことを言った。

「じゃあなんで、あの時とどめを刺そうとした俺を時間停止を使ってまで、邪魔しようとしたんだ?」

「あの時、ブドーが秘剣を心臓に突き刺していれば確実に始末出来たのに、お前はそれを止めてまで、倒せるか分からない得体の知れないあの技に賭けた⋯⋯」


「⋯⋯⋯⋯」

 俺は何も答えられなかった。よく考えれば既にブドーがとどめを刺そうとして勝利は確実な時に、俺は彼らに魔王を倒して見返してやりたいという自分勝手な理由でやったことだ。


「国王様、もしカイスが邪魔をしなければ、魔王が真の姿にならずに倒すことができた筈です」


「⋯⋯カイス、お前はとんでもない事をしてくれた⋯⋯⋯魔族とは今までずっと戦い続け、ようやく魔王を倒し、戦いに決着をつけ、人類の平和を取り戻す筈だった」


 国王は更に続けて言った。


「彼らの証言によれば、お前は魔王の手助けをしたという風に言っていた⋯⋯魔王に手を貸す行為は、人類の平和を脅かすものとして、殺人よりも重罪に課せられる、つまり死刑はほぼ確実だ」


 死刑を言い渡された俺の運命は⋯⋯果たしてどうなってしまうのか?



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