第1話 最終決戦
はじめまして、赤城つばめです
あまり上手い文章では無いので、大目に見てもらえると幸いです
ついにこの日が来た⋯⋯
魔族と人間の最終決戦の時だ⋯⋯
彼らは魔族軍の本拠地へたどり着き、今頃魔族の総大将と言われる魔王と戦っていることだろう。
彼らがこの本拠地を陥落させ魔王を倒すことが出来れば、人間側の勝利は確実となり、この世界に住む人類に平和が訪れる筈だ。そのために俺たちは、5年もの間魔族と戦争を続けてきたのだ。
5年のうち3年間は地上最強と呼ばれ続けてきたパーティの一員として俺は戦い続け、気がついたら20歳、生まれて丁度20年が経つようになった。とても長い戦いだったがそれもいよいよ終わりだ。彼らならきっと人類に平和をもたらしてくれるだろう。
「妙だな、10時はとっくに過ぎているのに誰も来ない、集合場所もここで間違いない筈」
最終決戦を前に各々修行して、3ヶ月後にこの場所で今日の10時に集まるという約束だった。俺もこの3ヶ月で劇的なパワーアップを見せ、パーティの仲間達との全般的な力の差も縮まったと思う。
俺が所属しているパーティは全員が地上最強の実力を持つと呼ばれ、武術、魔術で彼らの右に出るものは居なかった。何故か6人もいた魔族軍の四天王も全て俺たちの手によって討伐することが出来た。
最強の肉体とパワーを持った地上最強のcqc使い『リン』
IQ222の頭脳を持ち高度で多彩な魔術をたやすく操る『レンジ』
世界一のスピードを誇る戦士に敵は攻撃を当てられず避けられない『パイナ』
古今東西の剣の達人の中でも、一番強い人しかなれない“勇者”に選ばれた『ブドー』
そしてこの俺は、生まれもって得た超能力によって、幾多のパーティのピンチを救ってきた『カイス』だ。
この五人によって、いよいよ魔族軍は全滅だと………思ってた俺の姿はお笑いだったぜ。
「おかしい、もう2時間経ってる、まさか俺を置いてもう行ったのか?……サーチしてみるか」
サーチとは超能力の一つで、人の発する『気』というものを感じとり、その人のいる場所が分かる能力のこと。戦闘力という、攻撃力、すばやさ、体力等を全部合わせた強さが高いほど探しやすくなり、例えば彼らの場合100km離れても、直ぐに見つけ出すことができる。
「東北東へ82.51kmに四人の強い反応と魔族の強い反応が一つ……やはり置いてきやがったな!」
サーチは人間と魔族の違いも分かり、知っている人なら誰のものかも判別出来る。
「約80kmか、今から行くとなると、空を飛んで行けば40分で着く」
何も道具を使わずに空を飛ぶのは魔術を持ってしても不可能で、これも俺だけの超能力と言える。感覚で言えば空を走るって言った方が近く、時速150kmは出せる。
一方その頃
「懲りないね、3ヶ月前に恐怖を植え付ける程のダメージを与えてやった筈なのに…しかし、我の野望をここまでコケにした馬鹿供は初めてだ」
3ヶ月前俺たちは、魔王の圧倒的な戦闘力を前に5人がかりでも全く歯が立たなかった。どうにか命だけは助かったが、魔王との再戦に向け3ヶ月間俺たちはバラバラになって各自修行を続けた。
「3ヶ月ぶりだな魔王!だが3ヶ月前の俺たちだと思ったら大間違いだ!」
魔族軍の本拠地である魔王の城の最奥にたどり着き残すは魔王のみ。倒せば、人類に平和が訪れ、魔族軍の恐怖に怯える日々を送らずに枕を高くして眠れるだろう。
「四天王はみんな殺されたのに、まだ偉そうに言ってるわね」
パイナが偉そうだと言うが
「勝手に言わせておけ、どうせ今日が魔王の命日だ」
一方魔王は彼らを見て一つ違和感を覚えた…一人足りないと…
「おや?……もう一人のチビはどうした」
チビとはこの中で一番背が低いカイスのことだろう、背丈は160cmも無い。
「カイスは置いてきた、修行をしたとしてもハッキリ言ってこの戦いにはついてこれそうもない」
「あぁ、その方が良いと思う」
「ついでに嘘の集合場所も教えておいた」
ブドーが置いてきたというと、全員が頷き、レンジが言葉を返した。
「まあいい……さて実力者が4人いるとはいえ、この姿のままでも十分だろう……」
「早く闘わせろーーーーー!!!」
「落ち着けリン、興奮するのは分かるが、慌てなくても十分楽しめる」
彼女は手強い敵ほど、ワクワクする性を持っている。今にも勝手に殴りかかりそうで、彼女の戦闘狂いにはいつも手を焼いている。
とはいえ直ぐに、俺たちの最後の戦いは始まった。
「ちくしょー!俺のことを馬鹿にしやがって、戦闘力では大幅に劣るとはいえ俺には超能力があるのに…」
さっきサーチで場所を探るついでに、測った戦闘力ではブドーが12000で他のやつが10000ぐらいだが、俺はわずか800だ。平均的なパーティの人の戦闘力は1000と言われ、3000を超えればかなりの猛者で全体の1パーセントしかいない。魔王の戦闘力が約10000と言われてるから、どれだけ魔族軍に人類が苦労してきたか良く分かる。
