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メリーゴーランド  作者: 湊 亮
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入社当時こそ、「この会社に入ってやった」という傲慢な想いがあった一方で、次第に、「私がこの会社にいる意味があるのだろうか」「私じゃなくても他の人でもこの仕事ができるじゃないか。」といった、自分がこの会社にいることの「無価値観」を認識するようになった。


「なんか申し訳ない」という感覚である。


幼少期から「他者より優れていなければならない」「何か頑張って、成果を出さなければならない」という「脅迫観念」を抱えて生きてきた少年は、ここでも「罪悪感」「無価値観」を感じるのである。


つまり、会社に対して、「貢献している」という感覚がないのである。


入社1年目は、約10か月間が研修であり、「即戦力」として活躍することを会社から求められていなかっただろうし、同期も同じような状況だったと思う。


にもかかわらず、「会社に貢献できない自分は、ここにいてはいけないのではないか」という「無価値観」にさいなまれるのである。


また同時に、業務内容に関しても、「この仕事、私でなくても、誰でもできるではないか」という、「無価値観」とは矛盾した、傲慢で、独りよがりの感覚を持ち始めるのである。


彼は、「脅迫観念」から、一生懸命頑張って生きてきたにも関わらず、「満たされない」のである。これまでの努力が水の泡になっていくような感覚に陥るのである。


「あんなに大学まで頑張って、今がその終着駅なのか?」


「なんであんなに頑張ったのに、ここにいるんだ?」


「私は何になりたいんだ?」


「今までの努力は何だったんだ?」


「なんで頑張っているのに、こんなにつらいんだ?」


そんな想いが、頭を錯綜するのである。混乱するのである。


かと言って「本当の自分がいないこと」「得体の知れない何かに脅迫されていること」には気づかない。


ただただ、「おかしいなー」と首を傾げるのである。


そんな悶々とした日々が続くのであった。その当時の職場の上司には、今となっては、本当に頭の上がらないほど感謝している。


また、申し訳ないという気持ちもある。


その上司は、私の「未熟さ」を指摘し、ちょっとずつ「大人」になるよう、促してくれていた。


そんなことを露ほども感じない私は、ただ自分の辛さを訴えるのである。


時には涙を流して、「子供の感情」を訴えるのである。


入社して、一年ほど考えた。


私の会社における「無価値観」は日々増大しつつも、一方で、周囲の人に支えられながら「自分がここにいてもいいんだ」というような感覚を覚え始めてもいた。

 

日々の仕事においては、直属の上司には頭を悩ませていた。


先に述べた「頭が上がらない」上司ではない。


この直属の上司は厄介だった。


私や父親と同じ、「未熟」な一面があった。


彼も自分の「劣等感」や「不安」から私を「支配」しようとしていた。


その当時の私は、「自己喪失状態」「完全受け身モード」であったため、その直属の上司の理不尽な支配に従っていた。


そのように「支配」されることに嫌気がさしていた。


当時の私は気づいていないのだが、ここでポイントなのは、私は「支配されたくない」と思いながら「支配されたい」と思っている点である。


過酷な戦場を生き抜くには、支配に応じることが必要だった。


そうしなければ、五歳児の幼児は生きて行けないからである。


しかしながら、支配されるのは窮屈だ。


自由になりたい。支配されたくない。


でも、「その支配がないと生きていけないのではないか」という「不安」が生じる。


だから支配されたい。


このような全く逆の感情が同時に混在しているのである。


これが過酷な戦場を生き抜いた少年の心の歪みなのである。


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