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第二十七話

いつもの倍ぐらいの長さです<(_ _)>


大声で俺を怒鳴ったのは王都で別れたクールメーナだった。

その途端に横のキャラテが不機嫌になる。

流石に殺気を飛ばすほどでは無いのが救いだな。


「思ったより早く追いついたな。どうやった?早馬を乗り継いでも二か月はかかる距離だぞ?」


「ふん!お前なんぞに教えるか!」


俺がどうやって追いついたか聞くと怒鳴って拒否するクールメーナ。


「大体は想像付くがな…で、ここでやりあうのか?」


俺が淡々と告げると身構えるクールメーナ。

しかしギルド内にいたチャラい男が割り込んできた。


「おいおい小僧。クールメーナさんが誰か知ってて言ってるのか?少女とまだ小さい幼女連れて物騒な話をするなよ。」


近付いてきてレウースの頭にポンと手を置いた。


警告する暇がなかった…


「妾に気安く触れるな!」


レウースにしてみれば軽く振り払った行為だったはずだ。

だが男にとっては死に直結する攻撃だった。

レウースに脇腹辺りを薙がれ吹き飛んだ。

ギルド内の頑丈なテーブルを、薪にするしかないほど木っ端微塵にしつつ序に座ってた人間も一緒に吹き飛び壁に埋まるチャラ男と男達…

流石に俺も驚き素早く上位回復術を範囲で掛ける。


範囲上級回復術(エリアハイヒール)


レウースは振り払った動きのまま硬直している。

俺は頭を撫でて言う。


「大丈夫だ。殺していない。俺の術で回復した。」


「う、うむ…まさかあれほど脆いとは…ここは強者が集まるところじゃろう?」


「ああ、だがレウースにとってはゴブリンやコボルト程度に思っておけ。ついでにそこの女なら全力で殴りつけても多分死なないからやってみるか?」


俺がクールメーナの方を見てレウースに言っているのを聞き、クールメーナは顔を引き攣らせ掠れた声で抗議してきた。


「じょ、冗談じゃない!さっきの一撃でも全力防御に値する攻撃力なのに!そ、その幼女は何者よ!」


「西の森の大地竜だ。」


俺があっさり正体をばらすとギルド内は喧噪に包まれた。


「おいおい!西の森の大地竜っていや、この帝都の守護竜じゃねえか!」

「ああ、王都の聖銀龍、帝都の大地竜って我が国の二大守護竜だ。」

「…っていうか、あの幼女は偶に見かけるぞ!いつも一人でいるから可笑しいと思っていたが守護竜だったなら納得だな。」


俺がレウースを見るとワタワタ手を振り慌てている。


「わ、妾は知らんぞ!この街になぞ、来たことは無い!」


「そう否定しないでも良いぞ。どうせ暇潰ししてただけだろ?」


「う、うむ…人族の食事が美味かったのでつい…」


それは分かるな。森でなら調理と云っても焼くぐらいしかできないだろうし。

横でキャラテがモグモグしながら頷いている。

何か共感を覚えているみたいだな。


「しかし、よく攫われなかったな?」


「ん?妾か?何度か妾に掴み掛かって来た者は居たが誰も妾を持てなかったからな!」


「ああ…本体の重さか…むっ?ちょっと待て。なら何で今はギルド内の床に立てているんだ?」


「妾の特性じゃ!正確には大地竜のスキルと思えばいいじゃろ。妾は大地からの引かれる力を軽減させたりできる。だからこの街の外壁を飛び越えて街に入り込めたんじゃ!」


「ふむ。俺は大地竜の脚力で飛び越えていると思ってたが違ったか。」


「うむ。流石に妾もあの高さの壁は飛び越せないのじゃ。半分ぐらいが精々じゃな!」


「まぁ、あの巨体で10メートル、飛び跳ねる事だけでも充分すぎるな。」


俺がクールメーナを相手にせずレウースと話をしていると玄関から六人組のパーティーが入って来た。


「いや~参った参った。おいギルド内に居る奴等よ!お前等、襲撃の鐘をきかなかったのか!西の森からのスタンピードだったんだぞ!二人組の若い冒険者らしき者達が殲滅してくれたからよかったものの、あの二人がいなければこの街が落ちてたぞ。…ん?どうした?」


リーダーらしき男がギルドに入るなり怒鳴り散らすが、西の森と聞いてギルド内に居た者達は皆レウースを見つめ、リーダーの男はその空気を感じ問いかける。


「リーダー、あの子たち…」


「どうしたメイア?…あ?」


メイアと呼ばれた神官服の女性が俺を指さし、リーダーと呼ばれた男が俺を見て俺と目が合う。


男なんかと見つめ合いたくねぇ!


