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第七話


宿から出て冒険者ギルドに向かった。

赤い夕焼け空だったのが黒い星空の方が多くなってきたこの時間なら、

任務や依頼を終えた冒険者が多数留まっているだろう。

テンプレを期待して冒険者ギルドのドアを開ける。

一瞬俺に視線が集まるが、皆自然に目線を外す。

俺は感心した。

こんな小国にこれ程の手練れが揃っているとは…

俺も自然に受付に並び順番が来るまでギルド内を鑑定した。

ほう…下級魔族なら、単独でも討伐できる戦闘力の人物が多数いる。

その中でも上位者二人は中級魔族でも倒せそうだ。

受付の順番が来た。


「ご用件を伺います。」


「丈夫な動きやすい服が欲しい。ここに来ればすぐに揃うと聞いたもので。」


「はい。それなら二階の防具を扱ってるカウンターに行って下さい。」


受付の女性は紙に要件をスラスラっと書き俺に渡して、


「二番の番号を目印に探して下さい。カウンターにその用紙を見せればすぐ対応してくれます。」


「ありがとう。」


俺は礼を言って二階に向かった。


思ったより混雑してることもなく、普通にカウンターで用紙を渡し、

布の種類と色を決め身体の採寸してすぐにその場でサイズ調整。

思った以上の短時間で済んだ。

予備を含め十着を作り黒をメインで八着、白を二着にした。

ついでに下着類も十着づつ買う。

金を払いその場で無限収納に品物を取り込む。

アイテムボックススキル持ちはそこそこいるのであまり驚かれる事はない。

予想より時間が余ったので非常食や冒険必需品を大量買いする。

さて買いたい物もほぼ買えた事だし宿に帰るか。


ギルドを出て宿の方に進んでいるとギルドから五人ほど付いてきた。

鑑定で調べて見ると強盗や脅迫、暴行などがステータスに出ている。


ふう…ちと派手に金を使いすぎたか。

まぁ仕方ないか。人通りの少ない道に向かって進路を変える。

方向を変えた途端、三人が後ろから消え別の道を高速移動しだした。


ふ~ん…先回りして挟み撃ちか。

俺は気にせず人気が消えている道の方に進んだ。

大通りからかなり離れた場所で先回りの連中が行く手に現れた。

俺は歩みを変えずそのまま歩いて行く。

先回り連中は少し戸惑っている。

くくくくっ俺は心の中で笑い表情に出さないよう苦労した。


後ろの連中も気配を隠すのを止め走って追い付いて来た。

ん?気にしていなかったので気付けなかったが、後ろから来る連中の数が増えている。

こいつら子供に見える相手にどれだけ過剰戦力投入してるんだよ!


