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メリーゴーランド  作者: 湊 亮
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この頃は、「他者は自分の生存権を脅かす敵」であり、その「敵」に対して勝つことが自分の価値であるという考え方が確立されつつあるときだったと思う。


サッカーにしても、勉強にしても、周りの人は「敵」であり、すべてが「だましあい」だと感じていた。


心を他者に開くと、利用されるのではないかと感じていた。


勉強に関しても相談できない。わからないことをわからないと言えない。できないことを素直にできないと言えない。


睡眠時間をぎりぎりまで削って勉強していても疲れた素振りは見せられない。


「勉強なんかしてないよ」と言わなければいけない。


志望大学も教えない。教えてしまって志望校が被ると、また蹴落とさないといけない「敵」が増えてしまう。


全て隠して、ひっそりと「勝つ」のである。自分の持っている「劣等感」をうまく隠しながら、ひっそりと「勝つ」ことを望む。それが高校時代の全てだった。


高校の時の物理の先生に言ったことがある。


「僕は、ゴッホは幸福じゃなかったと思う。絶対不幸だ。誰にも認められず、ただただ売れない絵を描き続けて、誰にも認められずに死んでいくなんて。自分が死んでから価値が認められても意味ないじゃないか。僕はピカソの方が幸せだったと思う。」


これが、私が幼少期から戦場を生きてきて確立した「価値観」であった。この「価値観」に縛られたまま、私はこの後も人生をさまようことになる。


この価値観は、ある日、ふっと沸いたものではない。


不安定な基地で戦争を生き延びてきた一人の少年が、戦いながら、否応なく掴み取った価値観なのである。


大学進学における進路選択もこの頃にしなければならなかった。


しかし、自分と向き合ってこなかった私は「何が好きなのか」「自分が何をしたいのか」「自分は何者なのか」がわからない。


ただただ両親や先生、その他の友人の「承認」を得るためだけに生きてきた。


自分から何かを感じることをしたことがなく、ただただ周りに気に入られるためだけに戦ってきた。「自分がどうしたいのか」がわからない。


理系に行きたいのか、文系に行きたいのか、大学はどこに行きたいのか、わからない。それを「自分」に問いただすこともしない。


なぜなら「ありのままの自分には価値がない」ということを無意識に感じているからである。


そのように植え付けられたからである。


当然、当時の私には、「ありのままの自分」について考えることもない。ただただ、「両親は何を求めているのか、先生は何を求めているのか」ということを考えているのである。


それが自分の「充実感」であると勘違いしているのである。なんとなく、父親が「理系」を求めてそうだから、「理系」を選択し、長女が行ったという理由だけで、長女と同じ大学を志望するのである。


そこに自分の「やりたいこと」がない。「たぶん、こうなったらみんな喜ぶんじゃないか」という観点しかない。また、先に述べた、父親と長女への「虚偽の尊敬」の念が私を「理系」に向かわせ、「志望大学」に向かわせたのではないかと思う。


「自分の内部」から進路を選択したのではない。今となってもその選択を「自分の選択である」と自信を持って言えないのである。


その甘えた姿勢が私の人生を狂わせていく。新たな戦場へと私を誘う。


しかしながら、何度も言うように、不安定で過酷な戦場を生き抜かなければいけなかった私が、この価値観、考え方を否応なく受け付けながら一生懸命生きてきたことは、本当にすごいことだと今の私は思うのである。


他の誰かであれば、倒れてしまい、戦場で死んでいたかもしれない。


そこでも自分を環境に適用させながら、時には自分を歪めながら必死に生きてきた私はやはりすごいのではないかと思うのである。


つまり、「ありのままの自分」には価値があるのではないかと思うのである。


今このように思えるのは、私の「妻」の存在があってこそだが、そのことは後に示したいと思う。


とにかく「妻」と「息子」というかけがえのないものを与えてくださった神様に感謝したい。


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