第三十話
遅くなりました<(_ _)>
台風め!(-_-メ)
中央公園(王都の人間は屋台公園と一部で呼んでいるらしい)に来て、キャラテが買い物するのを見学する。
まだ早朝と云うのにそこそこの屋台が並んでいる。
今、並んでいる屋台は軽く食える物が多い。
ふむ。朝飯用に軽い物を売っているのか。
おっと…
「こらキャラテ!買い占めるな。他にもお客さんがいるのだから、後ろに並んでいないか確認してから買い占めろ。」
「ん。」
俺が注意すると素直に頷き、後ろに並んでいた人に場所を譲る。
後ろに並んでいたオッサン達は、笑顔を浮かべてキャラテに礼を言い、品物を買って離れて行く。
人が途切れたのを見てキャラテが再び注文するのを止め言う。
「店主、今ある残りを全て買い占める。原材料でも良いから出してくれ。調理が済むまで待つ時間は無いんだ。」
「そいつは嬉しいねぇ。しかし残りはしれてるぞ?俺の屋台は朝昼夜で違う物を出してて数を限定しているんだ。」
「それでいい。」
「じゃあこの木箱に入っている分を確認してくれ。代金は銀貨一枚で良い。」
「いや、木箱と迷惑代込みで受け取ってくれ。」
俺は銀貨三枚を手渡し、木箱を無限収納に取り込みキャラテ達が向かった別の屋台に向かう。
その背中に「ありがとよ!」と威勢の良い声が掛けられたので歩きながら手を上げ答える。
そんなやり取りを数回繰り返し、リーヘルムに転移する。
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リーヘルムのギルド長の部屋に直接転移してくると、昨日のメンバーが既にいた。
「遅いぞ少年!」
「いや、遅いとか言われても意味が分からん。そもそも待ち合わせの約束などしてないだろ?」
「そうですよバンク。おはようございます。勇者王様。」
メイヤと呼ばれていた神官が挨拶してくる。
俺は挨拶を返しクールメーナに目で問いかける。教えたのか?と。
俺に見られ、ビクッと身体を震わし震えた声で言ってくる。
「ま、マスターの様に、こ、言葉足らずで他の人達に迷惑をかける訳にはいきませんので、私の一存で教えました。責任は私が!」
床に手を付き土下座状態で言うクールメーナ。
「いいから普通に席に座れ。そもそもアイツが俺との会話を聞かせていながら何も教えなかったのが原因だ。お前に責任などないから気にするな。
さて、ここに居る皆が知っているならもういいか。
俺の名は、シンヤ。シンヤ・B・エイト・ムルク・リーガントレットと名乗っていた時もあった。
今は唯の、いち冒険者のシンヤ・ブリッジだ。間違うなよ?
俺がこの公都に来たのは、世界平和を潰す為にだ。汚染の規模にも寄るがクラウディア以外の上層部は諦めている。特に今の団長の勇者は成り代わられているだろう。」
「少年!それは本当なのか?俺達も少しは知っているが、あの勇者が成り代わりや偽物とはどうしても思えんのだが。」
「トルギス家にも伝わってないか…いや当然か。魔族の捕食擬態だ。あれには面白い性質があってな。食った魔族が寝ている時には食われた人物の本質が表に出る事がある。誰でもって事はないが、勇者の称号持ちなら未だ抵抗をしていても不思議でないと思う。」
俺の言葉で部屋内が沈黙で満たされる。
暫くしてメイヤが震える声で言葉を発する。
「そ、それって…死しても、苦しんでいるんじゃないです…か?」
「ああ…。死んでいても記憶は本物だからな。それが魔族に取り込まれ抵抗や外に伝えるすべもなし。地獄の苦しみを毎日送っているだろうよ。」
ハッと気付いたように俺を見るクールメーナ。
暫く躊躇っていたが、おずおずと言葉を告げてくる。
「あの…もしかしてクラン本部を移転したのは?」
「俺はクラウディアに助けを求めたのだと思っている。」
静かな驚きの気配が室内に流れる。
俺は続けて言う。
「クラウディアがクランの顧問を引き受ける条件に、リーヘルムにクラン本部を置くと云うのがあってな。この条件は、クラウディアが破棄するか死ぬかのどちらかでしか変える事が出来ない。勝手にクラン本部の移転をしたって事はクラウディアに宣戦布告と取られる恐れがある。お前達、クラウディアに喧嘩を売れるか?」
全員一致で首をぶんぶん横に振る。
モニカが小声で呟く。
「クラウディア様に刃向かうなんて…」
そう言って隣りのメイヤに抱き付いている。
他の皆も、顔色が悪くなり、バンクでさえ顔を顰めている。
………アイツ、何をしたんだ?
