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第二十九話

遅くなりました。



良く寝た。

昨日は朝から疲れたからな。

神眼を使いながらの魔術精密治療など何百年ぶりか…

あの時程、苦労はしていないが疲れるものは疲れる。

二匹が起きる前に寝汗を流しておくか。

サッサと風呂に入り出てくるとレウースがテーブルにチョコンと座って待っていた。


「おはようレウース。早いな。」


「うむ。今の妾は休眠期が明けたばかりじゃから軽い眠りで充分なんじゃ。」


「その分、休眠期の眠りが深くなるか…」


「うむ…竜珠を取られたのは不覚であった。地中の妾のダンジョン最奥まで辿り着き、剰え隠し部屋の妾の寝所にまで入って来る者がいるとは…」


「人族や魔族を舐めているからだ。キャラテにやられた後、戦闘では人を舐めていないと言っていたが、やはり竜種は潜在的に小さき者を舐めているんだよ。でなければ下位とはいえ竜種を討伐など人が出来るはずがない。ましてお前はまだ若いと云っても上位種の中でも最強の四大属性種の一体。自分の住処での油断もあったろうが、この世界の最強の一角との驕りもあったのだろう?」


「う、うむ…言葉もない…」


「まぁ、厳しい意見を言ったが、仕方ないと言えば仕方がない。俺が知る限り、この世界でレウースと正面から戦えるのは同じ四大属性竜種と魔界の上位貴族、ディーブレイカーの魔王、詳しくは知らないがギィーブラジオンの獣神、獣王の数人だけだろう。圧倒出来るのは俺とキャラテ以外では魔界の魔王二人ぐらいか。因みにお前の母と戦ったギルツゲーネフは魔界の大公爵で強さでも魔王の二人と同じぐらいだ。母の強さを誇って良いぞ。」


「そ、そうであったか!妾は唯の上位魔族に負けたと思っていた…」


そう言ってレウースが瞳に涙を浮かべる。


「もしかして知っているのか?竜族が卵を産み子供が百歳ぐらいになるまで力が落ちる事を?」


「…うむ…妾のせいで母上が命を落としたとずっと思っていた…」


「俺は母親の気持ちは判らないが父親としての気持ちなら判る。

親が子供の為に命を懸けるのは当たり前だ。子を守って親が命を落としても後悔などない。唯、子の成長が見れない事が残念なだけだ。」


「う、うむ…うむ…」


はらはらと涙を流し俺の言葉に何度も頷くレウース。

俺はそっと頭に手を置き、そのまま落ち着くまで撫で続ける。

少しして落ち着いたのか手の袖で涙を拭き顔を上げて言ってくる。


「は、恥ずかしい処を見せた。」


「なに、俺にとって見た目だけでなく年齢でも子供みたいなものだ。気にせず甘えても良い。」


「そ、其方、いったい何者じゃ!妾より年上!?どう見ても十代の人族にしかみえないが?」


「その話は長くなるからまた暇な時にな。取り敢えず顔を洗ってこい。」


俺はタオルを渡し風呂場を指し示す。

「うむ。」と言い素直にトコトコ歩き風呂場に行くレウース。

俺はその間に朝飯をテーブルに並べて行く。

戻って来たレウースに食いたい物も聞きそれも出す。


「さて食うか。」


「えっ!?きゅ、キュオー様を待たないのか!?」


「良いからほっといて食うぞ。何か言われたら俺に強制されたと言え。」


「う…うむ…」



のんびり静かに朝食を取る。

食い終わりかけにベッドの方で身動ぎした気配を察して顔を向けると、寝ぼけ眼のキャラテがこっちをぼんやり見ていた。素っ裸で…


「お前は何故気配もさせずに寝間着を脱げるんだ?起きるのだったら顔を洗って着替えて来い。」


俺は頭を振りタオルをキャラテの顔に投げつけて言う。

渋々起き出し風呂場に行くキャラテ。

着替えは昨夜の内に脱衣所に置いてあるから大丈夫だろう。



不貞腐れた顔で黙々と朝飯を食っているキャラテを呆れた顔で見つつ声を掛ける。


「お前は相も変わらず寝起きが悪いな。スッキリ目が覚める様に久しぶりに尻でも叩いてやろうか?妹分の前で無様を晒したいか?」


物が口に入っているので必死で首を横に振り拒否の態度をみせるキャラテ。


「毎朝痛い目を見るのが嫌なら態度を改めろ。別にゆっくり寝てても構わない。しかし起きて来たならそれなりの態度でいろ。」


こくこく頷いてもぐもぐに戻るキャラテ。

それを見て躊躇いがちに声をかけてくるレウース。


「の、のう。其方はもしかして…キュオー様より強いのか?」


「ああ。今のキャラテなら5体いても負けはしない。」


口を大きく開け絶句するレウース。

もぐもぐしながら頷いているキャラテ。


「ギルツゲーネフ討伐時の俺なら今のキャラテには遥かに及ばないがな。こっちではまだ260年程しか経ってないが俺の時間では1400年以上経っている。お前達だから教えるが正確には2380年だ。お前達やエルフ達ならそこそこいるだろうが人族ではあり得ない。キャラテは知っているが俺の生涯は大体70数年だ。なぜか別世界に呼ばれ、その世界で生涯を終えると元の世界で今の若さに戻り時間も別世界に呼ばれた時から殆ど経ってない時点に戻っている。」


何故か微妙に視線をそらしているキャラテ。

今回、会った時の事で気まずい思いをしているのか。

レウースは目をがん開きして俺を凝視している。


「ああ、今の話を人族の前で言うなよ?この世界の人族でしっているのはリーメイルの術師の1人だけだからな。」


こくこく頷くキャラテとレウース。


さて、キャラテの食事を待っていたら何時までも動けなくなる。

キャラテに昨日渡した収納鞄を肩に掛け、レウースに小さめの肩掛け鞄に銀貨の入った革袋を入れ渡す。


「じゃあ出かけるぞ。」



@@@@@@@@



リーガントレットのギルドマスターの部屋に転移してきた。


「何か情報は?」


「はい…クラン周辺に偵察に出した密偵が数人消えました…」


「俺は腕の立つ奴を放てと言ったと思うが?」


「今、王都に居るメンバーどころかこのギルドのトップクラスばかりです…」


「ふん。で、リーフェイスまで辿り着けたのか?」


「いえ…リーヘルムから二番目の宿場町で連絡が途絶えました。クランとの連絡係と戦闘になったとの報告が最後です。」


かなり疲れた顔をして報告するマジュラン。


「鑑定に長ける者を確保して、戻って来た奴等を確認しろよ?今日中に片は付けて来てやる。それでクールメーナはまだリーヘルムに居るか?」


「はい。貴方様の命を狙うのを止めて付き従うように伝えました。それと貴方様の正体も教えました。」


「う~ん…足手纏いなんだがなぁ…まぁ、仕方ないか。じゃあ俺達は行く。お前も気を付けろ。多分襲ってくるぞ。」


俺は笑顔で肩をポンと叩き部屋を出て行く。

頭を抱えて机に突っ伏したマジュランを横目に見ながら。

ギルド一階まで下り受け付けに俺宛の報告が無いか確認してないとの返事を受けギルドを後にする。


俺達はキャラテの食い物を仕入れに屋台が集まる公園に向かった。







次の予定は水中花表を何とか月末までに。

この続きは出来れば水中花表と同じに出したいですが未定でお願いします。


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