第1章2話 森を抜けて町へ
とりあえず、まずは森を出るところから始めることになった。しかし、ここで問題が発生した、枝葉に太陽が隠れ方角が分からない。だが、僅かに見える木漏れ日は確認出来るためまだ昼、もしくは昼を少しすぎた程度の時間帯だろうという事は感じられる。
「うーん、最初にあった森ってこんなに深かったかな?」
「どうでしょう?もっと簡単に森から出られた気がしますけどね、似ていても全く違う森なのかもしれませんし」
[VMR]の一番最初に出てくる森、名称は特にはなかったのだが初めてこのゲームをプレイするプレイヤーの殆どが通ると言っても過言では無い場所なのだ。もちろん理由の一つには全体的なモンスターのレベルや、スキルに厄介なものが殆ど無く(あっても精々軽度な毒など)、ここの森で採取出来るものは初級生産で必要なものが多数存在し割と上級のプレイヤーの姿も目撃出来る(メインは戦闘職をしつつ、生産職に手を出し始めたプレイヤーなど)。
ただ、すぐに出られると言っても規模が小さい、という訳ではなく割と入り組んでて広いのだが森から出る方法さえ知っていれば最短で出られるということ。
しかし、いくら歩いても外が見えてこなのだ、道が合っていればすぐに出れるはずなのにだ(森の最深部からでも2~3時間弱程)ただ、周りの風景はゆっくりとだが変わって言っているので移動は出来ていると分かる。
歩きながらなので詳しくはわからないものの僕は色々な分野に手を出していたので簡単にだが鑑定するといかにも効果の低そうな毒草、薬草などを見かけるので森の外周部に向かっていると予想できる。
そして、ついに日が傾き始めたのか白色だった木漏れ日が夕日、オレンジ色になり始めた。
「あれ?もうこんな時間?おかしいな、日が傾く前には森を出れると思っていたのに」
「おかしいですね、僕も遅くなっても日が傾く前には出れると思ってたんですが」
「仕方ない、野営するつもりじゃ無かったけど、このまま外を目指しつつ野営の準備もして行こうか」
「分かりました、僕は食べられそうなものがあったら知らせますね」
こうして、異世界生活一日目は野営になる、筈だったのだが意外にもさっきの会話の後、直ぐに森を出れてしまったのだ。
遠目に町が見えるものの結局今日は野営にした方が良さそうだ。
「せっかく森を抜けたけど明日になってから町に行こうか」
「そうした方が良さそうですね」
そうして僕達は野営に向けて準備を始めた。野営道具のひとつも持っているわけがないので簡易的だが落ちている枝や葉を集めつつ、道中で拾った食料だけでは足りないのでさらに集める。
しかし、本来この森は低級とは言ってもモンスターが発生する森である2人ともこれまで歩いてきた時はモンスターに遭遇も、形跡すら見当たらなかったため油断していたのである。
だが、今回は運良く野営の準備中にもそして無警戒のまま疲れていたのだろう、2人揃って寝てしまって居た、しかし襲われることなく次の日になる。この事に気が付くのはまだ少し先である。
翌日、朝
僕は何んとなく目が覚めてしまった、なにかの気配を感じた、とかではなくどちらかと言うと習慣的に目が覚めた、というような感じだ。勿論周りを見渡してもローウェンさん以外は見当たらない。
そうしているとローウェンさんが目を覚ます。そして僕はローウェンさんの近くまでよった。
「おはようございます、ローウェンさんは良く眠れましたか?」
「ああ、おはようキツネさん私の方は少し寝付けなかったかな」
「そうだったんですか、僕は早々に寝ちゃったので気づかなかったです」
「まあでも、その様子だと早く町に行って宿をとった方が良さそうですね」
「そうだね、そうしないと私が耐えられそうに無いよ」
と、ローウェンさんは少し笑いながら言った、僕もこの姿ではなく、人間の姿だったら一、二日程度なら大丈夫だろうけどそれ以上は耐えられないと思う。
「じゃあ町に向けて出発しようか」
「ちょっと楽しみでもありますね」
そうして、2人は遠目に見える町に向かって歩いていく。特に準備する荷物なども無いので町に向かって歩いていると、ある程度人が通るのであろうと思われる街道らしきものが見えてくる。
「あれってもしかして街道?」
「どうなんでしょうか?確かにある程度は人が通っているように思えますけど」
「ここを通る人は少なそうだね」
最低限の整備がされているのかもしれないが少し荒れているように思える。しかし、町が見えている以上迷うことはないと思うが念のために街道を歩いていくことになった。少し荒れているとはいっても街道ではあるのは間違いなさそうで、尚且つ流石に何の整備もされていない平原を歩くよりはましだろう。