第三十二話
長らくお待たせしました<(_ _)>
今作は年内ラストです。
皆様良いお年を('◇')ゞ
簡易宿場所を抜け走るスピードを上げる。
今の速さは時速で100キロは軽く超えている。
もう少しで次の宿場が見えるだろう。
国境から王都、いやリーフェイスでは聖都だったか、丁度中間地点にある宿場だ。
こちらの宿場は町と呼べる程の規模がある。
人と魔族の敵対反応も、そこそこあるが…。
「キャラテ、敵対反応があるが足を止めるな。お前達に対する遠距離攻撃は全て俺が引き受ける。尻尾の攻撃範囲に入った奴は始末して良いが周りに被害を出すな。
クールメーナ。返事はしなくていい。見た目が人族でも鑑定で魔族と出たら全て蹴散らす。全てが終ってからのあとの始末は任せるぞ。魔族なら死体になっても身体に魔核があるから判断はつくだろう。洗脳系で操られている奴等は意識を奪って放置する。大元を始末すればたぶん解除される。駄目なら俺が術を解いて回る…。」
言いながら俺は内心ため息を吐いた。もし解除されなければ手間暇を取られる面倒くささに…。
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大した抵抗も受けずあっさり宿場町を通り抜ける。
まぁ、この速さで走っている俺達に対応できる者などそうは居ない。
俺達の正面で立ち向かえたのは一体の中級魔族だけだった。
成り済ましじゃなく本物の実力派。
俺の術を躱しながら自分の背後に無関係の人を必ず重なるように移動してきて、並走するキャラテに仕掛けてくる判断力。
キャラテの見た目に惑わされてなければ、そこそこ脅威になっていただろう。
だがキャラテの実力を把握できなかったのは致命的だ。
視界の端で木っ端微塵になった。
俺は魔力弾でまだ残っている魔族の成り済まし共を狙撃しつつ走り抜ける。
始末した魔族達の死体の側に、クールメーナの名で魔族を討伐したとの一文を書いた手紙を小さな石の針で投げつけ置きながら。
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宿場町を抜けてからは、流石に馬車や人の往来が増えて来た。
走るスピードを下げ回避優先で進むが邪魔くさくなってきた。
リーフェイスの聖都まで小山一つか…
「キャラテ。」
俺が呼び、走りながら左手を大きく投擲体制にすると、何も答えず跳び乗ってきて右足を俺の手の平に乗せて屈む。俺はそのまま進行方向に投擲した。
クールメーナの悲鳴が聞こえた気がしたが、どうでも良いか。それよりも……
「あっ…」
……ミスった。ちと力が入り過ぎてリーフェイスを大きく飛び越しそうだな。
俺のキャラテ投擲を見て、旅人達が口をがん開きにして硬直しているのを放置して俺も跳び上がり、空中に空気圧縮の球を造り、その上に乗り飛び跳ねながら俺も後を追うが、投擲速度の方が速く視界から消えていった。
……………………………。
『パパ?』
キャラテから念話が届く。
『すまん。力が入り過ぎた。のんびりと戻ってこい。さっきまでの様な速度で走るなよ。』
『ん。』
『じゃあ後で。マジすまなかった。』
『ん~ん。』
その返事を最後にキャラテからの念話が途切れる。
ふぅ…思ったより怒っていなくて助かった。
空を跳ね跳びながら、先程の投擲の反省すべき点を考えつつ小山を眼下に跳び続けた。
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「ん?」
俺は山頂を超え、徐々に高度を下げつつ跳び続け、山麓付近にある町を目指し進んでいたらマップで襲われている馬車を見つけた。
放置するのもなんだし溜息つきつつ地上に下り、争い場所に走り出す。
樹木で覆われたトンネルのような薄暗い山の中間地点で、かなり立派な馬車が二十人程の賊に襲われていた。
馬車を中心に護衛らしき八人が賊と相対しているが、全員そこそこの手傷を負っている。
「エリアハイヒール。エリアスタミナヒール。エリアマジックヒール。」
俺は馬車を中心に術を掛け、護衛たちの怪我を治しつつその場に飛び込み、賊を殴り飛ばす。
