基準
輝く星が僕の体を包み込むように広がり、まるで宇宙に放り出された感覚になる。実際、この空間に地面という概念はない。
周りにいる人たちは僕を追い越して淡々と進んでいく。先に見える光めがけてひたすら進む人たちに従って僕も進む。
ここは三途の川と思われる場所。僕は自殺するために道路へ飛び出してトラックに轢かれ、目を覚ましたらここにいた。だから、この先には天国か地獄か。はたまた未知の世界が広がっているのだろう。
「ちょっと待て」
僕に向かって話す声が聞こえ、立ち止まった。
「おまえはまだここへ来るべきではない!」
「まさか、ご先祖様......?」
仏壇に置かれている顔写真の本人だと思われる人が僕の前に出てきた。
「いかにも。お主はここへ来るべきではない」
わかった。あれだ。現実の俺は意識不明の重体。奇跡でも起きない限り回復の見込みはない。というところか。
でも、どうして僕が引き止められる対象になったのか。僕よりも良い行いをした人は多いだろうし、それ以前に僕は自殺するつもりだったのだ。何を基準にこういう引き止めが働くのか。
そんな素朴な疑問をぶつけたところ、返ってきた答えはこうだった。
「これは抽選だから私にもよくわからない」