「少年!さっきは助かった!それより怖ろしいほどの強さだな!そっちの嬢ちゃんも!俺になんか奢らさせてくれ!」


俺の手を取りぶんぶんと上下に振りながら言ってくる。


「おい、ちょっと落ち着けバンク!兄ちゃんが困っているだろ!」


バンクと呼ばれたリーダーは仲間の斥候風の男に声を掛けられ落ち着いた。


「あ、ああ…済まなかった少年。改めて礼を言う。助かったありがとう。俺達はAランクパーティー【放浪の旋風】で俺はリーダーをしているバンクと言う。」


「俺はリーメイルの冒険者でシンヤ・ブリッジ。Fランクだ。奢りとかは遠慮する。忙しいのでな。」


Fランクと名乗った時に驚愕の気配がギルド内に流れたが騒ぎにはならなかった。


「Fは低すぎだろ。普通ランク上げを止めるのはCぐらいまで上げてからが一般的だ。俺の紹介があれば今すぐCまで上げられるが?」


「いや良い。俺達にランクは意味がない。冒険者の身分があればいいんでな。」


俺の言葉に「君達ならそうか…」と、顎に手を当てうんうんと頷いているバンク。

と、バンクはカウンターの処にいるクールメーナを見て声を出す。


「よう、クールメーナ嬢、久しぶりだ。何か任務か?」


クールメーナが返事をする前に割り込む。


「ああ、俺の暗殺が任務らしいぞ。王都のギルドマスターからの任務は監視なのに。」


「なんだと?…」


俺が先に答えるとバンクは陽気な態度から一気に凶悪な気配をまき散らし、俺を背後に庇うように前に出て

クールメーナに対峙する。

バンクの仲間達も自然な動きで散開して俺やキャラテ、バンクを支援できる位置に移動している。


相談も無しにリーダーの態度から戦闘になっても素早く対応できる様に動く。流石Aランクパーティー。


「バンク殿には関係ない。引いてくれないか?」


「引けるわけないのは判るだろ?俺を殺してから行きな。」


S級対Aランクパーティー


見応えあるから観戦したいが時間がな…止めるか。


「おい、双方止めろ。バンク奢られてやる。飲み物を一杯だけな。キャラテとレウースは街中で適当に時間を潰してくれ。ギルドマスター!一室用意しろ。それに相談もあるから立ち会え。」


俺が声を出すとギルド内にホッとした空気が流れる。


「メイアとモニカは嬢ちゃん達に付き合って何か奢ってやってくれ。」


「キャラテ、レウース。一食分だけ奢って貰え。他は自分で買えよ。」


「少年、遠慮する事ないぞ。」


「遠慮じゃない。今日の仕事は金にならなかっただろ?キャラテの食う量を知らんから軽く言えるんだ。ギルドマスター、王都のギルマスのマジュランから話は来ているな?すぐ部屋に移動しよう。クールメーナ逃げるなよ?」


「誰が逃げるか!」


ふっ…逃げても確保するがな!


俺達は三階にあるギルドマスターの部屋に向かった。



@@@@@@@



ギルマスの部屋に全員、ギルマス、俺、クールメーナ、バンク達四人の計七名が居る。

長テーブルの上座にギルマス、ギルマスの右手側にクールメーナ、左手側にバンク達、ギルマスの正面に俺が座る。


「さて、ギルドマスター、先に報告があれば聞こう。」


「うむ…だが報告出来る程の話はない。そもそもマジュラン殿から連絡を受けたのは先程なんじゃから。」


「そうか。では俺の事でも話すか。」


俺はリーメイルに召喚されて魔族討伐でリーガントレット国内の探索している事を話す。


世界平和(ワールドピース)が怪しいと睨んでここに来たのだがまさか本部を移動しているとは思わなかった。」


「ああ、一年程前にいきなりだった。王都になら判るんだが、元聖都は通行が不便だからな。」


俺の言葉に答える様にバンクが説明してくれる。


「そもそも聖都に人がいるのか?俺は行った事はないが、ギルツゲーネフが完全に破壊しつくしたと聞いていたが?」


「う~ん…大体100年程前ぐらいからじゃないかな?元聖国の聖都跡に巡礼者が大陸中から来るようになったらしい。人が集まれば商人も集まるし国も兵士を送る。ここからも街道を整備して、大型馬車が並んですれ違い出来るだけの道が続いている。」