キャラテも首を傾げて俺を見てくる。
俺は念話でクラウに会ってから聞いてみろと言い、話を続ける。
「この本部の話もクラン団長になる者しか教えないので秘密で頼む。
あと勇者は助けを求める行動だろうが、魔族の方はここから離れる為とクラウディアを迎撃する準備を整える為だろう。俺が来たからには全て無駄だがな。
他には………ついでだから今判っている情報を教えておくか。」
俺はリーメイルとリーガントレットが戦争寸前までになった話。
ここリーヘルムのスタンピードが起こった理由とその後、リーヴァンブレイズが攻めてくる可能性。
世界平和クランの乗っ取りや別の国での戦争や紛争が起こる可能性。
これらが繋がって魔族が魔王を召喚して一気に大陸を攻めると予想している事。
そんな話をしたら、皆、顔色が悪くなり沈黙が室内を覆う。
俺はカップに残っていた茶を飲み干し立ち上がる。
「さて、さっさと片を付けに行くか。」
「よし、少年。俺達も手伝うぞ!」
「勿論、私も着いて行きます。今度は絶対邪魔しませんので。」
バンクが言い、重ねる様にクールメーナも言ってくる。
俺は溜息を吐き言い放つ。
「足手纏いだ。雑魚の相手をさせるには丁度いいが、お前達の足に合わせたら今日中に終わらないだろ。
俺達はさっさと終わらし昼飯はこの街で食うつもりで行く。俺達に着いて来れる足があるなら好きにしろ。…と、言いたいが、リーヴァンブレイズが来たようだな。」
俺のマップギリギリの範囲に多数の魔物と人を感知した。
俺の言葉に慌てる面々。
その中ドアを乱暴に叩き慌てて入って来るギルド員。
「失礼します。マスター!斥候から多数の魔物と多数の軍人らしき部隊が西の森に現れたとの報告が!」
「と言う訳だ。バンク達は打って出るなり防衛なりで街に残れ。レウースも残るな?」
「うむ!この街との盟約がある。済まぬが妾は残らせてもらう。キュオー様お許しを。」
キャラテの前に行き頭を下げるレウース。
その頭を撫で頷くキャラテ。
「またあとで。」
「うむ。こっちもさっさと片付けて待っています。」
キャラテとレウースの会話が終わり、レウースは小走りで部屋から出て行く。
「バンク。ヴィンケルマンの子孫達を守ってやってくれ。お前とも旧知じゃないのか?」
眉をへの字に歪め不貞腐れた顔を見せていたバンクに声を掛ける。
仕方ないなと呟き頷くバンク。
「いくか。」
そう言って部屋から出て行く。
「メイヤ、ちょっと待て。」
俺は最後に部屋を出かけたメイヤを呼び止めアイテムを渡す。
「魔力結晶と最上位回復薬や上位回復薬が入っている収納鞄だ。
返さなくていいし好きに使え。エクスポーションは五本しかないので使いどころを間違うなよ?」
回復職に渡しておくのが一番安全だ。
「ありがとうございますシンヤ様。大事に使わせて貰います。」
頭を下げ小走りで部屋を出て行くメイヤ。
部屋の中は俺とキャラテ、クールメーナとギルドマスターの四人になった。
「じゃあギルド長、俺達も行く。また昼飯時に。」
手を上げ、何か言いたそうなギルドマスターを残し街の北側の門前に転移した。
前書きでも書いてますが台風の影響で執筆時間が取れません(´Д⊂ヽ
家の家業が土建屋なんで仕方がないんですよ(´・ω・`)
次の予定は裏、表水中花を月内にと言いたいですが、
裏だけ月内で、表は未定のままとさせていただきます。<(_ _)>