その瞬間、馬車の扉が勢いよく開けられ、抜き身のロングソード片手にドレス姿の少女が飛び出して来た。俺に向かって……。ドレス少女が飛び出した後に「「姫様!!」」と叫び馬車から二人のメイドも飛び出して来た。
俺は素早く少女の進路から離れ別の賊に殴りかかる。少女は俺を追いかけようとしたが、俺が敵でないと判断したようで別の賊に斬りかかっていく。
姫様とやらの護衛達も慌てて一斉に賊に斬りかかり出した。俺は賊を殴りつつ空気玉で護衛や姫様とメイド達を援護する。さほど時間がかからず賊共は一掃された。
戦いが終わり、俺はそのままこの場を離れようと動き出そうとしたら、周囲に人の気配が出現した。
俺のマップを惑わすとか…魔具でも使っていたか。
その気配の持ち主たちは一斉に姫様とやらに弓を放つ。
「「「姫(様)!!!」」」
護衛やメイドが一斉に叫ぶ。俺は慌てず周囲に聞こえる様に術を放つ。
「風の楯!」
俺の術が姫様と呼ばれている者の側で矢を散らし、護衛達は歓声を上げ、賊たちは呻き声を上げる。その賊の中の二人は既に背中を晒し逃走している。
あの判断の早さ、暗殺者か…逃がしはしない。
俺は仕方なしに全力移動で一人を背中から貫手で心臓を貫き、もう一人には石の弾丸で胸を貫く。そのまま二人の死体を護衛に引き渡し、残りの隠れている弓を射った者たちをスタン弾で無効化しつつ、魔具らしき物を無限収納に取り込む。
そしてまた気を失っている賊共を護衛の前に積み上げさっさと去ろうとしたら声を掛けられた。
「ちょっとあなた!お待ちなさい!」
「俺は忙しい。褒美なら要らん。」
「違います。貴方を雇うわ。一日大銀貨一枚だすからワタクシに仕えなさい。」
「断る。」
俺の、考える素振りもしない拒否の言葉に呆気にとられている姫様とやらを放置して、護衛のリーダーらしき者に話しかける。
「ちょっといいか?」
「あ、ああ、助かったありがとう。それで今すぐに礼は出来ないのだが…。」
「違う。礼も褒美もいらん。この賊は盗賊や山賊とは違うぞ。リーヴァンブレイズの手の者だ。多分、あの姫様とやらを狙ったものだな。」
俺からの賊の説明に絶句する護衛達とこちらに近付いていた姫様とメイド。
「この二人はアサシンだから殺したが、あとは賊に偽装した特殊兵だな。
今、リーヘルム公都はリーヴァンブレイズに攻められている。」
俺の言葉に再び顔色を変える姫様一行。
あ~…口を滑らした…さっさと去ればよかった。仕方なしに言葉を継ぐ。
「あ~安心しろ。今、公都には大地竜がいるから負けはしない。そもそも城壁までたどり着けないだろうし、南から援軍が来る手筈になっているから。それに不眠不休でここから急いでも、既に終わっているだろう。」
そう言うと一同にほっとした空気が流れる。
しかし空気を読まないで声を荒げる奴が…
「公都じゃなくて帝都ですわ!」
俺はあからさまに溜息を吐いて言う。
「俺は公爵領の人間でないし、リーガントレットの人間でもない。大陸の殆どの人間は、ここをリーヘルム公爵領と言うし、帝都じゃなく公都と言う。公都内で言うなら良いが、公都以外でそれを口に出すのは国家反逆の罪を背負わされても文句は言えないぞ。例え公爵令嬢でもな。」
言うだけ言うと俺は、何か喚いて剣を振り回し始めた姫様とやらを放置して、さっさとこの場を離れる。
あれがヴィンケルマンの子孫とは…ヴィンケルマンが見たら泣いていたかもな。
俺は当時のヴィンケルマンを思い出しながら山を駆け下り目的地に向う。
この世界の勇者を討つために。
さて、本当にお待たせしました。
今年の一月二日に書いた後書きで一月中に大森林まで書く様な発言していましたが、年内かけても大森林どころかクランの話も終ってないって(´・ω・`)
年明けから少しシンヤ目線以外の外伝(間話)も出したいと思います。
予定では、ロセッティの2、クールメーナ目線、レウース目線とか考えています。
設定の方ももう少し出せとの文句が友人から言われました|д゜)
ではチートの続きは年明けで。
水中花は年内に表の続きを出したいなぁ|д゜)
ではでは皆さま良いお年を<(_ _)>
十二月二十九日
教都を聖都に直しました。
教都は別にあります。(´・ω・`)