「ふむ。街道が整備されているなら途中に宿場町とかも出来ているのか?」


「ああ、旧聖都までなら三か所の宿場所と三つの小規模な町が出来ている。」


「………大丈夫なのか。【深淵に至る闇への洞窟】の現在の攻略記録階層は?」


「確か37階層だったかな?」


バンクが仲間やギルマス、クールメーナに確認して答える。


「……まだ上層階も攻略していないのか…」


俺の呟きに全員が驚愕している。


「ちょっ、ちょっと待て!37階層で上層だと!あのダンジョンは50階層型じゃないのか!?」


「あのダンジョンは150階層だ。この大陸では【奈落】次ぐ深さだ。そもそも50階層までの地図は出回ってないのか?」


「そ、そんな地図がある訳ないだろ!出鱈目言うな!」


クールメーナが怒鳴りつけて来た。


「王都のギルドにはあるはずだぞ。そもそもお前や他のS級達は何をしている?ギルツゲーネフが出て来たダンジョンを碌に攻略しないで何がS級だ!」


俺が淡々と言い返すと目を逸らすクールメーナ。


「当時、ギルツゲーネフ討伐の生き残りは、50階層まで攻略した。だがダンジョンの敵はかなり強くて魔王と対峙して生き残ってたパーティーでも50階層の主を討伐したのが精一杯だった。階層主討伐後、そこで全階層150と書かれた古代語の石板が下に行く階段の壁に埋め込まれたの見つけた。だからS級以外は立ち入り禁止ダンジョンにしていたんだが、たかが200年程でそんな事も判らなくなるとは…」


俺は肩を竦めて首を振った。


「そんな話は初めて聞いた!それも出鱈目だ!」


「ふっ…お前が知らんだけだ。そっちは知っているんだろ?バルムンク?」


俺が声を掛けるとバンク達は息を呑み驚く。


「グラム・トルギスの子孫だろ?ギルツゲーネフ相手に最初に傷を負わせ、殲滅術を至近で喰らっても生き抜いて魔王討伐の1人、リーフェイス聖国の英雄。その末裔だろ?」


「それを知っているのはパーティーメンバーだけだ。上位の鑑定スキルか?」


「それもあるが、似ているんだよ。グラムに。聖騎士ならぬ態度で陽気な性格、しかし守るべき者に危害を加えようとする者には自らの命を盾に立ち向かうところとか。」


「…何者だ少年?」


「唯の召喚されたてのFランク冒険者の勇者だ。」


「何故勇者がこの世界の勇者を狙う!!!」


クールメーナが思わずと云った声を上げる。


「お前は王都のギルドで何を聞いていた?魔族に汚染されていたらの話だろうが。まぁ確実に団長は汚染じゃなく成り代わられているだろうがな。

さて、俺は帰るとしよう。今日中にクランを調べて蹴散らそうと思っていたが色々時間を取られたからな。」


俺は立ち上がり全員を見回し続けて言う。


「最後に、リーヴァンブレイズが攻めてくる可能性がある。大地竜の竜珠を盗み、この都市の裏組織に売り払っていた。先程のスタンピードはその結果だ。それに西の森に居なかった魔物も多数いた。大地竜の話から魔獣使いが森に解き放っていたのを見たと聞いている。西の監視を強化している方が良いぞ。」


俺は言うだけ言い、じゃあと手を上げキャラテ達がいる街中に転移する。


いきなり現れた俺にメイヤとモニカか驚いているが気にせず俺は礼を言い二人を引き取る。


「確かメイヤとモニカだったか?二人の子守りをありがとう。今日はもう帰るのでここまでで良い。

バンク達はギルマスの部屋にまだいると思うから行ってやってくれ。また会おう。」


それだけを言うと俺は二人に見える二匹を連れてリーガントレット王都に転移した。









さて次の予定は水中花を二十日に。

裏を月末までに出したいと思います。


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