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2.ニシムラの能力

少女一人VSならず者7名。

いや、ならず者のうち一人は暴走し、もう一人がそいつを組み伏せているから、実質は1VS5か。


どちらにせよ結果は見え透いている、男たちの圧勝だ。


おいらを助けようとしているみたいだけど、逃げた方が賢いかな。


「こいつはとんだサプライズだな! なんだか知らねえが可愛い子が自分からやって来るぜ!」


リーダーは舌なめずりをし、両手を広げて彼女を迎え入れようとしている。


人がレイプされるところを見られるかも・・・。おいらは恐怖心と好奇心の狭間で逡巡していた。


少女が右腕を振り上げ、左手でピアノを弾くような動作を始める。

すると、今まで組み伏せられていたあの暴走していた男が、上に被さっていた仲間を跳ね除け、大きく飛び上がった。


「うあああああああ!!!!」


奇妙な叫び声を上げながら、再び男たちへ向かっていく。


「またか!もういい、こいつ殺しちまえ!」


リーダーが斧を振り上げ、そいつの頭を砕いた。しかし、男は止まらない。そのまま頭に刺さった斧を掴み、奪い取る。


そして、やたらめったらに振り回し始めた。


その勢いたるや凄まじく、風を切る衝撃波はおいらにまで届いてきた。


おいらの居る場所でもそれほどの勢いを感じるのだから、ならず者たちはたまらない。瞬く間に胴体や首は叩き千切られ、無数の残骸が宙を舞った。


気づけばならず者たちは全滅している。

斧を振り回していた男もその勢いに肉体が耐えきれなかったのか、ボロ雑巾のように横たわり、動かなかった。


あたりにはおいらと少女だけが残った。


「これは、あなたがやったんですか。こんなことあり得ない・・・」

「あり得ない? 『珍しい』でしょ。『操人』のスキルは初めて見た?」


少女がおいらに向かってそう言った。

『操人』? スキル? この世界を構成する要素の一つなのか。


「あの、何はともあれありがとうございます。助かりました。あなたが居なかったら、僕は殺されていた・・・」

「どういたしまして」


少女はニッコリ微笑み、おいらに手を差し伸べた。

美しく伸ばされた髪の毛とサファイアのように鮮烈な青い眼が際立っているが、目鼻立ち、肌の艶、そしてふくよかな胸部。

女性に求められている外見的な特徴を全て網羅している、完璧な美少女だった。


おいらがじっと見つめていると、彼女の顔がみるみる赤くなった。


「どうしたんですか?」

「いや、あの、あなた、よくカッコいいって言われない? こんな人初めて見た・・・」

「いや、全くそんなこと言われないですけど。なんだろう」


おいらは自分の顔が好きだが、それはあくまでも主幹であって、客観的に考えると、顔立ちは普通だと思っている。


「おかしいわね。その唇、顎髭、のっぺりした感じ・・・。モデルやっててもいいくらいよ」

「どうも、ありがとうございます」


どうやらこの世界の美醜の感覚だと、おいらの顔は超絶美形ってことになるらしいな。


「とにかく! こんなところをウロつくなんておかしいわよ! あなたはどこの街出身で、所属は!?」

「あの、すみません、僕なんにも分からないんですよ。どうやら異世界から転移してきたみたいで」


少女はキョトンとした。そりゃそうだ。

命がけで救ってくれた彼女なら信用できると思い、おいらは今までの経緯を全て話した。


「ふーん、つまりニシムラは、地球っていう場所から転移してきた、この世界の人間ではない余所者ってわけ」

「そうです。だから色々と教えてもらえませんか? この世界の仕組みとか、さっき言ってたスキルのこととか」


「この世界のこと・・・。いざ説明するとなると難しいわね。何がどうなっているのかは、街に行って本でもなんでも読んでみればいいんじゃない? スキルについては教えてあげられるけど」

「分かりました! ではそのスキルについて教えてください!」


「ステータスオープン!」

少女はそう言って、手を前にかざした。すると、空中に光の窓のようなものが浮かんできた。中に文字が書いてある。


「これが私のステータス。あなたの世界ではどうだったか知らないけど、こうやって私たちは自分の持っている能力の全容をステータスって形で把握しているの」

「はいはいはい。客観的に自分の能力が見られるって、超便利だと思います!」


ホーリエ

ランク:C

HP 100/100

MP 180/200

知力 A

攻撃力 D

防御力 D

魔法力 C

センス B

家柄 F

財力 F


スキル:操人


「ホーリエってのは私の名前のこと。こうやってステータスを名刺にして私たち勇者は仕事を得ているの」

「へー。面白いですね。家柄とかまで晒されるって、驚き!」

「そしてこのスキルってのは、生まれ持って定められている特殊能力のことよ」

「はいはいはい。操人ってことは、さっきの人たちはあなたが操って同士討ちさせたってことですか」

「そう。あれは私の操人スキルの技の一つ、『LIVE 怒亜』。人間の稼働限界を超えた動きを強制する技」

「なるほど・・・。僕にもこれできますかね。ステータスオープン!」


彼女の返事も聞かないまま、おいらはその言葉を唱えた。同様に、おいらの目の前にステータスが現れる。


ニシムラ

ランク:F

HP 10/10

MP 0/0

知力 A

攻撃力 C

防御力 E

魔法力 F

センス C

家柄 B

財力 F


スキル:論破


「何これ。ひどいわね」

ホーリエが憐れむような視線を向けてきた。この世界だと、このステータスは勇者になりたての15歳レベルのものらしい。

「ニシムラは何歳なの?」

「41です」


ホーリエは絶句した。

「攻撃力はなんとかなるけど、魔法が致命的ね。MP0って・・・、魔法力Fって。何も覚えられないじゃない。スキルも意味不明だし。だめねコレ」


ため息をつく彼女に、おいらはスマホを開いて、動画を撮って見せた。


「!? 何コレ。写ってるのは私!? なんなのこのちっこい鉄の塊」

「スマートフォンですよ。僕の世界では当たり前にあるものなんですけど、こっちでは存在してないみたいですね」


彼女は目を丸くして画面をいじくり回している。


「あの、僕からしてみたらスキルどうこうとか言われても知らねーし。って話なんですよ。逆にスマホも知らないとか駄目すぎだろ! って思っちゃうし。文化が違っていて、生き方が違っているって前提があるのは分かりきっているのに.自分の概念に当てはめて異世界人の僕を一方的に駄目だって言い切るのはちょっとおかしいんじゃないかなって思います!」


彼女はおいらの言葉を聞いて、反省してくれたようだった。

「僕もホーリエさんに協力したいんですよ。あなたに命を助けてもらったわけだし。だから、ホーリエさんも僕に協力してください。とりあえず、最寄りの街まで案内してもらえませんか?」


ホーリエは頷き、おいらをエスコートしてくれた。

ならず者と違って、話が通じる。この世界でもやっていけるかもしれないな。

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