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メリーゴーランド  作者: 湊 亮
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「温かいぬくもり」に包まれながら、「自信」と「充実感」を得た私は、日本に帰国後、今までの「陰鬱」を吹き飛ばすように仕事に励むことになる。


とにかく、「研究!研究!」である。


そうすると、「実績」や「業績」もついてくる。


暗闇を走ってきた少年は、光に照らされ、好きなように走るのである。


その当時の私は、過去に暗闇を走っていたことも、また、その当時、光に照らされて走っていることも意識していないのだが、少年は「水を得た魚」のように泳ぎ回るのである。


そして、その背後には、いつも「温かいぬくもり」があったのである。


そんな生活だったが、私の困った特性は相変わらずだった。


周囲の人は、私の生存権を脅かす脅威だ」という考え方は、変わっていないのである。


周囲の人を遠ざけ、指導教官の「承認」のみを得ようとする。


周囲の人を蹴落として、利用して、自分の優位性を確保しようとする。


他者に「劣等感」を植え付け、自分の「劣等感」を隠す。


その様子は、幼き頃見た「父親」や「長女」そのものなのである。


「研究が楽しい」とか「これが面白い」ではなく、「実績」と「承認」が欲しいのである。


「もっと褒めて!もっと褒めて!」である。


この時期においても、「本当の自分がしたいこと」「自分が何者なのか」に目が向けられないのである。


また、「自分にはやりたいことがないこと」を認めるのが怖かったのかもしれない。


そこから目を背けるのである。


自分の価値は「認められてなんぼ」「褒められてなんぼ」なのである。


そこに自分の内なる欲求がない。


彼には「他者」しかないのである。


他者に認めてもらわなければ「安心」できないのである。


その特性は、暗い暗い戦場を生き抜いた少年の「歪み」であり、「負の遺産」なのだが、妻の「温かいぬくもり」をもってしても矯正されないのである。


当然、自分と向き合うことを恐れている、当時の私は、その「歪み」に気づかないし、気づかなければ、矯正のしようがない。


そして、博士課程を修了する時期にさしかかる。


また、「自分と向き合わなければいけない」時期が来たのである。


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