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メリーゴーランド  作者: 湊 亮
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やはり、博士課程時代の私も「空虚な競争」を行っていたと思う。


「空虚」というのは、他者に認められるための競争、他者を蹴落として、他者を利用して勝つ競争なのである。


そして、その競争に疲れ果てていたのである。


そんな時に、また自分の進路選択という、自分の意志でやったことのない「選択」を迫られたのである。


私は、ここでも「逃げたかった」のである。


「空虚な競争」に身を投じて、断崖絶壁を駆け抜けてきた。


その先に「理想郷」があると信じて、一生懸命走ってきたが、「理想郷」が見えないのである。


「自分がない」私には、自分の理想がわからないのである。


つまり、「空虚な競争」を勝ち抜いても、一向に理想郷が見当たらない、という「絶望感」「不満」があるのである。


妻の「温かいぬくもり」は、「空虚な競争」を勝ち抜くためには、十分すぎるほど機能した。


私は「空虚な競争」に勝ったと思う。


しかし、だからといって満たされることがないのである。自分がどうしたいのか、わからないのである。不安になるのである。


不安になった私は、またしても「支配」されに行くのである。「逃亡先」を探すために。


その当時、会社にまた就職しようと考えていた。


やはり、この空虚な競争が行われる「戦場」から逃亡したかったのである。


しかし、また一方で「支配されること」に不安を感じているのである。


会社員時代の直属の上司の「支配」、父親の「支配」、それらが、ごちゃごちゃになり、不安になるのである。


その当時は、指導教官にも「支配」されていた。


私は、どちらの「支配」が心地良いかを決めかねていたのである。また、大学に戻った手前、また就職するのか、という「みじめさ」のような「恥ずかしさ」のような気持ちもあった。


しかし、志望する会社はあった。


修士課程の時に行きたかった職場の一つでもあった。


しかし、そこには、既に同じ研究室の別の学生が内定していた。


私の席は、なかったのである。


このことも私の歪んだ自尊心を傷つけた。


私の隠していた「劣等感」が刺激されたのである。


今思うと、私が繰り広げていた、「空虚な競争」をその会社の社員は見ていたのではないかと思う。


私は、体中に「私を褒めて!」という悲鳴を響かせながら、博士課程の戦場を戦っていたのである。


その雰囲気の異常さ、そして、私のずるさ、弱さが見抜かれていたのではないかと思う。


とにかく、その会社に入れないという事実は、昔、父親や長女にばかにされた時のように、私の心を深くえぐったのである。私は意地になった。


「あんなに過酷な戦場を生き抜いてきて、まだ自分の思い通りにいかないなんて!」


「断崖絶壁を走れば、理想郷があるんじゃないのか。なんでこうなるんだ。」


周りの人を恨み、憎み、さらに他者を「敵」とみなす傾向をさらに強めた。


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