第五話
リーメイル王国の王城に転移で帰ってくると、待ち構えてたのかザトペックが走り寄ってきた。
「姫様!御無事ですか!?」
「はい…ですが精神的にはかなり疲れました…お父様は何処ですか?」
「陛下は私室に戻られてます。」
ザトペックは俺を睨みながら答えた。
「ロセッティ、王に報告は任せたぞ。貰ってきた書状を見せれば大体は把握するだろう。」
「貴様!とうとう姫様を呼び捨てに!!!」
「ザトペック卿、良いのです。私がそうして下さいとお願いしたのですから。
シンヤ様はどちらに?」
「俺はユーイング老人と少し話をして城下町で宿屋を探す。」
「そんな…、城に部屋を用意させます。」
「断る。城に居ては観光出来んからな。」
「あ、なら私が…」
「それも断る。娼館行くのに王族の女連れで行く奴がどこにいる。」
「えっ?あ…」
ロセッティは真っ赤になりあうあうと頬に手をやり首を振り「済みません。」と言い走り去った。
ふっ…勝った。
怒りで顔を真っ赤に染めてたザトペックもロセッティを追いかけて消えたし、
俺はのんびりユーイング老がいる部屋に向かって歩いた。
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「状況はどうだ?」
部屋を二回ノックして扉を開けると同時に言葉を投げかけた。
「召喚術師には逃げられたみたいじゃな…」
「それは良かったな。」
「何が良かったんじゃ?」
「リーガントレットで召喚術師の死体が見つかってる。首無しでな。」
「むうっ…するとこの国にいたのは魔族のなりすましか!おんしそこまで読んでたのか?」
「経験の差だな」
「…あの時は姫様がいたから聞かなかったが、おんし何歳じゃ?」
またややこしい事を聞いてくるな…
俺も聞きたい事があるし言うか。
「今のこの体は、ロセッティと同じ十七歳で間違いない。
ただ精神的に今まで経験した年数で言えばざっと千三百歳…」
ユーイングは目を瞠って絶句した。
「お、おんし、不老者か!」
「違う。年も普通に取る。王か王女に聞くだろうが先に教えておく。
俺がこの世界に来たのは三回目だ。
で、栄えある一回目に召喚された場所はリーガントレット王国だ。」
「まさか…おんしの名はたしか………勇者王か!?」
ユーイングは呆然と呟いた。
「ああ、そう呼ばれていた。魔王倒して姫巫女との結婚後にな。
で、俺が聞きたいのは召喚からの拒否する方法だ…」
まだ少年と呼べる顔立ちに、長い年月を過ごした者にしか出せない苦渋の表情が滲んでた。
「まずはおんしが、今まで取った対応を教えてくれないと、わしには何も言えんよ。」
「そうだな…ここ数回は無駄な足掻きとして、一切抵抗を止めてたんだが、
死に物狂いで抵抗して対応しようとした事を、纏めて教える。」
俺はある程度教えて良い範囲で説明した。
「まず五回目ぐらいまでは喜んで受け入れてたなぁ…」(遠い目をしている)
「八回目に一度その場から飛び退いたが駄目だった。」
「うむ…召喚陣と召喚光が出た時点で、呼び出し場所と呼び出される者とは繋がってるはずじゃ。」
「で、それからは色々試すんだが、すべて失敗。
一応大掛かりな対応は、召喚陣認識と同時に短距離転移や長距離転移。
召喚陣の魔術破壊や魔術無効対応。結界や封印といった対応をした。勿論複数同時対応もな…」
「それを聞くだけで、わしにはおんしに言える事はないのう……
ん?おんし、たしかリーガントレットで死んでなかったか?」
「あ、それか…説明しないと意味が判らんな。
つまり俺は召喚された場所で死ぬまで普通に年を取り生活をする。
で、死ぬと元の世界の召喚場所に戻ってる。
肉体も召喚時の年齢になって。多分数秒ほどしか時間は過ぎてない。」
ユーイングはまた絶句した。
少しして絞り出すように聞いた。
「…それは呪いの一種じゃないかの…おとぎ話の時魔法に似た話があったような…」
「そう思うよな?俺も呪い系は詳しく調べたんだが何も解らなかった。
あと一つ試したい事に、無限収納の中のアイテム類を放出する事ぐらいだ。」
「それは望みが薄いの。」
「ああ…一回目に死んだ時、アイテム類はその場に残ると思ってたんだがなぁ…」
ふうっとため息を吐いた。
「そろそろ夕餉じゃが、おんし今夜はどこで寝るんじゃ?
城に泊まるなら部屋を用意させるぞ。」
「ロセッティにも言われたが断った。街の適当な宿で泊まるよ。」
「金はあるのかの?」
「これでも元勇者だ。金貨や宝石類はかなり持っている。心配はいらんよ。」
「ふむ。じゃったら城正面の大通りを進み街の中心辺りに、
リーメイル亭と国の名を名乗っている宿屋がある。
一階は食堂と酒場があり、この国でも一級品を取り揃えておる。
無論、値段もそれなりじゃが、おんしには関係ないじゃろ?」
「ほう?老人が勧めるなら期待出来そうだな。そこに決めた。」
「今から紹介状を書くので…」
「いらん。俺はブリッジの名で泊まるから何かあれば連絡しろ。」
「ブリッジ?うむ了解した。おんしに言うのは間違っていると思うが気を付けてな。」
「ああ…明日はここに転移で来るが良いか?」
「構わんよ。日が昇ってからなら、わしはここにいる。」
「今夜は何も無しに過ごせたら良いな。では明日。」
俺は転移で城正面に跳び、宿を探しに歩き出した。
夕日が照らす街並みは、万人に美しいと呼べるものだったが、
俺にとっては心に響くほどでもなかった。
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