後ろを見ないまま連中の鑑定をする。

前が三人、後ろは五人に増えていた。


さて、俺は進路を塞いでいる連中を避けるように右斜めに歩くが、

勿論連中も進路を塞ぐように移動する。

俺は何度かジグザグに動きながら前の連中の三メートル前で止まった。


「何か俺に用か?」


「景気が良さそうじゃねえか。俺達にもお裾分けしてくれよ。」


そのセリフは前の連中からじゃなく後ろの連中から聞こえた。


「なんだ唯の強盗か。明日の為に少し運動するか。」


俺は連中が言葉の意味に気付く前に、無詠唱で風の弾丸魔術を発動、全員の膝を砕いた。

連中は、


「馬鹿な!」「化け物か!」「た…助けてくれ…」「いてぇよう…」


など、大混乱している。


「くくくっお前等、ギルドで大量買いしてる若造が、

武器類に一切目を向けなかった意味が解ったか?」


コクコク首を振って「助けてくれ!」と叫んでいるが、やなこった。


「お前達は街の警備兵じゃなく騎士団に引き渡す。何か言い残す事あれば言っとけ。」


「ぐぬぬ…」「ひっ…」「た…助けて…助けてくれ…」「俺は軽い仕事と誘われただけなんだ」


一斉に喚きたてるが勿論相手にしない。

触るのが嫌なので、さっき買ってたロープを出し魔術で一纏めにグルグル巻きにして、

騎士団の地下牢に転移した。


驚き警戒する騎士団員に騎士団長を呼びに行かせ襲われたあらましを伝えた。


「分かりました。賊の連中はこちらで始末を付けます。」


「うむ、済まんが連中のギルドカードを全部くれないか?ギルドにダメだしするんでな。」


「程々に頼みますよ。」


騎士団長は苦笑しながら言った。


「それとこれをお持ちください。」


木簡と書状を渡してきた。


「木簡は、この国の騎士や兵に見せれば色々対応します。書状はギルドでお出し下さい。」


「了解。有難く貰っとく。」


俺は頷くとギルド前に転移した。


俺がギルドに入るとまた一斉に目を向けられたが、

今度は何人かが驚きの顔を浮かべ視線が外れない。

先程俺の担当してくれた受け付けに行き書状を差し出し言った。


「ギルドマスターを呼んでくれ。ああ、ここにな。」


受付嬢は書状を素早く確認すると、慌てて言った。


「少しお待ち下さい。すぐに呼んできます。」


「何だあの小僧?」「ディック達が出ていったろ。あの小僧を追いかけたんじゃないのか」

「ディック達あの小僧にやられたってか?」「そろそろ捕縛依頼がくると思ってたのに儲け損ねたな。」


どうやら数人はあいつ等を賞金首にして捕縛するつもりだったみたいだな。


受付嬢が慌てて戻ってきた。

「奥の部屋でお会いになりたいそうです。案内…」


「断る。ここで話せないなら国賊として討伐隊を出すと伝えろ。」


受付嬢の顔が一気に青くなった。

震える声で、


「すぐ呼んできます。」


と走りさった。


ギルドの同じ階層にいたら誰でも聞こえる声で言ったので周りは騒然としている。


「おいおいギルドマスターに討伐令だと」「あの書状の中身が気になるな」「書状よりあの小僧だろ」


受付嬢が厳つい大男を連れ走って戻って来た。


「わ…私がこの冒険者ギルトで長をしていますガルソンと言います。ご用件は?」


ギルドマスターは震える声で聞いてきた。

受付嬢から書状を返して貰いながら言った。


「先程、ここで買い物をして帰りに、ここのギルド員に襲われた。

襲って来た連中のギルドカードだ。」


俺はギルドカードを机に並べ説明した。


「そ…それでこの者達は?」


「全員の両膝を砕いて騎士団に突き出した。リーガントレットとの事が終われば極刑だろ。」


周りから非難や肯定の声が上がった。


「それは重すぎる…」「当然だろ」「しかし…」「いやいや、ちと重い…」「当たり前だな。」


「全員黙れ。俺はこの国に今日来たばかりだ。

だが俺が見た範囲のこの国の人間は、素晴らしい人々ばかりだった。

このギルドもそうだ。こんな小国のギルドなのに大国の王都に匹敵する手練れ揃いだ。

それなのに何故、あんな連中を放置してた?

あの連中を放置することは、このギルドを貶める行為と同等だと理解しているのか?

自分達があの連中と同類と一般民に思われても良いのか?」


「ぐぬぅ…」「あいつ等は俺の酒代にする充てだったのに…」「耳が痛いな。」「ぐうの音もでませんね」


「ギルドマスター、そいつ等のカードの値段は?」


「ぐっ…一人頭大銀貨五枚出そう。」


「ちょっ…」「ああああ!」「儲けそこなったな…」


「いやあの値段はマスターの見栄と保身だろ。」


ギルド内に悲鳴とも歓声ともつかない声が流れた。


「ふむ。だったらあいつ等がやったのが分かってる被害者に大銀貨三十枚の中から保証してやれ。

残りの大銀貨の八枚はギルドで積み立てして、最後の二枚は今ここでいるギルド員に酒を振舞ってやれ。」


俺が言い終わると同時にギルド内は大歓声に包まれた。


「少年、有難く呑ませてもらう」「粋な小僧だ」「小僧の言葉忘れぬぞ」

「坊やお姉さんと良い事しない?」「お前さっき言われた事理解してないな」


「すまんもう一つ大事な話がある。明日朝、俺はギルドに依頼にくる。

討伐依頼じゃないがかなり危険な依頼だ。詳しくは明日話すので二日酔いには気を付けてな。」


俺は真面目な顔して言った。

すぐギルドマスターの方を向き、


「明日、依頼手続きも頼む。それと俺用のギルドカード手続きも頼む。」


と、頼んだ。


「さて帰るか。皆、もう一度俺に注目してくれ。俺の実力の一端を見せながら帰るから。」


ギルド内の視線が俺に集まったのを確認して言った。


「また明日な。」


手を挙げて挨拶しながら転移してギルドから消えた。



@@@@@@@



ギルド内は先程の喧噪から一転、水を打った静けさに支配された。


「消えた?」「転移だな…」「マジかよ!」「楽そうだな…」

「ほう…あれで一端か…」「ディック程度じゃ相手にならんはずだ。」


一気に先程の喧噪を上回る騒ぎになった。


「あの小僧が危険だと言う任務…今日はもう酒を控えるか」


「マスター、あの少年何者だ?」


「知らんわ!騎士団長直筆の書状を持って来たんだよ!」


「へぇ~…」「団長の直筆とか…」「マスターになんぼの賞金かかるかな?」「くくくっ…」


ギルドマスターを揶揄う話を合図にしたのか、

ギルド内に居た殆どの者が席を立った。

明日を見据えているのだろう。


リーメイルの夜は更けていく。




未だ戦闘らしい戦闘もない話ですが見捨てないで下さい|д゜)

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