戦闘力とは、パワー、スピード等の能力を全部合わせて、全体の強さを数値で表したもので、自分より低い戦闘力だとしても、例えばパワー単体では上回っていることも十分あり得たりする。戦闘力に一番大きく影響するのが、気という体内にあるエネルギーのことである。気が大きかったり、コントロールが上手かったりすると総合的な能力も高くなっていく。気によって戦士は肉体や武器の強化をすることが出来、魔術士なら魔術や魔力の強化をすることが出来る。
この世界では戦闘力の大小によって強さが決まり、技も気の大きさによって変化していく。事実、戦闘力の差が開きすぎると、俺の超能力が全く効かなくなる。
だからこそ圧倒的な戦闘力の差がある俺は戦力外でしかないと勝手に思い込んでやがる。
「お、そうだ……この手があった、置いてかれて正解だった」
魔王を倒すことよりも、俺はあいつらに戦闘力が全てで無いと見返してやりたいとずっと思っていた。
「待ってろお前ら、置いてきたことを後悔するが良い」
俺は一刻も早く気配の方向へ向かった。
「いっとくけど手出ししたら、背骨を真っ二つにするわよ」
「好きにしろ、ただ俺が交代しろって言ったら素直に戻れ」
「その必要は無いと思うけど、ウチ一人だけで十分勝てそうだし」
「あんなにコテンパンにしたのに、自信だけは立派だな」
最初はリンと魔王が戦い始め、お互いの手足を相手の体に全力でぶつけようと、常人の域を越えた応酬が繰り広げられた。
「この我と互角か、まさかただの人間がここまで強くなるとはね、にわかに信じがたいよ」
「ウチにとって、負けたまま終わるのが一番嫌いなこと…必ずあんたに勝つ」
前戦った時もパワーは互角だったが、繰り出す攻撃の数が魔王の方が圧倒的に多い。つまり彼女は攻撃が遅く、結果押し負ける形となってた。だが、世界一のスピードを持つパイナと共にみっちり修行を続けた結果、格段にスピードが上がった。
「スピードはまだまだあたし程では無いけど、彼女は力強さがあるから、こりゃあたしの出番ないかもね」
少し残念そうにパイナが言うと、ブドーが難しそうな顔をしながら
「…確かにリンもすごいが、魔王はまだ隠し持っている気がする、まだ本気を出してないような…俺の嫌な予感だが」
「お前の嫌な予感はよく当たるが、魔王が手を抜いてるようにも見えないぞ」
レンジが魔王との戦いを見る限りでは手は抜いてないと言う。俺もそう思うが、でも手を抜いてるというよりは、更に上の戦闘力に上げることが出来る余裕をなんとなく感じられる。
「この一撃に全てを込める…」
リンが一回魔王と大きく離れて部屋の端まで距離を置くと、魔王に向かって疾走し始め、アウラを拳の一点に集中させ光が包んだ。
「こ、これは少し前のリンのすばやさでは到底出来なかった技…」
レンジが驚いたことに対し、ずっと修行を共にしたパイナが
「これを食らったら、流石の魔王も一溜まりも無い筈よ」
リンが飛び上がり、魔王に向かってそのままのスピードと破壊的な力を持って拳を上げ
「つらぬけー!貫光拳!」
「くそ……このままで十分だと思ってたのが甘かった」
そのまま魔王を貫くように、飛び上がり魔王へ拳を喰らわせる。
だが…拳は魔王の腹で止まった。
「そ、そんな…いくら魔王でも、体を貫いて大穴が開き致命傷になるのに……」
リンはトドメが効かず何が起こったのか分からず茫然とした。そしてすぐに頭を掴まれて、魔王と掴まれたリンは飛んで浮き上がった。
「なんなんだぁ…今のは…」
どう考えても魔王の戦闘力とリンの戦闘力は互角で、貫光拳を喰らえば魔王は致命傷となる筈だった。
「やはり魔王の戦闘力は変化するのか…今まで戦ってきたのは、一番弱い時の魔王に過ぎなかった……俺が見た限りおそらくさっきの2倍になっている」
ブドーの嫌な予感が現実となった。
「ぐほっ……ぐぇっ……」
魔王はリンの髪を掴んだまま、腹や顔を数十回も殴り続けた。彼女はさっきの技で力を使い果たし抵抗出来なかった。そして首根っこを掴まれ締め上げられそうになった。
「今度は生かして帰さんぞ」
必死にもがくが、どんどん弱々しくなっていく。
「いかん、リンが死ぬ!…波ぁぁぁぁぁっ!」
手出しをするなと言われたが、しないと彼女の命は無い。レンジは気功波を魔王に撃ち、魔王の手は離れた。力も無く自然落下で、数mの高さにいた魔王から手放され落ちて床に当たった。
「大丈夫!?リン」
「・・・信じられないほど戦闘力が上がっていた…恐ろしいぐらいに……」
喋る力も少なく、僅かな声で言うと彼女は気絶した。
「チッ、命拾いしたな」
魔王のパワーアップにより圧倒的な差をつけられたブドー達。圧倒的な力を前に彼らは一体どうなるのか?
この世界は、人類と魔族が敵対している異世界という設定ですが、科学力は現代の現実世界と同じなので、普通に電化製品も出てきますし、街並みも家も現代日本とほとんど同じだったりします。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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