第三話
「さて王女。今からリーガントレット王城の謁見の間に転移するが準備は良いか?」
「ふぁっ!?」
王女はあまりに驚いたのか変な声をだした。
「王女…」
ため息付きつつ王女に声をかけた。
王女は慌てて、
「大丈夫です。」
と言い訳したが、慌てている時点でダメじゃん。
「いい加減、冷静対応する術を身に付けてくれ。」
王女はしょんぼりして俯いた。
「王女、その態度を見せるだけで駄目なんだ。
無表情か微笑みを浮かべているだけで良いからそれを徹底しろ。
あとリーガントレット王城に着いたらリーメイル王国の王女らしく挨拶と態度で振舞えよ。」
「はい…。頑張ります…」
王女は悲痛な表情で答えた。
なにか俺が悪い事してるような感じだな。
ため息付きたくなるのを押し殺して俺は確認する。
「では、転移するぞ。王女が返事するとリーガントレットだから落ち着いてな。」
王女は深呼吸して言った。
「お願いします。」
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リーガントレット王城の謁見の間に転移した。
一瞬、辺りに沈黙が漂う・・・
「衛兵~賊だ~」「陛下を守れ!」「きゃー!」「なんで転移してこれるんだ!?」
阿鼻叫喚の騒ぎになった・・・
なんでここまで騒ぎになる。
俺は憮然とした顔で周りを見渡した。
王が一喝した。
「静まらんか!!!」
謁見の間に静寂が戻った。
そこに俺の声が流れる。
「王女挨拶を。」
王女は微かに震える声でリーガントレット王に挨拶をする。
「リーメイル王国のロセッティです。いきなりの訪問をお許し下さい。」
俺は王女にだけ聞こえるように上出来だ。と呟いた。
「おおっ、やはりロセッティ王女であったか。無事で何より。」
「まずはこの親書を収めて下さい。」
「うむ。読ませて貰う。・・・・・これは……」
戸惑いの顔になり、リーガントレット王は俺と親書を見比べている。
「何か問題でもあるか?」
「いやないが…お前はリーメイル王国の人間では無いな?」
「ああ、俺の名は八橋信哉。半日ほど前にリーメイル王国に召喚されたばかりだ。」
俺の名のりが終わるなり謁見の間はまた喧噪に包まれた。
「やはり召喚術の持ち出し…」「密偵どもは何をしてた!」「陛下ご決断を!」
「静まらんか!!!!!」
先程以上の大声量でリーガントレット王は一喝した。
「信哉殿。この国での名を名のってくれぬか?」
リーガントレット王は俺に頼んできた。
「陛下は何を…」「たかが一使者に…」「敵国の使者にこの国の名が…」
今度は小声であちこちからひそひそ話が聞こえてくる。
やはりまだ伝えられてたか…
俺はため息をつき仕方なしに答えた。
「俺の名は八橋信哉。しかしリーガントレットではこう名のっていた。」
一息あけ名のる。
「シンヤ・B・エイト・ムルク・リーガントレットと。」
「まさか勇者王様か!」「馬鹿なありえん!」「若すぎるだろ」「転移してこれる訳だ…」
とか、またざわめき出したが王が一喝するほどではなかった。
チラッと王女を見ると、何とか表情を冷静に保とうとしているが、脂汗を垂らしていた。
まあ仕方ないな。頼りにしてた召喚者が敵国の勇者王だったなんて。
いやわざとじゃないよ?説明するのが手間だっただけで(笑)
リーガントレット王は「うむ。」と頷いて、
「やはり勇者王様か。王家には勇者王様の世界の御名が伝えられてます。」
「そんな話はどうでもいい。リーメイル王国への宣戦布告の概要を聞きたい。」
「では別室で…」
「いや、その前に俺が勇者王だったのを証明をしとこう。
王よ、済まないが玉座を空けてくれ。」
リーガントレット王は頷くと玉座から立ち、玉座の後ろに下がった。
俺は玉座を持ち上げて横に置き、玉座の下にある床石を外し中にあった細長い包みを取り出した。
包みを解いて中にあった宝剣を出しリーガントレット王に向かって言う。
「シンヤ・B・エイト・ムルク・リーガントレットが、エルリッヒ・スルト・ムルク・リーガントレット王に護国宝剣の一振り、月光剣ムーンライトをここに返還する。」
「「「うおおおぉぉぉ!!!!!」」」
謁見の間に大歓声が響き渡った。
作中でシンヤが軽々玉座を持ち上げて移動させてますが、
大体の重さは、一トンオーバーと思って下さい。